追試研究に参加して勉強したこと①
こんにちは、ケント大学博士課程後期3年の今田大貴です。
Dr. Gilad Feldman (以下Gilad)が主導するMass Replications & Extensionsというプロジェクトに参加して、Heyman and Ariely (2004)の追試研究論文を執筆する中で学んだことを何回かに分けてまとめて、シェアしてみよう、という試みです。読む人いなかったらすぐ辞めます。
このプロジェクトにかかわる前は、自分はそこまでオープンサイエンスに熱心ではなかったので、「ハハッ、そんなこともしらなかったのかい?」と思う方もいるかもしれませんが、その辺の恥は承知で書くつもりです。
こんな感じの事を書いていければなと思ってます;
(1) Mass Replications & Extensionsプロジェクトについて
(2) 学んだこと①:追試研究には作法(?)がある
(3) 学んだこと②:追試研究を出版するのは大変(Psychological Science / SPPS投稿時の裏話)
(3) 学んだこと③:いろいろなプレレジと個人的なオススメ
とりあえず今回はMass Replications & Extensionsプロジェクトの紹介をしようと思います。ちなみにこれ、誰でも参加できるプロジェクトなので、Giladの追試研究に参加したい、色々勉強したい、という方は是非最後の方までよんでみてください。
Mass Replications & Extensionsとは
Gilad(Hong Kong University)が主導するプロジェクトで、めちゃくちゃ簡単にいうと、
1. 授業の一環で、学部生に追試実験を計画させて、論文形式のレポートを書かせる
2. 実施が終わった追試実験のマテリアルと学生のレポートを世界中のECRs(early career researchers)に配布して、第一著者(実験に関わった他の学生とのjoint first author)として雑誌投稿のための論文を書かせる
といったことをやっているプロジェクトになります。自分はECRとして2つめのパートから参加しました。
ただこのプログラム、こんなに簡単に紹介してはいけないほど緻密にプログラムされていて、学部生が主導で行う追試実験の質は極めて高いです。
もう少し詳細な流れはこんなかんじです;
・学部生がGiladや彼のラボの大学院生の手を借りながら、研究の概要(論文)のイントロ)、Qualtricsでのサーベイ、QualtricのRandom dataを使ったJamoviの分析コードを作成し、いわゆるRegistered Reportの鋳型となるようなレポートを書き上げる。
・そして、他の学部生・大学院生からのpeer reviewを受けた後、Giladが最終レポートを使ってOSFで事前登録をして、そのまま実験実施、という流れになります。後はデータセットを学生に渡して結果・考察を書かせて授業は終了。
・学生が最後までレポートとを書き終わったら、実験に関連するマテリアル(データ、実験マテリアル、事前登録、分析コード等もろもろ)をECRsが引き継いで、論文執筆・出版。Giladはもうすでに50以上の追試を行っていますが、今までの彼のチームの追試論文で「どの雑誌にも引っかからずにぽしゃった」という論文は無く、今のところ全て出版されています(すごい)。
Heyman and Ariely (2004)の追試を引き継ぐ
ここからは、自分が彼のプロジェクトに参加したときのお話です。
2020年12月にケント大学で行われたGiladの招待講演がきっかけで、Heyman and Ariely (2004)の追試プロジェクトを引き継ぐことに決めました。彼のウェブサイトにあるECRの引継ぎ待ちの追試研究リストのなかで、読んだことがあって最も興味のあるのがこの追試だったのでこの研究にしました。
一応簡単にHeyman and Ariely (2004)を紹介しておくと、「援助要請をする際の補償のタイプ(お金 vs. お菓子)によって、補償の大きさの効果が変わってくるよ」といった話です。ちょっとこれだと自分でも何を言っているかわからないので別の説明を試みます。
補償タイプがお金の時は、補償の大きさが上がると、援助行動の質があがる一方で、お菓子の時は、補償の大きさは援助行動の質に影響を与えない
はい、こんな感じ発見をした研究です。
このプロジェクトに参加した時はそこまでオープンサイエンス・追試に熱心だった訳ではありませんでした(恥ずかしながら、「プレレジ?QRP警察にHarking疑われるのはさすがにだるいから仮説をとりあえずプレレジしてあとは使ったものオープンにしとけばいいかな~」と本気で思っていました)。めちゃくちゃ正直に言うと、オープンサイエンス・追試どうこうよりも、joint first authorshipに惹かれてプロジェクトに参加しました。
そこまでオープンサイエンス・追試に熱心じゃなかったことが祟って、論文執筆は思った以上に大変で、追試のノウハウであったりオープンサイエンスのいろはを論文執筆をしながらたくさん学ぶことになりました。次の投稿では、自分が論文を執筆しながら学んだ、追試研究のいろはについてまとめてみようと思います。
もし追試研究論文の執筆に興味がある、Giladのチームの人と一緒にオープンサイエンスについて学びながら追試研究をすることに興味があるという方がいれば、もっと詳しい話ができるのでTwitterのDMか何かで連絡を頂ければなと思います。
ちなみに、今もECR待ちの追試研究がたくさんあるので、もし自分が執筆したい追試研究あるか是非一度Giladのウェブサイトを訪れてみてください。
では
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