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「シャレード」
古い時代の映画らしい映画を観たいと思い、昨日はフランク・キャプラ監督の「或る夜の出来事」(1934年)を観ましたが(素晴らしかった!!)、今日はもうちょいと新しい(それでも自分が生まれる前)の「シャレード」(1963年)を観ました。
この作品はスタンリー・ドーネン監督の映画というよりオードリー・ヘップバーンの映画と言った方が通りがいいでしょうけど、私がこの映画のことを知ったのは中学生の頃。
その頃私は、親から、今でいうデアゴスティーニ的な定期的に宅配される映画音楽のレコードを買ってもらっていましたが、それがとにかく楽しみで、手元に届いたレコードはヘヴィローテーションで聴くのが毎回のお約束でした。
そしてそのレコードには映画情報冊子が付属していて、それが私にとっては映画の教科書的な存在でした。
そのせいで「テーマ曲と内容と象徴的な場面は知っているけれど観たことはない」という映画がたくさんあったりするんですが「シャレード」もそういう作品のうちのひとつでした。
いつか観ようと思いつつ、早40年以上が経過。
そしてようやく今回、初見となりました。
いや~名作でしたね。
おしゃれでコミカルでしかもサスペンスフルという、まさに「これぞ映画!」と言いたくなるようなエンターテイメント作品でした。
ミステリー作品としてはほぼ途中で犯人がわかってしまいますので、犯人当ての楽しさはそれほどでもありませんけど、それでも「次々に新しい謎が生まれて敵味方・善玉悪玉がくるくると入れ替わる」スピーディな展開で、ラストシーンの大団円までしっかり興味を引っ張っていってくれました。
オードリーをめぐる怪し気な男たち、ケーリー・グラント、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディ、ウォルター・マッソーというスター男優たちのクセのある演技も素晴らしかったし、ヘンリー・マンシーニの都会的な音楽や、俳優たちの洗練されたセリフのやり取りもとても楽しかったです。
細かいところだと、小道具として登場するルガーP08。
最初は子供のおもちゃの水鉄砲として出てくるので「ルガーの水鉄砲なんて、おもちゃにしては随分と凝ってるなあ」と思ったのですけど、最後は犯人の武器として本物のルガーが登場。
これはしっかり「第二次世界大戦中に行方不明になったドイツがらみの金を奪い合う」というストーリーとも呼応していて「監督、やるねえ!」と拳銃マニアとしてはほくそ笑むポイントでした。
とはいえ、この映画の最大の見どころはやはりオードリーの小悪魔&妖精的な魅力ですよね。
オードリーは本当に綺麗で可愛くてチャーミング。
「ローマの休日」のお姫様もいいですけど、こういうどこか浮世離れした市井の人物を演じた方がより個性が際立つ感じもしますね。
それと最初にタイトル画面で「MISS HEPBURN'S CLOTHES BY GIVENCHY」と誇らしげに記されている通り、この映画のオードリーのファッションを担当したのはジバンシー。
映画を観た方ならご存じでしょうけど、オードリーが登場するどのカットをとっても本当にうっとりするぐらいフォトジェニックで、この映画のせいで「ジバンシーを着たい!!」と思い焦がれる女性がどれほど世界中に誕生したことかと思いますね。
実は私が一番好きなオードリーの映画はピーター・オトゥールと共演したウィリアム・ワイラー監督の「おしゃれ泥棒」なんですけど、「シャレード」もなかなかの素晴らしさでした。
個人的なランキングはひっくり返りませんが、かなり肉薄しております!、
それともうひとつ、作品の背景としても1960年代のパリの粋な感覚が上手く活かされている「シャレード」。
私個人の文化的なルーツはベトナム戦争やヒッピーに象徴されるポジティブばかりではない混とんとした70年代にありますけど、その前の、それこそ両親世代が人生を謳歌していたバイタリティに溢れる明るい60年代って「いい時代だな~」と映画を見終わってからしみじみ思いました。