【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか144】11月(7)腱鞘炎①
10月半ばに娘が復職して以来、平日の昼間に私がべべさんをケアする時間が増えた。その結果、右の手首が痛むようになった。ストレッチングをして何とかならないかと思っていたが、気がついたら、あら、左はこんなに曲がるのに、右は曲がらないじゃないですか。洗濯ばさみをつまむだけで痛い。このまま放置したらやばいのかしら。
そこで、まずは薬局でサポーターを探すことにした。日本だと、コットン製で通気性のある薄手でシンプルなものから、留め金付きのごっついのまで、いろいろあるはずだ。まあ、そんなに酷いわけじゃないし、簡単な、数百円ぐらいの安いのを買って、使ってみて様子を見よう、と思って、薬局へ。
日曜日だったので、いつもお世話になっている近所の薬局はお休みだ。繁華街の入り口に近い、24時間営業という、フランスにあるまじき薬局に行く。
ふむふむ、絆創膏とか置いてある、このあたりにサポーターがないかな? お、あったあった、足首用ね、こっちは膝、と。えーっと、手首用はどこ…? ないんですよ、これが。足関係ばっかりで、腕関係はない。フランス人は手が丈夫なのか? 或いは足が弱いのか? んなはずないか。よし、ここは一つ店員さんに聞いてみよう。
まずはGoogle翻訳さんで、「手首のサポーター」というのを検索する。あー、なんかもう発音面倒くさそうな単語が出てきちゃったよ。こりゃ、言うより見せる作戦だ。ちょうど通りかかったお兄さんを捕まえて、「えくすきゅーぜもあ、これある?」と見せる。
考えてみたら、娘が出産した直後、お七夜のときに足型を飾る額を買いにいったときも、店員さんを捕まえてこう聞いたな。つまり、この4か月、べべさんは着々と成長している一方、ばあさんはあんま成長していない、と。あれー?
「ああ、あるある! マダムが使うの? 右手?左手?」みたいなことを聞かれたんだと思うんだけど、よく分からない。「ごめん、私のフランス語は酷いんで…」「僕の英語も酷いけどね! ちょっと待ってて、今持ってくるから」。めるしーぼくー。
お兄さんが倉庫から持ってきたのを見て、ぎょっとした。これって、手首骨折した人とかが使うのでは?というごっついやつ。三つぐらい留め金が着いている。
「ほら、これ!」「えーっと、もうちょい、なんていうか、ライトでシンプルなのはないかな…?」「うん、手首用っていうとこれになるね」「そ、そうか…。お幾ら万円するのかな?」「えーっと、5ユーロぐらいだと思ったけど、待って待って、ちゃんと確かめてみよう」とレジへ。
レジの機械をいじくって、お兄さん、「あー、違った、50ユーロだ!」。おいこら、文字通りの桁違いじゃん。「ご、ごじゅうっすか、それは結構なお値段だわね」とひるんだら、「でもでも、グリーンカードがあるなら、お医者さんに行って、お医者さんが処方箋を出してくれたら、これ、只になるんだよ」。お?
お兄さんは確かに「グリーンカード」と言った。私の理解では、それはアメリカの永住権保持者のカードのことだ。が、勿論、ここではアメリカじゃなくてフランスの永住権のことを言っているのだろう。
娘はまだ永住権を持っていない。しかし、フランスの社会保障には加入している。妊娠中にお医者さんの指示でエコー取ったり、産後に助産師さんの指示で搾乳器をレンタルしたり、そういうのは全部無料だった。
怪我や病気と妊娠では話が違うかもだけど、今のお兄さんの話では、お医者さんの指示があれば、50ユーロが只になる、ということね。ただし、永住権があったり社会保障に加入していたりすれば。
ふむ。私は永住権も社会保障もない。けど、ここで思い出す。私ってば海外旅行用の保険に入っていたじゃありませんか。結構な額の保険料払って。まずその保険が使えるかどうか、確認すべきじゃない?
お兄さんに、「分かった、それじゃまず、お医者さんに行ってくればいいってことね! ありがとう!」と言って、外に出る。さて、次にやることは、保険屋さんに連絡を取ることだ。連絡先が何処かにしまってあったはず。探さなきゃ。