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「経済力学」松尾浩一著 その11

 例えば、物理変化や物理的な反応というのは可逆性が確認されています。それに反して、化学変化や化学反応においては可逆性が確認できない場合が多々あります。つまり、熱力学エントロピーという概念において、必ず、エントロピーが増大するのは、化学的な反応や化学的な変化に限られると考えられます。

 そして、経済において、この化学反応や化学変化に該当するのは、物やサービスの生産にあたると考えられます。それを販売という取引を通して、経済においては、流通させているのです。つまり、経済においては、お金の流れと、物やサービスの販売という流れは、相反する流れを作り出しています。それが、経済における可逆性であると考えられます。つまり、交換という取引が、経済における可逆性だと言えると思うのです。

 また、人々の労働も、お金に変えることができます。この場合も、人々の労働とお金を交換する事で、取引が成立する場合です。しかし、この交換の場合は、可逆性があるとは決して言えません。

 つまり、経済の中にも、実際には、可逆性がある場合と可逆性がない場合の2種類の取引形態があると考えられます。

 つまり、人々の労働という行為には、可逆性が認められないのですから、その場合のエントロピーは常に増大していると言えると思います。また、物やサービスの生産という行為にも、可逆性は認められないため、エントロピーは常に増大すると言えると思います。

 そして、経済において、可逆性が認められるのは、一次産業(製造業)ではなく、二次産業(販売業)に限られていることになります。

 つまり、これらの事実から、ミクロ経済においては、必ずしも可逆性があるとは言えないことが理解できると思います。

 しかし、マクロ経済においては、経済には、景気という波が存在し、また、経済はマイナス成長することも、現実として、わかっているために、可逆性があると考えられるため、経済というお金の流れには、ミクロとマクロという2つの観点から経済を見ることが特に重要になってくるのだと思います。

 そして、マクロ経済においては、可逆性があると考えられるために、エントロピーは増大しないと考えられますが、そこに矛盾を持ち込んだ場合、エントロピーは、果たして増大するのか?という答えは、私が、考案した、経済力学エントロピーの定義式

 ⊿edS = ⊿ WM/G[WM:金利、G:お金の絶対的価値ゴールド]

に、実際に、マイナスの値のエントロピーを代入することにより、理解できるものと思います。つまり、

 −⊿edS = ⊿WM/G

として計算を試みます。

 例えば、0年から1年あたりの金利が年0.1%、金の価格が1グラム13,000円の場合の経済力学エントロピーを計算してみると、

 −⊿edS =0.1%[円/年]  /13000[円/g]

 −⊿edS = 0.001・1/13000[g/年]

 ∴ −⊿edS = 7.6923・10^−8[g/年]

となります。

 この式の結果から、経済力学エントロピーは定数で表されるため、一定であることが理解できると思います。しかし、この計算結果は、矛盾していることが理解できると思います。なぜならば、この計算結果は、g グラム、つまり、質量や、年、つまり、時間も、マイナスになることは考えられない概念であり、この、どちらかが、マイナスでなければ成り立たないためです。また、Gは、お金の絶対的価値ゴールドなので、マイナスにも、ゼロにも、絶対になり得ません。

 つまり、マクロ経済に矛盾を持ち込んだ場合には、お金の絶対的価値がマイナスになるか、または、質量や時間がマイナスにならなければ、成立しないことになるため、経済に矛盾を持ち込んだ場合には、経済システム自体の故障状態を表すことになるのです。そして、経済に矛盾を持ち込み、そのままの状態を維持している場合には、経済が全く成長せず、そして、経済が衰退していく結果を招く可能性があることも理解できることになるのです。それはなぜならば、経済システムが故障して、動かないエラー状態であるため、経済自体が回らない状態になるためです。

 ここで、私が定義した経済力学エントロピーの定義式において、右辺について考えてみたいと思います。私が定義した経済力学エントロピーの定義式では、お金自体がする仕事は、金利で表され、それを、絶対的金銭価値ゴールドGで割った値であることが理解できます。つまり、お金のする仕事、つまり、金利を、絶対的金銭価値ゴールドGで割った値は、お金自体の価値を表すことになります。そして、絶対的金銭価値ゴールドGは、経済における矛盾を実行した場合上昇することがこれまでの経済的観測から理解できています。つまり、絶対的金銭価値ゴールドGの値が、経済的に矛盾した状態をずっと継続していると、どんどん上昇する結果を招くことが理解できるのです。つまり、経済におけるマイナスの経済力学エントロピーというエネルギーは、どんどん、絶対的金銭価値ゴールドGの値を上昇させるエネルギーとなることがわかると思います。つまり、その場合、お金自体の価値をどんどん目減りさせることになりうるのです。

 つまり、経済的に矛盾した状態からは、絶対的金銭価値ゴールドGの値の上昇を招き、お金自体の価値をどんどん低下させることになるのです。

 それは、つまり、国家経済において、人為的な経済的矛盾を実行した場合の経済現象として、インフレーションが起こることが理解できるのです。 

 現在、アメリカは、この経済の人為的な矛盾状態から、ようやく脱し、通常の状態に戻す作業の真っ最中ですが、他の国々がこれに追従できていない現状があります。そしてイギリスは、現在、国内のインフレに対して国家の財政的インフレをぶつける経済政策に打って出ていると思います。そして、どちらの方が有効な政策になるのか、その答えは、絶対的金銭価値ゴールドG、つまり、金の価格だけが差し示していると私は考えているのです。

 しかし、ここで考えてみてほしいのですが、この日本においては、現在、日銀への預け入れ金利において、マイナス金利の導入がなされています。また、異次元緩和もお金の価値を下げる行為です。つまり、私の定義した、経済力学エントロピーの定義式の右辺の分数の分子が、お金のする仕事、つまり、金利に該当し、ΔWM/Gは、お金自体の価値に該当するとすれば、そのお金の価値がマイナスの場合を、式で表すと、

 −ΔecoS = −ΔWM / G

と表すことができます。つまり、矛盾した状態が成立していることになります。しかし、その日本経済への効果を見た場合、マイナスのエントロピーの効果となり、エントロピーがマイナスで表される場合は、系の外部へのエネルギー放出と系の外部から内部に対する仕事をもたらす場合をマイナスで表すと、熱力学の約束事で定められているため、お金の持つエネルギー自体が日本から海外に放出され、そして、系の外部から系の内部への仕事という結果をもたらすのであるから、日本への仕事の結果をもたらすと考えられます。これは、現在の、日本における、海外(米ドル等)への日本円の換金流出を表しており、また同時に、日本の大企業への海外からの大きな利益という結果を招いていることも表していると考えられるのです。

 しかしながら、日銀が、日本の国内経済に持ち込んだ矛盾のために、日本の国内経済は、故障した状態ですから、日本経済そのものが、マイナス成長に陥り、その煽りを受けて、国民生活が、どんどん貧困化してきていると言えるのです。

 そして、経済における、マイナスの大きさのエネルギーとは、マイナスの経済力学エントロピーのことであり、マイナスの経済力学エントロピーが、経済におけるリスクというマイナスのエネルギーを表しているのだという見方をすれば、今現在の日本の経済状態で、国や日銀が、国内への積極的な投資というリスク行為を行った場合、プラスのリターンが得られる可能性は非常に大きいと言えると思います。

 しかし、現行の日本の法制度上においては、日本の国が、現在の国民生活に対する積極的な投資を怠れば、その結果、日本国民の更なる貧困化が進み国民生活の破綻を招くだけであることは、容易に理解できると思います。そして国による国債の発行という行為は、日銀による債券投資となりうる行為なのです。つまり、国債の発行という行為は、国の借金では決してないのであり、それは、国による投資という行為なのです。

 つまり、日本の国と日銀とが、それぞれタッグをきちんと組み、国は、国債の発行によってベーシックインカム制度導入による国民生活への積極的な投資と、日銀による上場企業へのETF投資を並行的に行うならば、それぞれの投資リスクという、マイナスのエネルギー同士の掛け算となり、その結果として、日本国家の経済成長がプラス転換するための、大きな確実性にもなると、私は考えているのです。

 現在の日本政府が、国民への金銭的な投資を、全く行わないために、今現在の日本経済の衰退を招いているのです。プライマリーバランスの維持よりも、国民生活を守るための国による、国民への積極的な投資が、何としても必要なのです!

 そして、最初の問に戻りますが、経済に矛盾を持ち込んだ場合に、エントロピーは増大するのか?ということについて言及するならば、エントロピーが増大するのは不可逆変化の場合になります。しかし、国内経済に矛盾を持ち込んだ場合には、国内経済は、故障状態に陥り、経済が回らない状態になり、その結果として、国内経済そのものが、一方向への不可逆的な変化となり、国内経済は、衰退していくだけになります。そして、その場合の経済力学エントロピーは、マイナスの値で、増大していくことになりますが、同時に、金の価格上昇をもたらします。つまり、お金の価値が、どんどん小さくなるため、国内でのインフレが、どんどん進んでいくことになるのです。また、マイナスの経済力学エントロピーは、経済のリスクも表していますが、マイナスの経済力学エントロピーが増大していくということは、国内経済における経済リスクだけが、どんどん大きくなっていくことを表しているのです。

 つまり、国家や中央銀行が、国内経済に人為的に矛盾を持ち込んだまま、何も対策を行わなければ、国内経済では、インフレが、どんどん進んで、物価上昇だけが、どんどん大きくなり、人々の生活がどんどん苦しくなっていくだけなのです。つまり、日本の国や日銀の仕業によって、国民生活そのものを、大きく苦しめる結果しかもたらさないのです。

 つまり、経済に人為的な矛盾を持ち込むことは、国家犯罪に等しい行為になるのです。

 しかしながら、リスク、つまり、マイナスの経済力学エントロピーというエネルギーは、経済に、マイナスの効果をもたらしますが、リスクというマイナスのエネルギー同士の掛け算にできれば、それは、確実性という、プラスのエネルギーに変えることができ、プラスの効果をもたらすのです。

 現在の日本経済において、経済におけるリスク、つまり、マイナスの経済力学エントロピーというエネルギー同士の掛け算にするためには、これまで、日本経済において、日本の国は、日銀によって、上場企業への一方向の投資を行ってきましたが、その結果、日本の国内経済は、大打撃を受け、現在では、マイナス成長にまで、陥るようになっています。

 しかし、日本経済は、上場企業だけで成り立っているのではなく、現在のように、国民の消費行動が大きく縮小している状態では、国内経済は、経ち行かなくなるのは当然のことでしょう。そのため、国からの国民への直接的な積極的投資が、必要不可欠なのです。

~お金の流れで見る日本経済トライアングル~

 上の写真、お金の流れで見る経済のトライアングルで私が示したように、国から見た、日本経済の方向は上場企業だけではなく、国民の側にもあるのです。つまり、企業側への一方向の積極的投資だけでは、決して、うまく行かないのですから、国民の側への積極的投資が、必要不可欠であることが、十分理解できるのです。

 そして、国からの積極的な投資が、上場企業と国民の双方に実行されるならば、投資リスク、つまり、マイナスの経済力学エントロピーという、マイナスのエネルギー同士の掛け算となり、日本経済への現在のマイナスの効果をプラスの効果に変換する方法は、それしかないと言えると、私は考えるのです。

 そして、そのようにして、日本の国の責任において、国民の消費活動の足かせとなっている消費税をまずは廃止して、その上で、富の再分配を行わなければ、日本経済は、日本の国が、経済に矛盾を持ち込んだことで、現在の日本の国内経済システムが故障して動かない状態であるため、日本経済そのものが、不可逆変化に陥ることになり、その場合、マイナスの経済力学エントロピーは、増大するため、このまま、日本経済は、衰退の一途をたどることにもなりかねないと言えるのです。

 そして、日本経済を回復させるためには、2つの方法しかないと言えるでしょう。まず、一つ目は、日本経済の矛盾を完全解消し、企業側への積極的投資と、国民の側への積極的投資を並行して行うこと、もう一つは、基の日本の経済状態に戻すことの二つしかないのです。しかし、基の状態に戻すことは、はっきり言って不可能でしょう。何故ならば、日銀が、これだけ大量の円を刷って市場に放出してしまったためです。それであれば、日本経済を回復させるためには、その方法は一つしかありません。つまり、企業への積極的投資と、国民への直接的な積極的投資の両方を行い続けることしかないのです。そして、企業側と国民の側の双方の投資の方向をクロスさせる、つまり、掛け算することで、投資リスク、つまり、マイナスの経済力学エントロピーという、マイナスのエネルギー同士の掛け算にするしか日本経済を回復させる方法はないと言えると、私は、考えるのです。

 つまり、マクロ経済に、矛盾を持ち込んだ場合には、経済の故障状態に陥るため、経済自体が回らなくなるため、経済の衰退を招くだけですが、本来のマクロ経済というのは可逆的な変化であるため、エントロピーは一定であり、エントロピーの増大により、無駄になってしまうエネルギーは無い状態を維持できると考えられるため、その経済におけるエントロピーのエネルギーを有効に使う方法が存在し、その方法とは、経済における矛盾を完全解消した上で、経済における、投資リスクというマイナスのエネルギー同士の掛け算により、プラス転換に導くことが可能であることを、きちんと、経済力学エントロピーという状態量が、物語っていると言えるのです。

 つまり、現在の日本経済を立て直す方法は、日銀からの企業への積極的投資だけでなく、国からの国民の側への積極的投資をベーシックインカムの支給として行うことで、投資リスク同士の掛け算とすることと共に、現在の日本経済における経済的矛盾をきちんと解消するならば、日本経済は、必ずや回復することを、きちんと物語っているのだと私は考えるのです。しかしながら、マクロ経済に矛盾を持ち込んだままでは、経済システム自体の故障状態を表すため、このまま何もしなければ、日本経済のさらなる衰退を招くだけであることも、日本の国は、きちんと理解しなければならないことなのです。

サポートありがとうございます!このお金を私は決して無駄には使いません。これからも、ぜひとも、見守っていてください。よろしくお願い致します。^_^