「熱力学エントロピーの世界地図」その5 ひーろまっつん 松尾浩一
§5. 経済力学エントロピーの定義式の再定義
ここで、経済力学エントロピーの定義式について、再定義を試みることにしたい。
私は、これまでの経済力学エントロピーの定義式は、お金のする仕事を、運動エネルギーと位置エネルギーから、導いたことにより、お金のする仕事を的確には、表せていないと思うため、ここで、お金のする仕事自体をきちんと定義することによって、経済力学エントロピーの定義式の再定義を試みることにする。
お金のする仕事は、二通りである。一つは、金利によってお金が増えること、もう一つは、お金の価値に基づく交換によってお金が増やせることの、二通りの仕事である。
前者のお金のする仕事では、お金が1円増えるために必要な、お金の持つ力が分わかれば、お金のする仕事は、容易に計算できる。
例えば、お金のする仕事が、一年間に1円増える場合のお金の持つ力を計算すれば、一年間を秒に換算した値は、
31,536,000秒になるので、1を31,536,000で割れば容易に計算できる。実際に計算してみると、F=3.171×10^−8となる。
つまり、金利の持つお金を増やす力は、FMir=3.171×10^−8となるため、金利によるお金のする仕事は、
WMir=FMir×年
=3.171×10^−8[W]×31,536,000[s]
≒1[W・s]
≒1[J]
となる。
つまり、このときのWMirの変化量を求めれば、金利によってお金が増えるときのお金の仕事量の変化が求められることになる。
つまり、
⊿edS=⊿WMir/G[J/円]
=⊿3.171×10^−8・s/G[J/円]
この式が、金利によってお金が増える場合の経済力学エントロピーの定義式ということになる。
次に、お金が、その価値による交換によって仕事をする場合の、お金の持つ力を計算してみることにしたい。
ここで、これまでの経済力学エントロピーの定義式を持ち出すことにしよう。
⊿edS=⊿WMa/G
この経済力学エントロピーの定義式の右辺より、お金の価値は、⊿WMa/Gで表されるため、交換によってお金か増えるときのお金のする仕事は、次のように表すことができる。
FMt (W)/G[円]・s(秒)
=⊿WMt[J]/G[円]
∴FMt・s=⊿WMt
このFMt・sの値(お金のする仕事)を、経済力学エントロピーの定義式に代入すれば、交換によってお金が増える場合の経済力学エントロピーの定義式が求まることになる。
つまり、
⊿edS=⊿WMt/G
となる。
そして、お金が仕事をする場合のすべてのお金のする仕事を勘案した場合の経済力学エントロピーの定義式は、次のように表すことができる。
∴⊿edS=⊿WMa/G
=(⊿WMir+⊿WMt)/G[J/円]
これからは、この式を、経済力学エントロピーの定義式とすることにする。