ゲゼモパウム 第二話
私は早速、上官に報告した。
「兵長殿、次の丘を越えた先にオアシスがあります」
「それは本当か二等兵?」兵長は言った。
「はい。兵長殿。あれは紛れもないオアシスであります」
「二等兵、もしかしたら幻ではないか?」一等兵は言った。
私は思わず言葉を漏らした。
「幻?」一等兵の言葉を否定したい気持ちにかられた。しかし、―等兵は砂塵に目をやられていた、物事を正確に判断できる状況ではない。
「上官殿、確かにあれはオアシスであります。私の目は正常を保っています。もちろん私などの二等兵風情が上官殿の意見に口を挟むのは以ての外ですが、あれは間違いなくオアシスであります」
「その言葉に嘘偽りはないな」用心深い伍長は右手で砂埃を払うと言った。「私たち調査団は何としてもここで生き残る必要がある! 仮にその発言が嘘偽りならばお前を許さない」
「仲間を信じるんだ伍長」兵長はなだめてくれた。
兵長の一言でメンバーの信頼を得ることに成功した。
私たち調査団は無謀な賭けにでた。絆を守るためにどのような困難な出来事でも信じるという大きな賭けだ。いずれにしても兵長の言葉は私に感動を与えた。そしてその言葉が徐々に現実味を帯び始めた。砂漠に近づく度に南の国のパラダイスみたいな森林が見え隠れして、走馬灯のように記憶が蘇る気がした。中心に大きな湖があり、沐浴するにも十分なスペースが完備されていた。
私は思わず唾を飲み込んだ。そしてあっと言う間に感動の雨嵐がこの地に降り注いだ。
私たちはラクダから降り、木にラクダを鞍で固定させて、動けなくさせた。そして服を全部脱いで、沐浴した。正真正銘のオアシスがそこに存在していた。
すると私の脳裏に過去の出来事――つまり砂漠の未開地にやってくる以前の自分たちの姿を思い出した。
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私たち5人は新兵訓練施設に所属する仲間内で構成されていた。
5人の座る端の席の空間だけがあいていて、そこには誰も近づこうとはしない。私は迷彩柄の軍服を着ているのだが、一介の軍服とは思えないほど、酷い悪臭がした。なぜなら、いじめの標的にされていたからだ。迷彩柄の軍服は複数の敵対者たちに汚されていて、大便を塗られていた。
私たち5人の訓練施設のカーストは常に最底辺だった。
私はそのなかでも一番能力が低く、知恵と運動能力が欠けていた。
あろうことか私は新兵訓練施設に入隊して初めての自己紹介の時に好物がピザだと言ったばかりに、周囲の者たちの失笑を買い、それと同時に軍曹から酷い言葉で罵倒され、私の愛称は「デブピッツァ」に定着した。
いつの間にか私を含めて運動能力が欠けているこの5人を合わせて〈フリーク5〉と名付けられていた。このことは上官や軍曹も黙認していて、軍隊の規律に友情なんてものはどこにも存在していないと思ったほどだ。兵長はこのメンバーのなかでは一番優秀だった。しかし、子どものころからのオタク気質でロボットアニメの話になれば一番熱心に語りだした。
私なんかは現実をありのままに受け止めるしかないと思っていたし、このありふれた日常はどこに行っても変わらないと本気で思っていた。