愛(2019.5.15)
汗 涙 鼻水 泉のごとく
髪 爪 髭 蔦のごとく
どれひとつとして
思うままになどならない
わたし などと自称しているが
このからだのどこにもわたしはいない
それを
諦めきれないから
せめて とばかりに
他人を踏みつけにしている足を見て
ようやく
わたし と名乗りをあげる
そんなことだもの
愛なんて
手に入るはずがない
踏みつけにしている足をどけて
踏みつけにしていた背中を起こし
汗と涙と鼻水にまみれた顔を拭き
髪と爪と髭をととのえてやり
そうして向かい合ったとき
その目を見て
あなた と呼べたとき
はじめて
わたし と名乗りをあげる
愛って
そういうもの
そしてそれは
生きているうちに一度
あるかないかの
まぶしさ
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