hirolin

詩、たまに短歌。できるときポエトリーリーディング、ひらがなで名乗ります。 その昔『潮流詩派』という詩誌にいました。 演劇好き。まれに観劇・映画などの感想。

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詩、たまに短歌。できるときポエトリーリーディング、ひらがなで名乗ります。 その昔『潮流詩派』という詩誌にいました。 演劇好き。まれに観劇・映画などの感想。

マガジン

  • 詩とおもう(スケッチ)

    情景やら心象やらを集めました。

  • 詩とおもう(作詞風味)

    歌ってみたい感じ

  • 詩とおもう(乞いと逢い)

    惚れた腫れたです。

  • 詩とおもう(ステイトメント)

    声明っぽいものを集めました。

  • 徒然

    観劇の感想、つぶやき、つらつらと思うことなど

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自転(2018.9.27)

それがどれほど陳腐で 手垢に塗れて 使い古されていても そういわざるを得ない 例えば 夕暮れや 星空や そんなものを 私が 涙が出るような思いで 眺めていたのだとしても 美しいとか 祝福だとか 卑近なくせに およそ 程遠い 絵を描けばいいのか 写真に残せばいいのか 成分を分析すればいいのか 鏡に映っているのは 私でも世界でもない そういわざるを得ない 自転の 果ての 切れ端を 掴むことを 私に許す

    • ひみつ(2022.10.19)

      秘密は 遠く離れた異国で 根づき やがて芽生えた   その土壌は 誰も耕さず 固く締まった土から 柔らかい芽を出した   いくつもの昼と いくつもの夜を数えて 伸びた葉と根は 自分を知らなかった   乾いた熱い空気 遠く離れた故国では 雨ばかり降っていたのに   夢などみなくていい みないほうがいい 固い土が囁いた

      • 中秋(2022.09.22)

        切り立ての爪のあいだから 涼しい風が吹きだす 訪れた人をもてなすように   明日もわたしは ふかぶかとこうべを垂れて 身のうちに巣食う虫をやしなう   すでに巣立った虫たちは ひと夏を終えて乾いた なにも預けるものはない   遠まわりをして 近道をみつける子ども 丸めた地図の襞をのばして   海から月が昇る あなたの横顔がわらう

        • 開路(2022.08.19)

          ひとたびひらいたその回路は 緑青が吹いても 風を通し続ける 暗がりからこつこつと 響く足音を頼りに 曲がりくねった山道さながら おいしげる草木にも惑わず ひゅう と 汗を乾かす ならばその風を 追わずには終われない 流れこむ光 つまさき立って はるかす海がそこに 溺れるくらいなら 飲み干してしまえと 旧いままに時を止めて もう閉じられはしないから

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        自転(2018.9.27)

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        • 詩とおもう(作詞風味)
          25本
        • 詩とおもう(スケッチ)
          73本
        • 詩とおもう(乞いと逢い)
          26本
        • 詩とおもう(ステイトメント)
          42本
        • 徒然
          30本
        • 短歌みたいな
          34本

        記事

          向こう(2022.07.14)

          磨り硝子の向こう 重ねられた皿 伏せられた湯呑み 淡い輪郭の 誰かの手が触れて 口元に運ばれる 誰か、とわたしは言った 淡い、とわたしは言った 手を翳して眺める風景は 儚く うつくしく その手は動かなかった その口は言わなかった   重ねられた選択の 伏せられた選択の 淡い輪郭の 磨り硝子の向こうで 縁が欠けている 底が割れている 磨り硝子越しに 赤く脈打ち 赤く流れる 石を詰めた雪玉を 磨り硝子に投げつける

          向こう(2022.07.14)

          穀雨(2022.04.19)

          水を含んだ土嚢は重く ひとつ積むごとに のしっ のしっ と音がする 雨あがり 晴れあがった空の下 積みあがった土嚢は みずからの重みで じんわりと 横たわっている 表面がすこし乾いた頃 また雨が降り 土嚢はあらたに水を含む 袋を切り裂いて 黒い土を掻き出し さらしてひろげて 晴れあがった空の下 色とりどりの種を蒔く 灰色に染まった指で わたしは 花を咲かせたい その花で わたしの指を 染めてみたい

          穀雨(2022.04.19)

          朝餐(2021.11.03)

          朝食の皿を下げる その瞬間 静けさに満たされたわたしに 傾く夜が 紛れもなくあった ここに時は満ちているけれど 星灯りで地面を辿れば 残骸だけが 息づく国がある 始まりの息 終わりの声 細くつらなるひと続きの それは架空の国 皿の上で 音を立てるナイフ 切り開きかみ砕き すべてを飲み込んだわたしの 朝に訪れた静けさ もう二度とはないなら 永劫と呼べ 舌によみがえる夜を どうにか越えていくのだ

          朝餐(2021.11.03)

          いまさら、いまなお

          サブレーとは、フランス語で「砂」という意味があり、そのサクサクと崩れる食感に由来するとか。 日本語で「砂を噛むような」と言えば、味気なさに情けなさも加味されて、決して良い意味では用いられない。 砂にも美味しい砂とそうでない砂がある。 ちなみにSugar、砂糖の語源も砂であるとかなんとかどこかでちらっと見たような気もする。砂漠の砂がすべて砂糖だったら、吸湿効果でさらに空気が乾燥するんだろうか。そんでさらに気温上昇、やがて溶け始め、シロップになりカラメルになり……その辺でやめとけ

          いまさら、いまなお

          その先(2021.4.3)

          空を見上げるのは 何かが欲しいとき そこがバスの低い天井でも 欲望は 伸びあがり突き破り 壮麗な尾をひいて 流れて巡っていく 人差し指で くるくると 地球儀を回すみたいに 無人の空き地で この指とまれ その先に 見上げるべき空などなくても 空を見上げるのは 孤独が満ちるとき 巡り巡って手にしたものは 「欲しい」のこだま 地球儀の小ささは わたくしの小ささ 海も空も 自身を分かつものを知らず そのこだまは 誰のものとも知れず 波をかえすように ふたたび巡っていく その先に 見

          その先(2021.4.3)

          光年(2021.3.28)

          その屋根に 鳥が とまっている ほんとうは 消えてしまった 星の 光が そこに届くように 鳥が 見知らぬ人を 知らないと言える あなたと くらべられる軌跡 その屋根に とまっている 鳥は なに色 星は なに色 そこかしこに 置き去りの倒木 誰にも 見つけられない その屋根と 星の 距離を 鳥は知っている

          光年(2021.3.28)

          写真(2021.3.26)

          静かな部屋に 枯れ葉が降り積もる 雨 風 日差し ときに雪 堆積していく層の随に 部屋は 閉じていく 佇む朝と昼 思い出す闇 静かな部屋は かさかさと染まっていく 遠のく けれど 消えはしない 降り積もった枯れ葉を かきわけて 潜っていく 生温かい底に 一枚の写真がある

          写真(2021.3.26)

          弥生(2021.3.24)

          春先の白けた空は それでも裏切らない 期待もしなくても 星くずから出来ている これらの体を 地にばら撒いて ひばり 高く きっと劇場では ホリゾントに まっさおな異国の空 信じている 闇の中はたやすい みんなが 見上げるだろう 地の中の 蚯蚓が ぬくもりながら その肌で 感知しているブラックホール わたしたちの 仮定のゆりかご

          弥生(2021.3.24)

          たんじょう(2020.9.17)

          五十年前 次の冬に生まれるわたしを 母は宿していた わたしは母のからだの中で 小さく息をしていた なま温かい 公園の噴水 かすかなしぶき 産湯に洗われた朝 水遊びの午後 未明の破水 わたしに宿った子は ひと月遅れの冬に生まれた 眠っている口元に 手のひらをかざし 寝息を確かめた夜 五十年後 わかものになった子を見上げる わたしの閉じたからだは 今もまだ 止まない水音を聞いている

          たんじょう(2020.9.17)

          2021年1月1日

          年が明けた。 昨日から今日へと、日が変わっただけなのに、「新年」という区切りを付与されて、その日は特別なものになる。昨年があまりにも世界的にあまりにもな状況だったためか、今年はさらに特別感が増しているように感じられる。 今この瞬間にも、コロナで苦しんでいる人とその治療に携わるたくさんの人たちは、新年どころではない時間を過ごしているはずだ。いつも通り何もない新年を迎えられた我が家は、たいへんに幸運なのだと思う。 たぶん、わたしは今鬱っぽい。 冬はだいたい沈むけれど、12月の末

          2021年1月1日

          しゅうまつ(2020.11.29)

          今日が終わる うすい鴇色の空の裾 世界が終わる日は こんな色だといい とろりと優しく 世界が終わるといい この空の裾の下 あなたは憩い 今日の終わりを 少しも疑わず 世界の終わりを 微塵も知らず すべての星が堕ちていく音も すべての時が遠ざかった後も 何ひとつ変わらず あなたは憩いながら 鴇色の空の裾が 終わりへと 飲み込まれていく あなたのまどろみの中で 鴇色の断末魔は ほのかに奏でられる そんなふうに 世界が終わっていくといい

          しゅうまつ(2020.11.29)

          だく(2020.12.22)

          抱きしめたい人がいる 抱きしめられたい人がいる あれこれ言われたところで どうにもひとりなのは間違いなくて だからどうしても 抱きしめたい 抱きしめられたい もう腕が言うことをきかなくなった そのときにも 抱きしめたい人のことを きっと考える わたしを抱きしめたかった人は もういない わたしはほんとうなら その瞬間 抱きしめられなければならなかった わたしはほんとうなら その瞬間 抱きしめ返さなければならなかった その罪を その腕の中で 許さなければならなかった 許されなけれ

          だく(2020.12.22)