おもいで(2019.11.1)
生クリームをのせた
パンケーキの傍らで
狐の死骸が
無数の蛆に喰い尽くされるのを
繰り返し眺めている
古いSF映画
近未来のレプリカントが
縋るように握っていたのは
紙に焼いた写真
データになった
わたしたちのおもいでは
もう擦り切れない
もう縋りつけない
手触りも匂いも痛みも味も
どこの森かは知らない
狐を喰い尽くした無数の蛆は
満たされて離れていく
灰にされた
わたしたちのからだは
蛆を満たすこともなく
陶器の容積を占め続ける
次の法則が更新されるまで
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