見出し画像

向こう(2022.07.14)

磨り硝子の向こう
重ねられた皿
伏せられた湯呑み
淡い輪郭の
誰かの手が触れて
口元に運ばれる
誰か、とわたしは言った
淡い、とわたしは言った
手を翳して眺める風景は
儚く うつくしく
その手は動かなかった
その口は言わなかった
 
重ねられた選択の
伏せられた選択の
淡い輪郭の
磨り硝子の向こうで
縁が欠けている
底が割れている
磨り硝子越しに
赤く脈打ち
赤く流れる
石を詰めた雪玉を
磨り硝子に投げつける

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?