- 運営しているクリエイター
#タロット愚者の旅
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅第7話修正版
―*―*―*―*―*―
大奥様の部屋のドアが閉まり
ジャンは優雅にクルリと体を回転させ、大股で歩き始めた。
ガロは慌ててジャンの後を追った。
「本当の名前って?オイラのこと?
オイラに本当の名前があるのかい?」
「あるのかい?ではなく『あるのですか?ジャンさん』だ」
「あ?あ、あぁ。あるのですか?ジャン様」
「様は余計だ、馬鹿にしているのか?」
「いや、だって、丁寧な言葉を使うんだろ?だから・・
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅第8話
執事のジャンは春祭りの準備に漏れはないか
屋敷の中を点検して回った。
「そうなるとグラスが少し足りないようですがどうしますか?」
「料理は大皿に盛り付け、小皿に取り分ければその問題は解決です」
「花瓶は去年と同じにならないよう今年はコチラを用意しましたがいかがですか?」
執事と共に歩き回りながら指示を仰ぎ、屋敷の召使たちにテキパキと指示を伝えているのは今年17になるガロだった。
5年前、ジャンは
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅 第6話
占い婆が粗末な扉を叩くと
ドアが細めに開いた。
「ハンナ、私だよ」
「あぁ婆さん、こんな朝早くに誰かと思った」
「旦那は?」
「夕べから帰ってない」
「また賭場かい?相変わらずだねぇ」
ハンナは半笑いで占い婆を部屋に招き入れた。
「旦那が留守ならちょうど良い、
ちょいと頼みごとがあってね、
この赤ん坊をしばらく預かってくれるかい?」
赤ん坊と聞いてハンナは真顔になり
婆さんの懐に目をやった。
小説・持たざる者のサバイバル タロット愚者の旅4
サルルが階段を駆け下りようとしたとき
大奥様に呼び戻された。
「よくお聞き、これから牧草小屋まで
誰にも見つかってはいけないし
誰かを連れて行ってもいけない。
今夜はアノ占い婆が泊まっているだろうから
彼女を連れて行きなさい」
何故この屋敷の者ではなくアノ占い婆を連れていくのか
訝しく思ったが質問など許される雰囲気ではなかった。
占い婆は調理小屋の竈の前で居眠りをしていた。
「婆さん、婆さん起き