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母と私の辛子蓮根ソング
よく晴れた日曜午前
母がシニア料理教室の試作で辛子蓮根を作るというのでお手伝いをした。
辛子蓮根を作るのは約4年ぶりで、前回はお正月に向けて母と姉と私の3人で一緒に作った。
「あの時はまだ大学生だったな〜」とか
「姉はまだ結婚していなかったな〜」とか
さほど前のことではないと思っていた出来事も、実は意外と時を経ていて、自分も周りも置かれた環境や立場がそれなりに変化していた。
環境だけが変化して自分がまだそこに追いつけていなかったり、ここにいるはずじゃなかったと後悔したり。自分で決めた環境のなかにすっぽりとはまった感じがしなくて、ただただ時だけが先行し、自分が時を追いかけている感覚。
勝手に戸惑って、勝手に焦って。
けれど、たぶんみんな同じ。
それでも、今は、手を止めないで、辛子蓮根作りに専念するだけだ!
.
蓮根の中に入れる辛子味噌
粉がらしや味噌やその他の調味料を
ぐるぐる混ぜる。
早くも辛子が「つーん」と、こちらの目や鼻を刺激した。
すると突然、辛子味噌担当の母が、
NHK『きょうの料理』のテーマソングに合わせて歌い出した。
(つんつくつくつくつんつんつーん♪つんつくつくつくつんつんつーん♪)
母は普段からこんな感じなので、そのメロディを聞いた直後は「今日も愉快だな〜」と微笑むくらいでいたけれど、どうも頭の中でそのメロディが離れなかった。
じわじわ〜っと笑いが込み上げてきて、何げ無しにそのメロディを口ずさんでみたところ、
もうダメだった。
急にツボに入ってしまい、
抜け出せなくなってしまった。
笑いを堪えながら
(つんつくつくつくつんつんつーん♪)
と大合唱する私たち。
どれだけ歳を取っても、楽しいものは楽しいし、おかしいものはおかしいのだ。
それはさておき、
辛子蓮根を作るときの醍醐味は、
蓮根の穴に辛子味噌を入れる過程にある
と私は思う。
辛子味噌の上で蓮根を押し付けるように回転させると、
辛子味噌がニョキニョキとお目見えする。
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なんとも愛らしい姿。
一番早く穴から出てきた辛子味噌が、一等賞獲得しました!と誇らしげな顔を見せる。
おめでとう!と拍手を送りつつ、全員がゴールするまで回転させ続けるのがこちらの役目。
(ちなみにこの時も、頭の中ではあのメロディが・・・)
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蓮根の穴をみっちり埋め、
ターメリック入りの衣をつけて揚げると、
黄金色に煌めく辛子蓮根が完成!
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88464184/picture_pc_7c2368e8a6ee728acfb723d6ccaf3ed4.jpg?width=1200)
スーパーで冷蔵販売されたものとは違い、揚げたてはカリカリで、揚げたてに勝るものなし!な神々しいビジュアル。
思わず見惚れてしまう。
粗熱が取れたら好きな幅にカットして食べる。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88464259/picture_pc_03b640264791bcfbed5f219edf4dac50.jpg?width=1200)
出来立て切り立ては、辛子の風味が強く、
いつにも増して攻撃的。
鼻骨が痛くなる辛さだった。
バラエティ番組でお馴染みの「からし大量罰ゲーム」を疑似体験している気分。
けれど、辛子というものは、つーんとくる辛さに鼻をおさえる行為までが辛子だし、それがあってこそ辛子は辛子になり得るのだし、
辛子蓮根自体はすごく美味しいから
“おいしうれし(罰)ゲーム”
みたいだったのでよし。
むしろ「この刺激をもう一度!」
と楽しみながら、
もう1切れ欲している自分がいて怖かった。
そして、そんな時でも、つーんとくる度に、
やはりあのメロディが頭の中で・・・
つんつくつくつくつんつんつーん♪