ミスドはゴールデンチョコレート
幼い頃、近所にミスタードーナツがない片田舎で育った私にとって、
ミスタードーナツ
=父が出張の帰りに買ってきてくれるお土産
だった。
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朝、寝ぼけたままキッチンへ向かうと、テーブルには、夜中に帰ってきた父が置いておいたのであろうミスタードーナツの箱が。
めやにが付いていることも忘れ、飛び上がって箱を開けると、ドーナツたちがきちんと前ならえして並んでいた。
母に「早く顔洗ってきなさい」と注意されても、ミスドを食べることを約束された私は無敵で、このときばかりは素直になれた。
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ポンデリングにフレンチクルーラー、ハニーチュロとたくさんあったけれど、わたしはいつも、
「ゴールデンチョコレート」一択だった。
理由は簡単。
黄色とチョコレートが大好きだから。
「黄色」というだけでときめいたし、どんなお菓子もチョコレート味を選んでいた私は、チョコレートドーナツが大好きだった。
だから、「ゴールデンチョコレート」は、私のためにあるようなドーナツだった。
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ところが、ある日、毎回ポンデリングを選んでいた兄が、ポンデリングのひと玉をくれたので食べた。
そのとき、小さい体にビビビビ〜ッ!と電撃が走った。
世の中にはこんなにもっちりもちもちでシャリっとシュガーのかかったドーナツがあるのか?!?!お兄ちゃん、こんな美味しいものを毎回食べていたの??お兄ちゃんやっぱすげぇ、、
と感動した。
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しかし、ふと我に帰ると、目の前には食べかけのゴールデンチョコレートが。
あ、、。
一瞬でもポンデリングに心移りしてしまった私は、眉をハの字にして、ゴールデンチョコレートを見つめるのだった。
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そんな夢のような存在だったミスタードーナツが、一度地元にオープンしたときがあった。
そのときは、町中が湧きに湧きまくった。
だが、町中のみんながオープンのうれしさのあまり、食べ過ぎて飽きてしまったのか、
数年経ってミスドブームは一気に収束し、いつしか閉店してしまった。
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そんなミスドとゴールデンチョコレートの記憶をふと思い出して、先日ゴールデンチョコレートがとてつもなく食べたくなった。
久しぶりに食べたその味は、驚くほど美味しかった。こんなに美味しかったっけ?!と目を大きく見開いた。
そして気づいた。
私の中のゴールデンチョコレートは、約10年前のもので止まっていたのだと。
ミスタードーナツ様はその間に何度も改良を重ねていた。
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大学生になってからというもの、全国に複数店舗あるドーナツチェーン(?)だと「フロレスタ」や「はらドーナッツ」などの「自然派ドーナツ」(←勝手に命名)の美味しさに気づいてからは、そればかり食べていた。
しかし、私のドーナツ人生は、ミスタードーナツから始まったことに変わりはない。
そして、ミスタードーナツが今ほどコラボ企画をしていなかった時代にミスド全盛期を迎えた私は、
どんなにミスタードーナツが様々なコラボ商品を発売したとしても、お店に行けば結局定番ドーナツを選ぶのだろう。
結局定番ドーナツが1番美味しいんだから。