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50代でキャリアにモヤモヤしている方へ。「人生後半の戦略書」を読んで

「キャリアについて、モヤモヤするのは当たり前」と、捉えられるようになれば、ちょっと楽になりませんか。
大なり、小なり、誰でもキャリアについて考えることはあると思います。そして、キャリアとは、ワークとライフを含めたものです。

私は50歳を越え、今後のキャリアについて真剣に考え、大学院仲間と「ミドル世代アップデートコミュニティ」を立ち上げ、「やりたいことが見つかるワークショップ」を続けてきました。
同活動を進めていく中で、多くの先輩方や同年代、後輩と、キャリアについて話すことが増え、また知人からの薦めもあって、国家資格キャリアコンサルタントを取得しました。その勉強する中でも、多くの仲間に恵まれ、とても感謝しています。

日々、キャリアについて、ずーっと考えている中、知人に紹介されて、読んだのが「人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方」(SBクリエイティブ、アーサー・C・ブルックス著、訳者木村千里)です。

・キャリアの落ち込みを避けるのではなく、乗り越える
・落ち込みと、さらには死と、正々堂々と向き合う
・栄光は蓄えておき、将来の楽しみにすることができない

人生後半の戦略書

と言った、現実を向き合うところから始まりますが、
「年齢を重ねることは、必ずしも悪いわけでもなさそう・・・」
と大きなパワーをもらった1冊となりました。

「もしかしたら、私にとっての今年の最良書では!」と思うほど、胸が熱くなった本です。

■アイデアを組み合わせて活用する能力は、高齢者のほうが高い

年齢とともに自然と向上する知能やスキルがあるのです。歳を取るほどに向上していくためのコツは、そうした新しい強さを理解し、養い、実際に発揮することです。
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複雑なアイデアを組み合わせて活用する能力は高齢者のほうが高いことに気づく人もいるかもしれません。言い換えれば、高齢者は、若い頃のような画期的な発案や、素早い問題解決はできないかもしれかせんが、既知の概念を使ったり、既知の懸念を他者に表現したりするのは相当うまくなっています。他人のアイデアを解釈するのも得意で、ときには発案者本人に、その意味を分かりやすく解説してあげることさえできます。

人生後半の戦略書

物事を考えるときにこれまでの経験から新しい意味づけが出来たり、ちょっとした工夫でオペレーションを大きく変えることができる、と最近感じていましたが、こういうことだったのか、とスッキリしました。
「既知の概念を使う」「他人のアイデアを解釈する」などあまり自覚していませんでしたが、これを読んでスーッ!と入ってきたのです。そして、歳を重ねることにも、勇気づけられます。
知らず知らずに、頭の中の引き出しに経験や知識が増えていていき、必要に応じて過去の経験や知見を引っ張り出して使っているように思います。
そして、「なぜ?」の意識を深く持つことで、新しいアイデアにも繋がっていくのです。

■知恵を生かし、第2のキャリアを再設計する


ちょっと長いですが、「流動性知能」と「結晶性知能」の説明あるので、本書から引用します。

1971年、キャッテルは、「Abilities:Their Structure, Growth, and action(能力:その構造と成長と作用)」を出版し、「人には2種類の知能が備わっているものの、各知能がピークを迎える時期は異なる」と提唱しました。
うち1つ目の知能が、「流動性知能」です。キャッテルの定義では、推論力、柔軟な思考力、目新しい問題の解決力を指します。一般的に、生得的な頭の良さと考えられている知能で、読解力や数学的能力と関連があることが研究で明らかになっています。革新的なアイデアや製品を生み出す人は、概して流動的知能が豊かです。知能テストを専門としていたキャッテルの観察では、流動性知能は成人期初期にピークに達し、30代から40代に急速に低下しはじめました。
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現代産業で若くしてずば抜けた業績を出す人はほぼ例外なく、流動性知能に頼っています。覚えが早く、重要なことに専念し、解決策を考案します。残念ですが、本書でここまで詳細に検討してきたように、加齢による流動性知能の低下は、ふつう避けられません。
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知能は流動性知能だけではありません。「結晶性知能」も存在します。結晶性知能とは、過去に学んだ知識の蓄えを活用する能力です。再び大図書館になぞらえて考えてみましょう。ただし、今回は、レファレンス係の仕事が遅いと嘆くのではなく、レファレンス係がうろつきまわる空間になる蔵書の膨大さに、目を見はってください。多少の時間はかかるにせよ、レファレンス係が目当ての本の所在を知っていることがいかにすごいことか、考えてみてください。レファレンス係の働き方を見れば分かるように、結晶性知能は知識の蓄えに依存するため、40代、50代、60代と年齢を経るほど向上します。仮に減少するにしても、人生の終盤になってからです。
キャッセル自身は2つの知能を次のように説明しています。「(流動性知能は)抽象的な問題を解決する原文脈化された能力であるのに対し、結晶性知能は、人が生きるなかで文化的適応と学習によって獲得した知識に相当する」
言い換えれば、こういうことです ― 若いときは地頭に恵まれ、歳を取ったら知恵に恵まれる。若いときは事実をたくさん生み出せるし、歳を取ったらその意味と使い方が分かるようになる。
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流動性知能だけを頼りにキャリアを積んでいれば、かなり早期にピークと落ち込みを迎えますが、結晶性知能の必要なキャリアを積んでいるか、もっとも結晶性知能を活かせるようにキャリアを再設計できれば、ピークが遅れる代わりに、落ち込みの時期も ― 来ないと言わないまでも ― かなり先に延ばせるのです。

人生後半の戦略書

私なりの解釈では、「若い頃から使っていた流動性知能だけでキャリアを切り拓き続けられることは難しく、あるタイミングからはこれまでの経験を生かし、かつ学習を続けることでキャリアは再設計できる」と捉えました。

確かにアイデアをポンポンと出し続けたり、スピード感を持って処理することに衰えを感じることがあります。一方、今まで見えていなかった視点が急に見えてきたり、俯瞰して物事を捉えやすくなってきました。こういった特性を自覚することで、自分ができること、やりたいことと向き合っていけばよいのだと思うのです。

■成功を追い求め続けるのか

仕事依存症の人が本当に求めているのは仕事そのものではなく、「成功」です。身を粉にしてまで働き、手に入れたいのは、お金であり権力であり威信なのです。なぜなら、それは世間から承認され、喝采され、賞讃されていることの表れであり、コカインからソーシャルメディアまであらゆる依存症のあるものの例にもれず、神経伝達物質のドーパミンを刺激するからです。
なぜそうも刺激を求めるのでしょう?私が出会った人たちの一部に言わせれば、成功したときの興奮は、一瞬とはいえ、「普通」の生活の陰鬱さを忘れさせてくれるのだとか。目標を達成することは、普段の冴えない気分を盛り上げる手段なのです。

人生後半の戦略書

成功で得られる満足感について語る際、考慮すべき要素がもう1つあるのです。つまり、成功は完全に相対的なものだということです。

人生後半の戦略書

キャリアは主観。
キャリアは人と比べるものではありません。

私が考える「成功」は、ちょっとした充足感です。
他者が対価を払い、それに対し価値を提供する。そして、その価値に満足し笑顔になることです。
そして、この笑顔をサステナブルに生み出し続けるには、ボランティアでは成り立ちません。
こんな想いを馳せながら、これまで「やりたいことが見つかるワークショップ」をやってきたんだなー、と振り返るきっかけにもなりました。

現在に集中すれば、より大きなもの、より良いものばかりに目を向けていると見過ごしてしまう小さな満足感を、現在の一瞬一瞬から得られるようになります。

人生後半の戦略書

そうだ!自己満足の世界こそ、幸せだと感じられるのです。

50代後半からは、自己満足が大事だと思います。他者と比較する必要はありません。自分こそが「充実している!やってよかった!楽しい!嬉しい!」とどれだけ感じられるかです。それは、感じられる回数、感じられる深さとも大事だな、と感じています。

人生の目標は自己満足である

ストア哲学者マルクス・アウレリウスは「宇宙とは変化であり、人生とは主観である」との言葉を残しました。

人生後半の戦略書

これからは主観を大事にしていきたいものです。

■自己理解する場を意識して設ける

「私はこういうタイプ」とか、逆に「私はそういうタイプじゃない」といった具体に、自分のアイデンティティーを固定的で不変的なものと考えていると、人生の多くの可能性を閉ざすことになってしまいます。常に柔軟に自己理解を見直せば、変化し続ける自分にそぐわないパターンにはまらず済みます。

人生後半の戦略書

私は、クリフトンストレングスで、最上志向Top1だったりします。

「やりたいことが見つかるワークショップ」では、クリフトンストレングスで強みを強み使いできるようにワークショップを行っていますが、毎回参加者の声から気付きがあります。
ワークショップでは、人生曲線(ライフラインチャート)をやりますが、これも書く時々によって、変化していきます。起こった事実をどう捉えるか、なので、現在のコンディションに左右されるのです。

こうして振り返ると、自分を内省する機会に恵まれ、結果的に自己理解をアップデートし続けていたのです。
自分の考えが気持ちが変化することを楽しめるようになれば、より人生・キャリアを楽しめることでしょう。

そして、noteを書くことで、インプットからアウトプットに変換に繋がっているように思います。

■過渡期こそが成長を後押ししてくれる

人生の目的を最も理解できるのも、困難でつらい過渡期です。

人生後半の戦略書

つらい時期には全くそうは思えないのですが、過ぎ去ってみると、「“あの”経験があったからこそ今がある!」と思えてくるものです。
大学院に行くきっかけも、当時の仕事での課題感からでした。
スキルを身に付けよう!と考えていましたが、スキル以上に、学ぶことの楽しさや、かけがえのない仲間に出会うことができました。

心理学者ロイ・バウマイスターは著書「Meanings of Life(人生の意義)」で意義を見出せば人生はもっと安定するようだと論じています。逆説的ともいえますが、過渡期の苦しみが人生の意義を生み出し、人生の意義が後続の過渡期に安定感を与えます。歳を重ね多くの変化に見舞われるなかで、これは大きな慰めの一つとなります。

人生後半の戦略書

苦しみは乗り越えてこそ、前向きに進むことができるのです。

ラルフ・ウォルドー・エマーソンは書きました。「人は葛藤するために作られたのであって、休むために作られたのではない。人の力は行動にある。ゴールでなく過渡期にいる人が偉大なのだ」。

人生後半の戦略書

ゴールを達成することばかり考えていましたが、そのプロセスで、もがきながらも、人は成長していくのです。そして、振り返ったときにその成長を感じ、自己満足に浸れるのです。

60代に向けて、成長し続けていきたいです。


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