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とんぐ侍
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
つかみどころのない侍
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
今日は何をつかもうか
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
明日はでっかい夢つかむ
【とんぐ侍 ゴミ当番の巻】
とんぐ侍が住む地域は、当番制でゴミ回収が終わった後のカラス避けネットを畳む順番が回ってくる。
早朝の介護施設での仕事を終え、歯医者に通院後、カラス避けネットの片付けをしようと予定していた。
歯医者の後は少々弱るとんぐ侍。
しかし、ゴミ当番はしっかり果たさねばならぬ本日の任務。
「さあ!始めまひょかっ」
とんぐ侍は言葉にし、気合を入れた。
雨の予報だったが、カラス避けネットを片付ける間だけは晴れてくれていた。
カラス避けネットは片付けたものの…
カラスの襲撃に遭ったゴミ袋たちから、こぼれ落ちた生ごみが、ゴミ置き場に取り残されていた。
インスタントラーメンにカレー…。
この暑さで異臭を放ってもいけない。
こういう時はバケツに水を少々汲んでいき、こすり洗いをする。
新聞紙や吸水するもので汚れた水を吸い取り、次回のゴミ出しで出せるようにナイロン袋に小さくまとめておく。
とんぐ侍は、ゴミ置き場の道路に染み込んでいる汚れも、100均で買った箒で掃き清めるのだ。
ご近所の方が喜んでくださるのも嬉しい。
今日は生ごみや宅配便の袋等、とんぐ侍の知るいつもに増して、たくさんのゴミが落ちていた。
よく見ると少し離れたところにもゴミが落ちていた。
ゴミ袋の持ち手が括られていないものはカラスに狙われやすく、カラス避けネットの合間からもカラスは突つき倒せる。
大きなゴミは拾い、細かなゴミは100均箒で掃き集めた。
軍手もはめて万全だ。
またゴミ袋を取りに一旦帰宅した。
ついでに次のゴミ当番のお宅へ、当番札を掛けようと玄関を出たところ、そのお宅から夫人が出て来られた。
そのお宅の夫人は、羽束師のナイチンゲールだ。
挨拶を交わし、羽束師のナイチンゲールは、とんぐ侍が手に持つゴミ袋に気が付いた。
羽束師のナイチンゲールは言った。
「散らかってましたか?」
とんぐ侍は頷き、
「またやられてましたんや、カラスに」
「手伝いましょうか?」
羽束師のナイチンゲールはそう言いながら、嫌な顔ひとつせずゴミ置き場まで同行してくれた。
「いやいや、もう終わりますから大丈夫でっせ」
とんぐ侍は心から感謝した。かたじけない。
羽束師のナイチンゲールは看護師としてのお仕事も忙しいはず。
家事もたくさんあるはずだ。
今日はとんぐ侍がゴミ当番。
精一杯務めよう。
羽束師のナイチンゲールもまた、とんぐ侍に感謝し、家へと戻って行かれた。
とんぐ侍は掃除をしながら、綺麗になるゴミ置き場に嬉しくなり、羽束師のナイチンゲールの心遣いに清々しい気持ちになった。
とんぐ侍は、ご近所だからこその出来る限りの礼儀を尽くそうと日々心がけている。
自分がそうだからといって他人に求めてはいないのだが、とても嬉しいものだ。
とんぐ侍は空を見上げた。
「もうすぐ来まんな」
雨雲レーダーのように、忍び寄る雨雲を全身で察知したとんぐ侍。
ゴミ当番を鮮やかに終え、ひとっ風呂浴び、風呂場の窓を開けて換気を終えた頃、大粒の雨音が急にし始めた。
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
明日はでっかい夢つかむ
とんぐ侍のゴミ当番劇場は定期的に開催中だ。
家族が手伝うと言おうが、サササササーッと鮮やかな手捌きであっという間に終えてしまうのだ。
それは例えるなら、とんぐ侍生まれ故郷の阿波踊りのように勇ましく、時に繊細で美しく。
歯医者で少々弱っていたとんぐ侍、羽束師のナイチンゲールによって元気ハツラツだったのだが、歯医者から持ち帰った自分の銀歯の相場を調べ、思った以上に安かったことに歯医者通院後よりもますます弱っていった。
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
つかみどころのない侍
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
今日は何をつかもうか
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
明日はでっかい夢つかむ
とんぐ侍の日記のような旅は、まだまだ続く。
いつでもキミの隣に座り、笑いと励ましをくれる。
〽︎とんぐ とんぐ とんぐ侍
ともに未来の夢つかもう
<写真・文 ©︎2024 いけだひろこ>