心に粗品を住まわせる

西加奈子さんの「くもをさがす」を読んでいたく共感したパートがあった。

それは日本の常識で考えられないような行動をするカナダ人に対して関西弁でめちゃくちゃ突っ込みたくなると書かれていた部分である。

実際についに日本語で突っ込んだとき、カナダ人はなんて言われてるか分からないけどみんなで爆笑したといった旨のことがかかれいた。(本当にとても素晴らしい文章だったのに自分の要約が下手で悔しい)

めちゃくちゃ共感して、涙さえ流れてきた。

私も中国で、日本の常識では考えられない行動を数えきれないくらい目の当たりにしてきた。

1時間遅れてきても謝らない、列に死ぬほど割り込んでくる、順番を守らない、バトルで一人でウォーミングアップしてるところを盗撮される、公共の場でイヤホンつけずに大音量で動画見てる、などなど

これが、「その人自身のマナーが悪い」のか「中国の文化的には当たり前」のかわからなくていつもモヤモヤする。

たぶん大部分が後者の「中国の文化では当たり前」な行動・もしくは「中国の文化の中で生きていくために必要」な行動である。
(盗撮に関してはその人自身のマナーが悪い霊であると信じたいが)

例えば謝らないと言うことに関して、中国では謝るということは非常に重い意味を持ち、自分のメンツを守るためにちょっとやそっとのことでは非を認めないというのが普通らしい。

日本では「本当に申し訳ございませんでした!!!!」が普通のところでも特に何の言及もしない。(例えば一昨年、半年間中国に行く予定が100パーセント向こうの勝手で直前にキャンセルになった時も、最後まで謝罪はなかった)

有難うについても同様で、中国では仲のいい人に対して感謝を伝えることは逆に距離感を感じさせてしまうのであまり言わないらしい。

たしかに中国人から、ヒロコはいちいち有難うを言い過ぎだといわれたことがある。日本ではむしろ気持ちのいいこと、嬉しいことのはずの有難うが、中国では距離感を感じさせる発言だったかもしれないなんて衝撃である。

もちろん中国人なら全員一切謝罪も、感謝もしないのかというとそんなことは全くなく、
逆にこちらがそんなに謝らなくていいよ!と思うくらい謝ってくれる人もいれば感謝を日常的に伝えられる人もかなり少数派だが存在する。海外の文化に触れる機会が増えることで、コミュニケーションには感謝と謝罪が大事だと気付いている人も増えているんだと思う。

(そんなふうに謝れる人たちもいると言うことが余計「その人自身のマナーが悪い」のか「中国の文化的には当たり前」のかわからなくさせ、私を混乱させる。)

とはいえ、謝らない人が圧倒的マジョリティである。

中国では私の考え方の方が圧倒的少数派であるし、日本が細かすぎると言うことも大いにあるだろう。
中国で仕事させてもらっている以上、基本的には「郷に入っては郷に従え」的な感じで、文化への理解を示し適応するべきだと思っている。

ラランドのニシダさんがラジオで日本に観光で来ている外国人に対して、「”Excuse me?”じゃねぇよ、お前が日本に来てるんだから"すみません"ぐらい覚えろよと思うんだよね〜」と言っていて、確かにそうだよなと思った。

だからといって、常識を逸した(と、日本人からしたら思われる)行動全てに、「まぁ文化の違いだから仕方ないよね」と服従するしかないという状況は本当にストレスが溜まる。

これは私自身の器の問題かもしれないけど、、
自分が体力的にも精神的にも元気な時は、多少の事は仕方ないか。と受け流せるのだが、
仕事でめちゃくちゃ忙しくて疲れている時などにそういった場面に出くわすと特にイライラしてしまう。

でもイライラしたところで相手の対応は変わらないので、余計イライラするといった悪循環である。

さらに、異文化の中で仕事することは自分が選んだ事なのに何文句いってんだと自分に対してもイライラしだすので本当に手が付けられない。

どうしたもんかなぁと思っている時に西加奈子さんの作品を読んで、カナダ人に関西弁で突っ込む描写に、非常に救われた。こんな風に思ってしまうのは私だけじゃないんだと!

しかも西さんの場合、乳癌治療の病院のナースの対応に対してなので、私よりもっと精神的にきつく、危機感がある状況である。

仕方ない、状況は変わらない、別に文句が言いたいわけでもない、相手に何か伝えたいともも思わない(伝えても無駄な気がするから)、でもこの状況明らかにおかしい、そう言う時に関西弁でおもいっきり「なんでそうなんねん!!!」と言いたいのである。

「おかしいやろ!!」「何わろてんねん!!」「まずは謝らんかい!!」とかも言いたい。

異文化を受け入れつつも、なるべくストレスを溜めずに仕事していく上で、これはいいライフハックになりそうだなと思った。

今日は西さんの本を読んでからはじめての出張だった。

中国では新幹線の駅の入り口にも空港のような荷物検査がある。
「3分後の新幹線にどうしても乗らないといけない人」もしくは「3分後の新幹線で遠くに行ってしまう恋人を説得しに行く人」じゃないと説明がつかないくらい、みんななぜか必要以上に急いでいる。一刻も早くこの荷物検査を終えたいという謎の情熱が伝わってくる。

割り込みに関して中国人はみんなかなりテクニカルである。そろって割り込みの講義でも受けてきたんかと思うぐらいどんなに小さな隙間でも割り込みしてくる。「割り込み概論A」とか「割り込み演習B」とかあるんかよ。少しでも隙を与えると、2〜3人一気に割り込まれたりする。

私が荷物検査のレーンにスーツケースを置こうとした時に、おじさんが私のスーツケースの横にかなりむりやり自分のスーツケースを置こうとしてきた。

レーンの幅的に絶対置けないし、5秒待てば私の後に普通に置けるのに、意味不明すぎる。
普段ならぐっと我慢するところを「いや、なんでやんねん!!!」と声に出してみた。

するとおじさんは私が注意(か、どうかは日本語だから理解してないかも)したことにびっくりした様子だった。

そのあと中国語で、「なんで?ちょっとぐらい待ちぃや!」と言ったところ、「ごめん」と、なんと簡単に謝ってきた!

いや、ごめんとは思うんかい!!とまた突っ込みたくなったが今回は声には出さなかった。

荷物検査を終えたあと、特に急ぐ様子もなく駅内でたたずむおじさんをみて、いや急いでるわけちゃうかったんかい!!急いでへんのに順番抜かしするの意味不明やろ!!どんだけつっこませんねん!!と思った。

何も言わなかったらただただ気ぃ悪っと思って小さなストレスとして蓄積されていたであろうことが、「何かおもろい出来事」に変わって良かった。

いくら郷に入っては郷に従えというとはいえ、みんなが謝らないから私も謝らない、感謝の言葉を言わない、割り込みする、というのは自分の中のモラル的にできない。

「謝らない」という主張の強い文化の国の中で生きていくために、自分も「それは気ぃ悪いで」という主張を強く持つということはある意味郷に従ってることになるかもなと思った。

(でも中国では人前で謝らせたり、謝罪を強要することは非常に侮辱的な行動になってしまうらしいので「自分の主張を伝える」ことと、「謝罪を求める」ことは切り離して考える必要があるなとも思った。)

ところで、日本では恋愛話などで「有難うとごめんなさいが言える人がいい」などといった意見がよく散見されるが、中国ではこう言う概念ってないんやろなって思うと不思議な感じがする。

むしろ、「そんなに有難うって言うってことは、私のこと信頼してないってこと?!」みたいな喧嘩も巻き起こってそうなもんだ。

ただでさえ男女で価値観が違っていて恋愛ってむずかしいのに、国際恋愛ってめっちゃむずそうやなといらない心配をしてしまうのである。

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