結婚して初めて泣いた日|わたしの頭の中
本来ならば、今日は結婚式を挙げる日だった。
でも、今日わたしはずっと自宅にいる。
新型コロナウィルスの影響で、挙式を断念するしかなかったのだ。
家族だけの挙式とはいえ、この決断に到るまでに、悩んだのは事実だ。
緊急事態宣言が出る前に決断したので、心の奥底では結婚式を挙げたかったと思いながら、式場に連絡したことを覚えている。
今日は朝から天気も良くて、絶好の結婚式日和になったに違いない。
「外の天気が悪ければ、もう少し気も楽になってしまったのかもしれないな」なんて思いながら、外を眺めた。
こんなことを文章として残すつもりはなかったけれど
友人から花束が届いて、ついつい涙を流してしまったことをきっかけに
今の気持ちを残しておきたいと思った。
花束には結婚おめでとうの文字と
今日は本当は結婚式の日だったねということが記されていた。
わざわざ今日に合わせて花束を送ってくれたのだ。
今回は、完全なる『日記』だけど、ここに残しておこうと思う。
なぜ結婚式を行うのか
人それぞれに、結婚式をする理由があるんだと思う。
わたしは以前、結婚式場で店長をしていた。
挙式をする新郎新婦は、2人の誓いのため、周囲への報告のためなど
いろんな思いを抱えて、挙式当日まで準備をしている。
わたし自身といえば、両親に感謝の気持ちを伝えることが、結婚式を挙げる1番の理由だと思ってた。
照れ臭くて、なかなか言えない「ありがとう」の気持ち。
素直に伝えられるのは、結婚式という儀式の場だからじゃないかなと。
だからこそ、挙式を断念することをすごく迷った。
入籍してすぐだからこそ、感謝を伝えたいとも思ったし、
何より、80歳近い両親が、次いつできるかわからない結婚式の頃まで
今と変わらず元気でいれるのかもわからない。
少なからず、早くしなきゃという焦りがわたしにはあったのだ。
なかなかできなかった入籍報告
入籍したものの、世の中が混乱していく中で
手放しに『結婚しました』と言えなかった自分がいた。
直接会う人を中心に、少しずつ報告していった。
結婚式も断念し、世の中も暗いムードの中、
こんなことはわざわざ伝えなくてもいいんじゃないか?なんて思うようになっていたのだ。
「結婚式どうする?」と話し合った日、
式場に延期の連絡を入れた日、わたしは泣いた。
普段のわたしを知っている人なら
大したことでは泣かないわたしが、シクシクと泣いているのは珍しい光景かもしれない。夫の前でさえ、自分のことで泣いたことがなかったわたしが…だ。
映画や本を読んで泣くことはあっても、リアルな自分の置かれている状況で泣くのなんていつぶりだろう?
なんとも言えず、悲しくて切なくて、複雑な想いで泣き続けた。
可愛い2匹の愛猫たちは、普段とは違うわたしの様子を見て、心配したのか、顔を覗き込んだり、添い寝をしたりと、ずっとそばにいてくれた。
こんな時期だから、直接会える人なんてごくわずか。
そう思い、SNSを使って、やっと入籍報告ができたのは、籍を入れてから2ヵ月も過ぎてしまっていた頃だった。
いっぱいいっぱい幸せになって。
SNSに投稿した直後から、信じられない数のお祝いコメントをもらった。本当に嬉しかったし、周りのみなさんに感謝ばかりだ。
その中に、結婚式場で働いていた頃にお世話になったカメラマンさんから、こんなコメントをいただいた。
『いっぱいいっぱい幸せになって。たくさんの人を祝福してきたひろ子さんだもん。とてもうれしい、明るいニュースをありがとう。』
そうか、こんな状況下でも、幸せだって言っていいのか。
急に肩の荷が降りたような気がした。
世の中にいる新郎新婦よ、いっぱいいっぱい幸せになって。
両家の家族だけで挙式する予定だったわたしですら、こんなにもいろんなことを考えさせられた今回のコロナ騒動。
きっと、もっと複雑な思いをした新郎新婦は数多くいるだろう。
式場で働いていたからこそ、そんな想いも手に取るようにわかる。
挙式を延期や中止した人たちは、なんでこんな目に合わないといけないの?と思うこともあるだろう。
高額なキャンセル料がかかった人もいるだろうし、何よりメンタル面でのダメージは大きい。
都合により、挙式した人たちもいるだろう。
周囲から「なんでこんな時期に結婚式するの?!」と迷惑がられて傷ついた人もきっといる。元々呼んでいた列席の数が、半分以下になった人もいるだろう。
いろんな想いを抱えている新郎新婦がいると思う。
想像したハッピーエンドじゃなかった人もたくさんいるだろう。
でも、こんなときだからこそ、今日という日があったことをきっと忘れないはずだ。
そして、それぞれに前を向いて歩んでいるはず。
世の中や自分を責めずに
とにかくいっぱいいっぱい幸せになろう。
いや、いっぱいいっぱい幸せに気がつこう。
とりとめもない内容だけど、こうして書き残すことで
今の自分を振り返ることができた。
結婚式はできなかったけど、
わたしはとても幸せだ。