雇用統計好結果受けて米金利上昇もドル円下落?!~米株も下落加速
雇用統計予想を上回るいい数字でドル金利さらなる上昇
米国、労働市場は緩みが見られるとの指摘もあったのですが、蓋を開けてみればヘッドライン上は大変強い数字が出ました。
【米12月雇用統計】
・非農業部門雇用者数(NFP)~予想を超える増加
結果+25.6万人(予想:+16.5万人、11月:+21.2万人←+22.7万人)
・12月失業率~予想外の低下
結果 4.1%(予想:4.2%、11月:4.2%)
・平均時給:前年比
結果+3.9%(予想:+4.0%、11月:+4.0%)
ここ数年のNFPは翌月に大きく修正されるなどブレが大きいので、単月の指標結果で一喜一憂するものでもないですが、失業率が低下する強さを見せるとは驚きです。米雇用統計はの非農業部門雇用者数、平均時給、平均労働時間は「事業所調査」から算出されますが、失業率、労働参加率といった数字は「家計調査」から導き出されます。民主党政権下ではこの事業所調査のブレが大きく家計調査から導き出される失業率により注目が集まっている印象が強い。
ともかく、この強い数字を受けて米金利はご覧の急上昇です。
長期金利はトランプ2.0への警戒からこのところ上昇が続いていましたが、短期金利はそれほどでもありませんでした。しかし、この雇用統計を受けて短期金利も急騰しています。短期金利(2年金利)は米政策金利の影響を強く反映しますので、市場はFRBの利下げが大きく後退すると予想したということの現れです。
バンカメは利下げサイクルが終焉、次の一手は利上げだと予想を修正しています。利上げ予想はまだ市場全体のコンセンサスではありません。金利先物市場の折り込みを確認できるCME FedWatchではまだ年1回の利下げの可能性を織り込んでいます。6月FOMCで1回ですね。
というか、後半年、米政策金利の引き下げの可能性は低いというのが市場のコンセンサスです。継続的な利下げを織り込んで高値をつけていた米国株が修正を強いられるのはある意味順当な流れです。
2022年相場の再来警戒、雇用統計を受けて下落した米国株
米景気が良くて株価が下がるというのも変な話ですが、景気減速を支えるためにFRBが利下げを開始したことを材料に株価が上昇してきたのですから、利下げが終わる、もしくは利上げがあるかもしれないというのは、米株にとってこれまでのトレンドの逆流のリスクが高まったといえます。
これは米国金利とS&P500の関係。パンデミック後のインフレでFRBが急ピッチで利上げを実施した2022年、米株は大きな下落を強いられました。金利上昇が一服すると株価は持ち直し、高金利に耐性がついたかに見えましたが、23年秋に向けて金利が再び上昇を加速させるとやはりS&P500 は下落を強いられています。今回の金利上昇で23年10月の金利高局面を超えてくると、米国株の調整は大きくなるだろうとして警戒が強まっています。すでに米長期金利5%は射程圏内にあるという見方が広がっていますね。現在4.76%。
日足チャートを確認すると米国の主要株価インデックスは軒並み悪化。ダウ平均は90SMA(90日移動平均線=青のライン)で一旦下げ止まったのですが、再びここを割り込んで下落を始めました。S&P500はヘッド&ショルダーの可能性があるとしてきましたが、黄色の点線であるネックライン割れ、90SMAをも下回ってしまいました。これは完成形ですのでそこそこ大きめの下落を覚悟しなくてはいけない局面です。
明日13日(月)は東京市場、成人の日で祝日、休場となりますが、雇用統計を受けた米株下落を見る前の10日(金)時点の日本株市場も軟調でした。
日経平均は
日経平均は、指数寄与度の高いファストリの下落が指摘されています。9日発表されたファストリの2024年9~11月期の連結決算で純利益は過去最高、市場予想も上回ったのですが、中国市場での苦戦がネガティブとの評価につながったのか、あるいは期待で買われてきた分の材料出尽くしの売りなのか、ファストリ株価は一時7%を超す大きな下落となりました。この日、ファストリ1銘柄で日経平均を301円押し下げた計算ですので、日経平均の下落はファストリのせい、と言ってもいいかとは思うのですが、下げているのは日経平均だけではなく、TOPIXもご覧のチャートです。
上昇トレンドラインの下限にタッチ。ここを割り込むと大きめの下落が来そうな嫌なチャートです。米株下落が本格化すればその可能性は低くありません。
米金利高でもドル円上昇が限定的、
むしろ雇用統計後の急上昇剥落の下落となったわけは・・・
雇用統計を受けて、ドル金利が大きく上昇したことを受けてドル円相場も雇用統計発表直後は急伸しました。しかし、その上昇分をすべて吐き出す下落となっています。これはドル円15分足推移と日米金利差(黄色のライン)チャート。6月までの利下げはないだろう、あるいは年内利上げの可能性もという市場観測から短期金利(2年)は急上昇しそのまま高値圏で推移していたにも関わらず、です。
円以外の他通貨も軒並みドルに対して下落しましたが、円だけがこのような不可思議な値動きを見せました。これは通貨インデックス推移、昨年11月以降の値動きです。1/10(金)は何故かドル金利上昇でも円インデックスも上がっています。
ドル高、円高がセットで動く時の特徴はなんでしょうか。そう、リスクオフです。リスクオン時は、ドル安と円安が同時に起こりますが、それが巻き返される局面ではドル高と円高が同時に進みます。ドル円相場はそのどちらの圧力が強いかで動きますが、1/10(金)は序盤はドル高圧力が強かったものの、NYクローズにかけては円高圧力のほうが強かったためにドル円相場が下落したものと思われます。
なぜリスクオフ相場かって、それはあまりに止まらない米金利上昇は米国市場にとっても良くないとことです。米株はじめ日本株下落は円高要因となるのです。
リスクオフ相場の背景にカリフォルニア山火事被害の影響も?
カリフォルニアの山火事は前代未聞の規模となっています。アキュウェザー(米気象情報サービス)の試算では被害総額が 520億〜570億ドル(約8.2兆〜9兆円)、JPモルガンは 総経済損失が約500億ドル(約7.5兆円)に達する可能性があると試算しています。株価の下落には、こうした米経済への悪影響を懸念する向きがあると考えられる一報で、復興にかかるコストなどからインフレ加速が警戒されると言う見方ができないこともないですね。住宅再建コストの上昇が予想されます。そもそも被災地域の住宅価格中央値が200万ドルを超える高級住宅地です。再建需要による建設資材や労働力の需要増加、また火災による火災保険料の値上げなど短期的なインフレ要因となる可能性が指摘されています。インフレは、FRBによる利下げを遠ざけますから株式市場にとってネガティブと言えるでしょう。
インフレの兆候は商品市場にも?原油も急上昇
米金利の急上昇にも関わらず、金利高に弱いとされるゴールドが再び上昇基調を強めています。
インフレヘッジの側面がフォーカスされているものと見られます。また、中国の需要が鈍いことから軟調地合いが続いていた原油まで急上昇しています。
WTI原油先物価格は76ドル台へと上昇200SMAを上回ってきました。
1月初旬から米欧の気温が予想より低下している模様で(1月としては11年ぶりの寒さだとか)暖房用燃料の需要が高まったことが背景とされています。米気象当局によると、米東部や中部は例年より低い気温が続く見込みで、しばらくこれが材料視される可能性が。
また、米国政府は10日、ロシア石油大手を制裁対象に加えたと発表しています。
この制裁によってロシアからインドや中国への出荷が滞りかねないとみて原油先物が買われやすくなった側面もあろうかと思われます。
そもそも、米国の原油在庫は過去5年平均の下限水準で推移しており、在庫が潤沢ではありません。きっかけがあれば上がりやすい地合いにあったとも言えるかもしれませんね。グレーの雲が過去5年の在庫平均。水色のラインが現在の在庫水準。
足下では天然ガスも上昇トレンドを形成。
ということで、コモディティ市況が上昇してきたことはインフレ警戒を強めます。パンデミック後のコモディティ価格急上昇時に商品市場には5度目のスーパーサイクルが到来したと騒がれましたが、22年のロシアのウクライナ進行時のエネルギー、穀物価格急騰時が高値となって23~24年は商品市況は下落氏落ち着いた値動きとなっていました。しかし、ここ足下の2ヶ月で商品指数が不気味な上昇を始めていますね。。。
意外と上値が重いドル円相場、日銀の動きにも警戒か
ドル金利急騰にもドル円の上値が重い背景には、株下落によるリスクオフ警戒があると思われますが、もうひとつ。日銀は利上げサイクルに入っているという点が挙げられるかと思います。前回のnoteに書きましたが、利上げサイクルにある円を売るより、利下げサイクルにあるユーロやポンドを売る方が安心感がありますね。特に日銀の動向の観測記事によって相場が神経質に動きますから、利上げ次期を巡る報道で一喜一憂するマーケットでは安心して円売りができないという側面もあるのでしょう。
1/10(金)にも東京時間に日銀を巡る報道でドル円が急落する局面がありました。
市場には1月の日銀での利上げ予想は少数ながら残っています。米株が崩れ日本株市場も崩れるような局面ではドル円相場も円高方向に動くでしょうから、その可能性は雇用統計を受けて低下したように見受けられますが、日本は慎重ながらも利上げサイクルにあることからドル円相場の上値も限定的なのではないかと思っています。
週末1/10(金)は日米金利差拡大でもドル円は下落して終えています。
ドルストレート通貨では軒並みドル高、ポンドドルも一段安
雇用統計を受けてドル全面高となりましたので、ポンドドルの1.2353ドルショートが利が乗ってきました。
まずはトランプ氏が大統領に就任する1/20が今回の金利高、ドル高の一旦の節目になろうかと思いますので、その前には一度手仕舞いたいと思っています。その後の展開はトランプ氏就任初日の大統領令がどんな物が出てくるか、市場の反応を見てからになるでしょうか。
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