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日銀現状維持、円安進行へ

早期追加利上げ警戒後退か

9月の日銀金融政策決定会合は現状維持。事前コンセンサス通りでサプライズなし。タカ派発言が繰り返されれば円高のリスクもあるか、と警戒された植田日銀総裁会見は、早期の追加利上げ警戒を後退させるものとなり、会見から5分程度で円安が一気に進行する格好となりました。

ドル円5分足と日米金利差(2年)

「現在も実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」

日銀は緩和的環境から脱却し利上げスタンスに入っていることを明言していますが、この文言はタカ派豹変後の日銀から発せられる常套句ですので驚きはありません。マーケットが注目したのは下記発言。

「ここ最近の為替動向も踏まえると年初以降の円安に伴う輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少しているとみている。したがって政策判断にあたってはさまざまなことを確認していく時間的な余裕はあると考えている」
「見通しの確度が高まったしたがって『すぐに利上げだ』ということにはならないと考える」

足元の円高で物価上昇リスクが減少したため、利上げ判断には時間的余裕があるとし、利上げの検討にあたってはアメリカ経済や不安定になっている金融市場の動向を慎重に見極めていく姿勢を示したとことが、円高警戒を強めていたマーケットのショートカバーを誘ったと見られます。

植田総裁会見で円高となったらクロス円を買おうと思っていましたが、円高とはならずに、円安方向へと走り出したため豪ドル円を96.90円、ポンド円を189.87円で飛び乗ってロング。理由は前日のnote「ドル安円安株高のリスクオン相場到来?」を参照ください。ポンドドル1.3260ドルも継続中。

ドル円にしなかったのは、ドルは決して強くないためです。どちらかというと円売り圧力のほうが強いため、ドル円は上昇していますが、ドルインデックスは弱い。これが今後反発してくるようだと、円安も相まってドル円相場の大幅反発が見込めるのですが、ここからの経済指標次第でしょう。今週はPCEデフレータ、来週は雇用統計に注目です。

通貨インデックス比較 円下落が著しいがドルは上昇していない

ウォラー理事、再び0.50%の利下げの検討あり得る

ドルが軟調な背景には、9月FOMCが0.25%ではなく0.5%の利下げとなったこと、さらにタカ派のウォラー理事がFOMC翌日に
「雇用市場が悪化すれば、再び0.50%の利下げの検討あり得る」
「データが軟調になれば、利下げペースが速まる可能性がある」
などと発言したことも挙げられます。ウォラー理事は労働市場の悪化への警戒を強めています。

ただ、最もタカ派として知られるボウマン理事は大幅利下げに反対のスタンスを改めて示しています。政策決定にFRB理事が反対したのは2005年以来とのこと。ボウマン理事は労働市場ではなくインフレ再燃を重視しているようですね。

9月FOMCでは、年内はあと2回のFOMCでそれぞれ0.25%づつ、合計0.5%の利下げの見通しが示されました。この見通しが崩れて~つまり更に弱い経済指標が出てきて年内0.5%以上の利下げが織り込まれればドル安のリスクですが、想定内、あるいは強い指標が出てくればドル反発の目がある。要は経済指標次第ですが、ボウマン理事はインフレとの戦いに勝ったと言うにはまだ早い、と警鐘を鳴らしているのです。

米長期金利は大きく反発、将来のインフレ警戒?

27日発表の8月の個人消費支出(PCE)価格指数は前月比0.1%上昇、前年同月比2.3%上昇したと見込まれる。前年比は2021年序盤以来の低い伸びで、FRBのインフレ目標2%を若干上回る水準。

  前年同月比でのインフレ鈍化は、エネルギー価格下落や食品価格の弱含みを反映している。食品と燃料を除くPCEコア価格指数は3カ月連続の前月比0.2%上昇が予想される。

PCEは2021年序盤以来の低い伸びとなる見込みでインフレへの警戒は小さく、0.5%の利下げが正当化される内容となりそう。ただ、大幅利下げに踏み切ったことで、将来のインフレ警戒は強まったとの指摘がないこともない。長期金利の反発は、すでにそれを織り込んでいるという見方も。(中立金利が2.9%に上がっていることも材料ですが)

米国債利回り 長期ゾーンの反発上昇が続く

ドルがこの長期金利との相関を強めるフェーズに入れば、ドル円の上昇も大きくなりそうではあります。

外国人投資家、9月第2週3兆円の日本株売り

先週19日、20日は日本株も反発上昇していますが、9月1~2週は軟調でした。2番底を探る展開か?というムードにありました。この背景には外国人投資家による猛烈な日本株売りがありました。

財務省 対外及び対内証券売買契約等の状況

TOPIXチャートで黄色で囲った期間です。19~20日は売りが止まったということなのでしょうか。

TOPIX 日足

こんなポストもありました。
「外国人投資家は先週、過去最高の105億ドル相当の日本株を売却した」

Bloombergの英語版記事のタイトルは「円高懸念で外国人投資家が過去最高の日本株売り越し」となっています。日銀を控えて日本株を処分していたということでしょうか。もし、外国人の日本株売りが円高警戒によるものだったなら、今回の植田総裁の会見が想定したよりもタカ派ではなかったことで日本株市場に戻って来る可能性はありそうです。

まずはブルーの移動平均線90SMAを超えられるかどうかですね。9月はアノマリー的に株が弱い時期ではありますが10月から年末にかけては強い時期です。ここからは過度な悲観は禁物でしょうか?

27日自民党総裁選投開票、日本株のボラ上昇に注意

リスクがあるとすれば自民党総裁選。現在、石破氏、高市氏、小泉氏の三つ巴の接戦となっていますが、小泉氏が勢いを弱めているようです。

国会議員1人1票ずつの「国会議員票」368票と、国会議員票と同じ「党員・党友票」368票の計736票を争うこととなりますが、党員・党友投票の締め切り日は9月26日、開票日は国会議員票、党員票ともに9月27日。この投票で過半数を得た候補が新総裁となりますが、過半数を得た候補が出なかった場合、1位と2位の決選投票となります。現時点の票読みですと、石破氏と高市氏の決選投票の可能性が高そうですが、経済政策が全く異なる点がマーケットにとっては大きな変動要因となってきそうです。

石破氏は10日に公表した経済政策では「経済あっての財政」とそれまでの「金融所得課税の強化」路線を修正していますが、基本は増税、財政規律重視派です。マーケットにはネガティブ。高市氏は金融緩和路線の継続を主張。経済成長重視で積極財政派です。マーケットにはポジティブですね。石破氏が仮に過半数を取ってしまったら日本株は更に売られるリスクがあろうかと警戒しています。高市氏であれば日本株は再び上昇の勢いを取り戻すかもしれません。とにかく、どちらになるかで日本株の方向が異なってくると考えられ、27日前には日本株のリスクポジションの管理が重要となってきます。個人的には上昇となるような気がしていますが、これは希望的観測。

今週の主な予定

■23日(月)秋分の日振替休日のため東京市場は休場
英製造業PMI・非製造業PMI速報値(9月)
ドイツ製造業PMI・非製造業PMI速報値(9月)
ユーロ圏製造業PMI・非製造業PMI速報値(9月)
米製造業PMI・非製造業PMI速報値(9月)

■24日(火)
豪中銀政策金利
米消費者信頼感指数(9月)

■25日(水)
中国中期貸出制度(MLF)1年物金利
豪消費者物価指数(月次ベース・8月)
OECD中間経済見通し

■26日(木)
日銀議事録(7月30日-31日開催分)
豪中銀四半期金融政策報告
ECB経済報告
スイス中銀政策金利・ジョルダン中銀総裁 記者会見
米GDP確報値(第2四半期)
米新規失業保険申請件数(21日終了週)
メキシコ中銀政策金利

■27日(金)
自民党総裁選投開票
東京都消費者物価指数(9月)
中国工業企業利益(8月)
ECB調査消費者インフレ期待(8月)
米個人消費支出(PCE)価格指数(8月)
米ミシガン大学消費者信頼感指数(9月)
バイデン米政権、対中関税大幅引き上げ実施
(中国EV車関税を4倍の100%に引き上げ)

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