家づくりにまつわること(9):坪単価の意味するところ
当社のような建築設計事務所は、予算組みの工事費把握にあたり過去の経験や建設物価等の一般販売されている単価資料をみながら概算を算出します。設計も始まっていない初期段階では、坪単価計算により算出することが一般的です。
住まいづくりの初期に よく耳にする「坪単価」。それに含まれる工事範囲は各社で違うため、その内容は実に不明瞭です。価格競争の基準となるこの「坪単価」から理由をつけて工事範囲から項目を抜いていくことで、安く金額提示ができることが理由の一つだと考えています。
その結果、建て主からすると住まいづくりに必要な相場が把握できなくなっているように良く感じます。
本投稿では、この坪単価の示すところをシェアしたいと思います。
◉ 坪単価とは?
坪単価とは、初期の工事費概算算出の際に想定面積(坪数)に掛ける坪当たりの金額単価です。この坪単価はハウスメーカーや工務店、設計事務所まで使用する言語でありながら、その定義はバラバラです。
例えば、多くのハウスメーカー・工務店における坪単価は、建物本体及び直接的にかかわる工事のみの場合が多いです。直接的にかかわる工事とは、床・壁・天井・外壁・屋根の構成に関わる工事であり、ダウンライトや床暖房などの工事だけでなく器具も含まれます。(坪単価に含まれる)
しかし、外構工事はもちろんのこと、後から取り付けられるペンダント照明やルームエアコンは別途工事とみられている場合が多いです。(坪単価に含まれない)
つまりは照明や空調などの設備の方式によっても坪単価に含まれている工事範囲は違うということです。
また、会社によっては、地盤改良はもちろんのこと地盤の掘削・撤去にかかる費用すら除いている場合も多々あります。
予算書作成時に地盤調査まで行われていない場合が多いことがこの理由の一つでもあります。しかし、まったく設定もせず金額に含まないことで契約後に調査を行い、建て主にとっては予期せぬ増額となるケースもよくあります。
ちなみに地盤改良・地盤の掘削・撤去費用は工事費の多くを占める項目の一つです。
まだ建物も計画していない予算書作成段階では、規模や地盤改良の方式などの「設定」を立てて、それに対して金額を算定し、建て主に説明して理解してもらうことが必要ですが、その設定すらせずに予算書に金額を含まないところも良くあるのです。
しかし、予算書に含まれていない内容なんて、素人では把握できないのでは?と思われる方もいるかと思います。
その通りです。個人的には、特にハウスメーカーや工務店をパートナーにして住まいづくりを進めるには建て主側に相当な知識量とリーダーシップがなければ適正な家づくりにはならないと思っています。
以上のことから、この坪単価だけでは本体建物にかかる金額としても不十分ですし、何より良く分からないなのです。
建築設計事務所の場合、ハウスメーカー等の考えに合わせて坪単価設定をするところと、地盤改良のように特に不明瞭な項目は別項目にあげて、できるだけ全ての工事項目を含んで坪単価設定するところなどとバラバラです。
◉ 坪単価を正しく把握する
当社では、照明や空調など設備も設定した上で、含むもの含まないものを明快にして坪単価を伝えるようにしています。その方が建て主が住まいの規模を考えるときに、実際に近い形で金額イメージを持てるためです。具体的には、外構工事・地盤改良工事・浄化槽や暖炉など特殊な工事は別枠とし、それ以外を坪単価に含んで算定します。
他社と比べて高いと言われるケースもありますが、その理由は坪単価の中身がハウスメーカーや工務店とのそれと比較して中身が相違することにあるのです。
以上のことから、坪単価を特に意識してその中にすべての工事が含まれていると勘違いされている方も多いのですが、実際は違います。
本体建物金額に着目して数社の概算金額を比較する際には、何が坪単価の金額に含まれていて含まれていないのか必ず確認してください。そして、坪単価に含まれない工事内容が別項目で計上されているかどうかの確認も必要です。また、全ての工事金額を算定できるわけではないので、その他に何にどれくらいの金額が必要なのか把握することも大事です。
次に、住宅にかかわる金額全体に着目して数社の概算金額を比較する際には、予算書を分解していく必要があります。
前回の投稿(家づくりにまつわること⑧:家づくりに関わる総予算について)の通り、住まいづくりに関わる費用は色々あり、予算書へのまとめ方も各社違います。正しく比較するには、たとえば「本体建物工事にかかる費用」と「設計にかかる費用」など各項目ごとに各社の予算書を分解して比較することで、はじめて正しく金額の割合や各社の違いが把握できるようになります。
本投稿では、住まいづくりの予算書に用いられやすい坪単価の実際について書きました。各社の予算書を正確に把握し、不用意な増額を避けるようにしてください!