クルマ雑感 #01 ちょっと古いクルマ編
クルマが好きだ。大好きだ。とはいえ都心付近に暮らしていると毎日必要なわけでもないし、なくても不便なく暮らせてしまう。必要なときにはカーシェアリングやレンタカーも利用できる。
そうなると購入する優先順位は自然と下がり、結婚してからは一台も所有していない。娘が生まれたタイミングで購入を検討したこともあったのだが、色々と物要りだったり、実際にはそこまで必要でもなかったので結局買わないまま数年が過ぎた。
この雑文は、買いたいクルマについての現実的な考えごとに加えて非常に個人的なクルマに対する思いをつらつらと綴ったもので、「クルマの好みを語る」という形をとった自己紹介みたいなものです。
ここに綴られている理想と現実のギャップに共感してくれる人は、もしかしたら多いかもしれない。
ちょっと古いクルマが好き
1980〜1990年代、最近だと「ネオクラシック」とか「ヤングタイマー」などと呼ばれるクルマのデザインが好きで、「自分のための1台」として所有して乗り回すならやはりこの時代のクルマを選びたい。購入の可能性を考慮しながら好みのクルマを挙げるとこんなラインナップになる。
SAAB 900
ルーフ最後尾からテールゲートを構成する絶妙な曲線と傾斜が印象的なClassic 900と呼ばれる初代モデルは、今は亡きSAABの誇る名車だ。
このクルマの魅力はなんとも言えない佇まいの良さに尽きる。ただただデザインが好きで、改めて考えてみるとこれまで性能面を気にしたことがない気がする。
カブリオレも上品な色気があってとても好みなんだけど、魅力的なテールゲートのラインが失われてしまうのが悩ましいところだ。
MINI
そのコンパクトなサイズ感とスタイリングは唯一無二と言える。かつて「車寄せでRolls-Royceと並んでも遜色のない存在感」と謳われたクルマだ。もちろんBMWに買収される以前の、通称Classic MINIのことである。
20歳そこそこの頃(1990年代後半)に発表されたKensingtonというグレードがシックでとても格好良かった。ツヤツヤのブラックボディに煌めくメッキパーツ、ウォールナットの内装とベージュの本革シート……完璧だと思った。これ以降、「クルマはやっぱり外装ブラックにベージュのシートでしょ」という嗜好がしばらく続くことになる。
一方で、当時同じショウルームで見かけたシャンパンゴールドっぽいボディカラーに真っ赤なレザーシートを積んだMINIもゴージャスで妙にセクシーだったのを覚えている(グレードを忘れてしまった)。
この頃(最後期)のモデルを購入して電気系統や足まわり(特にサスペンション)を整えたら、あとは乗りながら時間をかけて少しずつ内外装を好みに仕上げていきたい。さてAustin風にしようか、自分好みのオリジナルMINIを作り上げようか……夢は膨らむばかりだ。
惜しむらくはキャビンのサイズ感だろうか。「大人4人乗り」を標榜していても現代の感覚で言えば限りなく2シーターに近い。家族3人で乗ることを想定した場合、どうしてもやや窮屈な印象がある。さらに2ドアであることを考えると、運転席の後ろに設置したチャイルドシートへのアクセスを優先して助手席を取り外すくらいの工夫は必要になるかもしれない。
言い換えれば、そこまでしてでも乗りたいくらい魅力あるクルマということだ。
Volvo 240 Estate
Volvoの代名詞とも言うべきEstate(ステーションワゴン)は、真横から見たときの後ろへぐっと張り出したバランスが素晴らしい。単純に細かなデザインの好みだけで言えば、ヘッドライトの形状が丸いタイプ(僕が生まれた1975年頃のモデル)が良い。
このクルマの良いところは、ファミリーカーとして使うための現実的な条件を快適性とサイズの面でしっかりと満たしているところだ。
キャビンはゆとりがあり、ラゲッジスペースも申し分ない。仕事の道具だろうがアウトドアグッズだろうがまるっと収めて、最高のユーティリティ・ビークルとしてどんなシーンでも活躍してくれる姿が想像できる。
元々、堅牢な作りと高い安全性で鳴らしたクルマである。車両とパーツの供給状況や信頼できるプロショップの存在などを鑑みても、この時代のクルマとしてはとても安心感のある選択肢だと言える。
最近は一周回ってセダンタイプも気になっている。でも、そもそも国内に存在する数がかなり少なそうだ。
VW Golf II
Golf Iも良い。でも仕様や弾数、パーツ供給など様々な観点から見ると、現実的な選択肢はやはりIIということになるだろう。逆にIII以降は別のクルマという印象だ(キライではない。若い頃、IIIやIVのカブリオレに憧れた時期がある)。
このクルマの魅力は、なんと言っても「シンプルである」ということだ。デザイン然り、機能然り。シンプルであることは、クルマという機械にとって何にも代えがたい魅力のひとつだと思う。
名匠ジョルジェット・ジウジアーロの手による初代デザインを継承した外観は、直線と曲線の見事なバランスや、実は手の込んだ細部のデザイン処理など、量産コンパクトカーにもかかわらずちょっとした上質さを感じさせるところがまた良い。
余談ながら、ジョルジェット・ジウジアーロは初代Golfのほか、Fiat Dino、Maserati Ghibli、いすゞ117クーペ、そして映画「Back to the Future」でも有名なDMC DeLoreanなど、名車と呼ばれる数々のデザインを残した稀代のカーデザイナーである。
NISSAN SUNNY TRUCK B121
完全に番外編というか、ごく個人的なノスタルジーのあるクルマということで末席に加えておきたい。
このクルマは僕が幼少の頃、父が営んでいた酒屋の配達用として使っていたものだ。仕事中だけでなくプライベートでも使っていたので、僕も父の隣によく乗っていた。年代(1980年頃)から推察するに、実際に乗っていたモデルはB121だと思うんだけど、もしかするとひとつ前のモデル(B120)を使い続けていた可能性も捨てきれない。
ボディカラーはきれいなスカイブルーだった。今思うと、家族4人があの狭い2シーターにどうやって……と思うが、そんなことが黙認されるおおらかな時代でもあった(もちろん違反だったと思うけど)。
今でこそカスタムのベース車両として人気があるようだが、マッチョにカスタムされたサニートラックは僕の思い出と重なることはないし、好みでもない。
実際に購入して乗るのも楽しそうだが、趣味のためのセカンドカーとしてならいざ知らず、3人家族の日常の足としてはさすがに選択肢にはならない。そのうちプラモデルでも買って、のんびりと手間と時間をかけて自分好みに仕上げてみようかな、くらいのことは企んでいる。
現実的な選択肢として
これらの中では、MINIは(キャビンの余裕を別にすれば)最も現実的な選択肢だと言えるかもしれない。というのは、車両やパーツの供給状況だけでなく、取扱のあるプロショップの数と選択肢が圧倒的に豊富だからだ。クルマという機械を自分の手だけでメンテナンスできない僕にとって、信頼できるプロショップの存在は欠かせないポイントである。
この時代のクルマを購入する場合、プロだけでなくファン(=先輩オーナー)の多い車種は安心感がある。そういう意味ではGolf IIやVolvo 240も地に足のついた選択肢だと思う。数だけ見ればMINIほどではないが、信頼できるプロショップもちゃんとある。
EVコンバージョン
さらに理想を言うと、ゆくゆくは上に挙げたようなクルマを購入した上で、EVにコンバートしたいと考えている。
もちろん、エンジン音を響かせて走るクルマというのはロマンではある。それはそれとして、外観や内装はネオクラシックなデザイン、中身や足回りは安心かつエココンシャスな最先端EVというスタイルには現代の都市生活者ならではの新しいロマンを感じる。
とはいえ、こればっかりはお財布と(家族と)相談しながら、ライフワーク的な感覚でのんびり構えざるを得ない。あまり遅くなると運転免許を返納するようなタイミングになってしまうので、できれば還暦くらいまでには実現したいな、と思う。
欲を言えば、EVだけどエンジンサウンドやエキゾーストノートは再現されて……なんて言い始めるとキリがないので、このあたりで止めておく。
あとがき
もうちょっと古いクルマ……例えばMGなど往年のブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツとか、RenaultやPeugeotの古いモデルにも好きなデザインが多い。しかし性能や安全性、快適性などを考えると家族で普段使いするクルマとしてはさすがに現実的ではない。
Peugeot 504(見出し画像のクルマ|Photo : Stellantis)とか最高に洒落ているけど……ファミリーカーとしては買えないよね、やっぱり。
そういう意味では冒頭のSAAB 900だって充分、普段使いのファミリーカーとして成立しにくい選択肢ではあるんだけど。
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