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「逃げ恥」1話を観て思ったこと

 人気のドラマでずっと気になっていた「逃げるは恥だが役に立つ」の第1話を先日Amazonプライムでやっと観た。新垣結衣さんと星野源さんはじめ魅力的な俳優達が出演している楽しいコメディだったが、4年前の作品であることを意識しないと笑えない点があった。
 「逃げ恥」の第一話は、学んだことを活かせぬまま失業した大学院卒の女性が、家事代行のバイトで知り合った男性と紆余曲折を経て、専属の家事代行契約関係、偽装結婚しようとするところで終わる。
 主婦業をサービス業、夫婦を雇用被雇用の関係に置き換えた設定は目新しいような感があるが、このドラマの本質は恋愛に不慣れな男女が愛に目覚ていく古典的な純愛コメディ。偽装でスタートした結婚が、いろいろすれ違いもありつつも本当の夫婦になるのだろうが、男は仕事、女性は家事という枠組みに大きな変動はないのではないか。
 ドラマの放映から4年、女性を取り巻く問題の深刻度が様々な形で可視化されている。女性の社会進出どころか、影響力ある地位に古い男尊女卑意識に凝り固まった男が居座わり、結婚の晩婚化、出生率の低下の問題は捨て置かれたままだ。「逃げ恥」では主婦業をサービス業とした場合の年収を割り出していたが、そのデータすら女性の立場の改善にあまり役立っていないように思える。自分の周囲の男女もそれぞれ多忙を極めひとり生きるので精一杯。恋愛も困難を極めているようだ。
 むしろ日本女性の不幸は、この古典的価値観の維持さえ困難な事態に目を向けずライトな古典的コメディで満足している人が多いことにあるかもしれない。
 「逃げ恥」1話にインスパイアされ、就職に失敗し家事代行サービスでどうにか食い繋いでいた大学院卒の女性が、DVやレイプの被害者、育児放棄寸前のシングルマザー、重い生理痛や性依存症、トラブルに巻き込まれ失脚した元大企業幹部など問題を抱えた女性達と出会い協力して起業、得意のIT技術で彼女たちを支援していた引きこもりのアイドルオタクをすったもんだの末に恋に落ちる、という「今風」のロマンチックコメディを思いついたが、つまらん男が蔓延るご時世、企画段階でボツだろうな。ちょっと残念。

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