私の芸術運動217新作の油絵を描く迄とそれから
前回の記事からまた時間が空いてしまったが、その間私は何とか自分の気持ちの漏電を抑えると共に油絵の新作に取り掛かっていました。
(※描き上がった新作の油絵のリンクはこの記事の1番下に貼り付けてありますので絵だけでも見ていただけたらと思います。)。
日々の仕事の忙しさの中で、少しずつ少しずつ何かが漏れ出て、気づいた頃には点灯ランプが点滅していたなんて事は皆様も経験があるかと思います。
私の場合は仕事の忙しさによって!では無く、私の日々の小さな漏電の積み重ねから仕事やその他の様々な事に影響が出始めた。という様な感じです。
心を病んだわけではありませんが、このままじゃ良く無いなと直感で感じたわけです。
去年からずっと私の中では何かと何かが葛藤したり、何かが苦しんでいて"そろそろ"じゃ無いかなと感じて自分なりに動いていたわけですが、今は耐え忍ぶしか無いという事もわかっていました。
6月には引っ越ししたばかりで、7月には新しい仕事を始め、私生活でも動きのある2ヶ月間でした、そして3ヶ月目にして油絵の制作を再開する事ができました。状況が好転したわけではありませんが、私の中に踏みとどまったり、踏ん張ったりする力がまだあるなと感じることはできました。
新居にもようやく慣れて来て、私は近隣を散歩しながら頭の中の地図を押し広げていますが、点と点が繋がって初めて知る事があるものです。今回越して来たエリアは前から気になっていて散歩がてらうろうろした事が何度かありました、坂が多く緑がある閑静な住宅街、坂を登り切ると東大がありますが、この坂のエリアに旧岩崎邸という三菱に関わる岩崎家の邸宅とその裏に岩崎家の資料館があるのです。私はもう何年も前の事ですがこの旧岩崎邸に訪れた事がありました。
岩崎邸に入ったのはそれっきりでしたがその後も何度もその周辺は散歩に行き、入り組んだ路地を歩きました、印象的だったのは路地と自然でした。路肩に生える草木がやけに印象的で、その隙間をスルスルっと滑る様に流れ込むそよ風が気持ち良い、旧岩崎邸の裏の路地は高い壁に覆われていましたが邸宅の敷地内から生える草木が塀を越えトンネルの様に空を覆い風に揺れ柔らかい木漏れ日を歩道に落としている光景が本当に絵の様に美しく思って、いつかはここに住んでみたいなーと思っていました。
そして今回私が越して来たのがそのエリアです。旧岩崎邸の裏の路地は私の住むアパートから歩いて30秒ほどの距離にあり、私は越して来て駅に出る近道や、いろんなルートを探っていた時に再びその路地に入りました。計画性の無い私はその時初めて自分が今いる場所がどこで、あの頃散歩していた場所がここで、と何年も前の記憶と現在とが線で繋がったのです。
頭の中の地図の空白地帯が埋まると一気に世界が広がった様な気がします。私はそれが嬉しくてよく散歩や旅に出ますが、今回この場所に越してきたのは来るべくして来たという様な気がいたします、私はこの路地の向こう側から何年も前の私がテクテク歩いてくる様な錯覚がしました。そう思うと、何年も前にこの道を通った私はいつの日かここら辺に住んでこの道を散歩しているのかもしれないなぁ。と思っていたのだからある意味錯覚では無いかもしれません。
この路地の写真を撮り、歩き、浸りながら、ここの絵を描く事になるだろうと越して来て早い段階で私は知っていました。
しかし冒頭でも話した通り、私はエネルギーを漏洩していたので、なかなか行動に移せないまま3ヶ月が経ちました。しかしその3ヶ月が無ければ今回のこの絵は全く違ったものになっていただろうと思います。同じモチーフなのに、3ヶ月前の私か今の私か?の違いで全く違うものに仕上がるというのは本当に面白いものです。
この3ヶ月間に私は長野県の軽井沢に旅に出ました、恋人の誘いで前々から気にはなっていた軽井沢で二つ返事で出かけてゆきました。軽井沢が気になっていた理由は、大きく二つありました、一つは堀辰雄という小説家の本を何冊か読んでいた影響です。堀辰雄自身も軽井沢に家を持ち執筆し、小説の舞台にも選んでいます、代表作に「風立ちぬ」「奈緒子」「美しい村」があります、そしてこれは本当に偶然でしたが現地で今まさに堀辰雄文学記念館で堀辰雄の企画展がやっているという情報を得て私は早速見に行ったのでした。これは本当に偶然の一言では言えない様な感動を覚えました。
もう一つはスタジオジブリの宮崎駿監督品「風立ちぬ」です。ジブリの中で私が1番好きな作品であり、私は宮崎駿監督の作品の中で一番の最高傑作だと思っていますが、その映画の中にも軽井沢が出てくるのです。そして松任谷由美さん楽曲「ひこうき雲」は私の好きな曲です。
堀辰雄さんや宮崎駿さんの作品は文章かアニメーションという表現の違いがありますが、作品の中の自然や緑やそこに吹く風はまさに共通して私に強烈なインスピレーションを与えてくれます。
そこでまた私の中で点と点が繋がったわけです。
湯島の路地、軽井沢の街、堀辰雄、堀越二郎、宮崎駿、風立ちぬ、美しい村、サナトリウム、緑、風、木漏れ日、本の表紙の油絵、映画での奈緒子が描く油絵、ポールヴァレリー、海辺の墓地、堀辰雄文学記念館、飛行機雲、松任谷由美。
このほかにも私の気づいていない点が沢山あるのでしょう、それらが繋がって私にインスピレーションを与え、絵を描く様に誘導してくるわけです。
今回描き上げた私の新作の油絵が最高傑作とか大作とか代表作とか言ってるわけじゃ無いです、もっともっと広い意味でこの作品は私に強烈な印象を与えてくれてます。
私は心からただただ嬉しいんです。
絵を描ける事が。
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