授業中、すぐ「声かけ」はNG? 子どもの「待ち」が育む力
小学校で働くささです。
今回はICTでもAIでも校務DXの話題ではありません。
私の教室での出来事をきっかけに、教師の「見守る」という行為について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
具体的には、「教師は子どもの行動が気になった瞬間に、すぐに声をかけるべきなのか」という問いから始まります。特に「見守る」という言葉が持つ意味を深く掘り下げ、子どもの主体的な学びを促す教師の役割について考察します。
1. 授業開始時、ある子の小さな変化
1時間目の国語の時間、最初の10分間は漢字学習の時間です。子どもたちはこのルーティンに慣れており、各自ドリルに取り組んだり、ミニテストに挑戦したりしています。
掃除から戻ってきた子どもたちが手洗いやうがいを済ませ、それぞれ学習を始める中、ある子がなかなか学習を始めません。席に座ってぼんやりしていたり、ドリルは開いているものの、どこか上の空だったりします。
いつもなら「早く始めてね」と声をかける場面ですが、その日はあえて声をかけず、その子の様子を観察することにしました。「いつになったらこの子は学習を始めるのだろう」と、少し実験的な気持ちで見守ることにしたのです。
もしかしたら、その子なりに何か考えているのかもしれない。掃除で疲れているのかもしれないし、寝不足でまだエンジンがかかっていないのかもしれません。単に気持ちが乗らないだけという可能性もあります。
3学期に入り、漢字学習のルーティンも定着しているのに、なぜこの子は始めないのか。周りの子たちがカリカリと漢字学習を進めている中で、なぜ動き出さないのか。私はその理由を知りたくなりました。
すると、ぼんやりしていた子が1分ほど経った後、何かに気づいたように学習を始めたのです。
私はその瞬間まで見届けました。
2. その子にインタビューしてみた
授業後、そっとその子に「今日、漢字学習の時、ちょっと始めるのが遅かったけど、何かあった?」と聞いてみました。すると、その子は「うん、なんか気持ちが乗らなくて」と答えました。
「先生見てたけど、途中から自分でやり始めたよね。それはどうして?」とさらに尋ねると、「気持ちが乗らないなと思ったんだけど、うーん、みんなもやってるし、どこかで気持ちを切り替えなくちゃいけないなと思って、自分の中でタイミングを見計らってたんです」と教えてくれました。
「よし、やろうかな」と思えたのが、ちょうどそのタイミングだったようです。
その子が見切りをつけて自分で動き出すまで、1分ほどの「何もしない時間」がありました。
教師としては、勉強をさせなかったという意味で、適切ではなかったかもしれません。しかし、その後の会話で、子どもは「自分なりのタイミングで戻るきっかけを、自分で調整しようとしていた」ということがわかりました。
最後に私は、その子に「自分でタイミングを見極められるようになってきたんだね」と伝えました。このような声かけを通じて、きっと少しずつ、勉強に切り替えるまでの時間が短くなっていくのではないかと感じています。
この経験から、教師は子どもの行動の背景にある「心の声」に耳を澄ませることの大切さを改めて感じました。
3. 「見届ける」という視点は子どもの自己調整を育むのでは?
もし私がすぐに「はい、おしゃべりしないで!」「早く勉強しなさい!」と声をかけていたら、どうなっていたでしょうか。
おそらく、その子は言われたから渋々始めただけかもしれません。しかし、あえて声をかけずにその子の行動を「見届けた」ことで、気持ちが乗らない理由があったこと、周りの状況を見て自分で切り替えるタイミングを探っていたこと、そして最終的には自分で「よし、やろう」と決めたことがわかりました。
つまり、私が見届けることで、その子が自分の内面と向き合い、自律的に行動する力を育むきっかけになったのではないかと考えています。その結果、その子にとっての自己調整が促されたのではないでしょうか?
教師の役割は、知識を教えるだけでなく、子どもたちが自分で考え、行動できるようになるのをサポートすることです。そのために必要なのが、まさに「見届ける」という姿勢なのです。
4. 「待つ」ことの価値と教師の葛藤
普段の私はせっかちな性格で、思ったことをすぐに口にしてしまうタイプです。しかし、最近は子どもの行動をじっくり観察するように心がけています。
漢字学習は時間内に終わらせてほしい—これは大前提ですが、「なぜこの子はやらないんだろう?」という、その背景により関心を持つようになりました。
教師として「待つ」ことは非常に難しい判断です。特に、限られた授業時間の中で、全員がスムーズに学習に取り組めるよう促すことは、教師の重要な役割だからです。
それでも、この経験から私は、声をかける前に「なぜ?」と考えること、そして子ども自身が変化する瞬間を見守ることの大切さを学びました。
5. 子どもの背景理解と声かけのタイミング
今回の出来事を通じて、教師として子どもたちを「見守る」ことの奥深さを改めて感じました。私自身、普段はせっかちな性格で、すぐに声をかけてしまいがちです。しかし、今回は意図的に声かけを控え、子どもの様子を注意深く観察することにしました。
すると、その子は周りの友達が学習を進めている状況を認識しながら、自分のペースで気持ちを切り替え、学習に取り組み始めました。この経験から、教師の役割は単に学習を促すだけでなく、子どもたちの行動の背景を理解し、それぞれのタイミングを尊重することにあると気づきました。
見守る中で意識すべきポイント
子どもの行動には、必ず理由があるという視点を持つ
一律の声かけではなく、子どもの状況に応じた対応を検討する
子どもが自分で気づき、行動するまでのプロセスを見守る
後にその子といしょに言語化したり、価値づけていき、本人が自己調整ができるような働きかけを行う。
この事例は、教師が常に「声をかける」ことが最善とは限らないことを示しているように感じました
時には「待つ」こと、そして子どもの内なる声に耳を澄ませることが、成長を促す上で重要になります。
今後、私たち教師は子どもたちと接する際に、「なぜ、今、この行動をしているのだろう」という問いを持ち、表面的な行動だけでなく、背景にある気持ちや状況を深く理解するよう努めたいと思います。
そして、見守った後に子ども自身に行動について問いかけ、そこから学びを得て、成長を支援していきたいと考えています。この「見守る」と「見届ける」という姿勢を持ち続けることで、子どもたちの個性と成長をより深く理解できる教師になれると信じています。
皆さんはどうお考えでしょうか?コメントお待ちしています。