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社会科で自己調整学習を半年間実践してみたら、子どもたちの学び方が大きく変わった話

こんにちは。小学校で働くささです。

毎回毎回ワクワクする働き方をというテーマでお話をしているのですが、最近校務系よりも授業系のテーマが多くなっています。

私の今年度の授業テーマは、「自己調整を促す」授業づくりです。 先日、自分の中での研修まとめ授業を行いました。良い機会なので、振り返ってきたいと思います。お付き合いください。


「先生だけが調整をしてる一斉授業が児童の主体性を奪う」

今まで一斉学習の中では、授業者である教師が学習内容を計画し、必要な資料を揃え、めあてを設定し、身につけさせたい力を整理していました。適切な教材と授業計画を立て、学習過程を整えて、子どもたちに知識や技能を伝達していたのです。まぁ、当たり前と言えば当たり前の話です。

そうすると、子供たちには全部先生が物事を整えてくれて、子どもたちが座っていれば学びが行えるというスタンスでした。そうしてしまうと、どんな弊害が起きてしまうかというと、カリキュラムはしっかりできているんだけれど、子どもたちにとっては机に座っていれば学びが始まり、やがて学び終わる。 そりゃ主体性は 身に付かないって話ですよね。

「学びの自己管理」を育む問いかけをしよう

そこで大切になってくるのは、「自分は何のために勉強しているのか」「今日は何を学ぼうか」「どの学習方法を使おうか」「どんな学び方やまとめ方がいいだろうか」といった視点です。さらに、「それぞれの学習活動にどのくらい時間がかかりそうか」「うまくいかない時にどう調整しようか」など、自分の学びについて考えながら勉強する習慣を身につけることが重要だという考えです。

これは学び終えた社会人がその後自分に必要な学びができるかという部分で大きな課題になります。一般的に日本の教育ではこういった先生が調整する場面が非常に多かったため、自分一人では学べない子がたくさんいるという現実があるのです。

そんなことを言ってる私自身も塾では勉強できるけど、高校や大学に行って1人で学ぶって言うことにすごく苦戦した思い出があります。

そんな思いがある中、私は半年間かけて自己調整学習に取り組んでみました。今日はその実践についてお話ししていきたいと思います。

3つのフェーズと社会科の学習過程を組み合わせた単元設計が効果的

さて、具体的なアプローチとしてなんですが、大きく3つのフェーズから成り立っています。木村明憲(@kimura27)先生の著書『自己調整学習』を参考にしています。


言葉を変えるならば、大きく分けて3つのステージです。「見通す」「実行する」「振り返る」この3つで自己調整が育まれるようにできるのではないかという考え方のもとに、私も授業作り、学習の単元作りをしていきました。

主に取り組んだのは、社会科での学習になります。社会科の学習形態というのが、大きく分けると、主に社会的な事象に出会う過程は、いわゆる学習過程で言うと「つかむ」になります。そしてその後、「調べる」過程、そして「まとめる」過程、単元によってはさらにその後に「生かす」過程と続きます。この3つの大きな学習過程を単元の中でどういう風に配置していくかというところに注力してやってみました。

まず、授業で言う「つかむ」過程、社会的事象に出会わせる場面については、ここは教師主導で、色々な資料を出しながら、基礎的な知識を伝えてあげたり、子どもたちからたくさんの疑問を引き出して学習問題を設定するような形で作っていきます。そして、その疑問の中から調べたいことを策定していきます。

それは、好奇心の力を高めることです。好奇心の力を高めること、つまり、「知らないことを知るって楽しいよね」「知らないことを知れて面白い」とまず担任がオーラを発することが一番大切です。

そうしないと、社会科の自由進度学習というのは、ただ教科書や資料集を読むだけ、調べるだけになってしまいます。そうなると、子供たちの中に「知らないことを知りたい」という欲が全くない場合、ただ適当にこなすだけの時間になってしまいます。「成果物を終わらせればいいんでしょ」という感じの時間になってしまうんですよね。だから、この二つ目は大事なんですよね。

シュン先生

AIの力を借りて子どもの問いをもとに学習問題や学習計画をつくっていく工程についてはこちらの記事でも紹介しています。


子どもたちの疑問を基に問いを作るというのは、とても大事な学習過程なんですが、やはり小学校では学習指導要領に基づいてきちんと内容項目が定められています。また、子どもたちが使っている市販のテストにも最終的には答えられるようにしないといけないという側面もあります。

この2つを加味しながら、学習内容については教師が調整します。

うまく調べ学習ができない児童の実態が浮き彫りに

以前の私の学習スタイルは、この「調べる」過程を、問いは作るが、調べ方であったり、まとめ方については、ある程度子どもたちの裁量に委ねていました。

しかし、そういった傾向の中で、いわゆる上位層、中位層の子たちはなんとなく調べの形になるのですが、やはり下位層にとっては、膨大なテキストである教科書の中から必要な情報を抜き出して構成し直して、自分の考えを整理してまとめるという、学習をまとめる部分が非常に弱いのです。こんな実態が、初期の頃の単元での学びの様子から浮き彫りになってきました。

どんな手立てが有効なのか試しながら探るうちに以下の手立てがアリなのでは?と思うようになりました。それが「調べ学習のまとめとして1時間毎のたしかめテスト」を行ってみたことです。 子供たちの反応、特に階層の児童にも刺さった感じがしました。

さすがにゼロイチ 0で問題作るのは結構しんどいので、ここでもAIの力を借りてますが。

小さな問いのワークシートとアウトプット型学習で学びを深める

そこで、今回の単元では、私(授業者)が大きな問いをもとに小さな問いを作り、それをワークシートの形に構成し直して、子どもたちに学習内容として準備することにしました。この問いは、授業の中で教師が子どもたちに投げかける発問をワークシートにまとめたようなものです。

子どもたちは、社会的な見方・考え方を意識して作成した小さな発問が書かれたこのワークシートを使い、教科書や資料集を参照しながら、また友達との話し合いを通じて学習を進めていきます。

学びで大切なのは、インプットよりもアウトプットを重視することだと。このロジックに基づき、教科書から闇雲に調べてノートにまとめるのではなく、教師からの小さな問いに対して情報を適切に引き出し、答えていくというアウトプット型の学習を中心に据えました。

AIを活用した教材作成で作業時間を効率化

なお、この学習プリントをやはり0から全て作るというのは途方もない時間がかかります。全ての単元でこれを作るというのはかなりの労力を費やしますので、この部分については、以前の記事で紹介したAIを使って教材作りをするという部分を参考にしてみてください。

 これだけでもかなり時間の削減には繋がります。プロンプトを書いてポン出しをするというイメージじゃなくて、出された叩き台をもとに、授業者が子供たちの実態や理解してもらいたい内容を基に問いを整理整頓します。

教科書や資料集をみて回答できるような問題

あのICTで有名な前多先生も仰っています。

AIで生成して終わりじゃなく、生成してからが始まり。これが浸透したら深い学びにつながるよ。

前多昌顕先生


チェックポイント機能付きWebアプリで学習進度を可視化

そして、今回の単元(工業生産を支える輸送と貿易)では学び方、学習計画の部分、振り返りの部分についてこのアプリを使用してみました。

noteで見つけたArk2020(@odenman555)さんが作った「自分で学びを進めるアプリ」というものを試験的に使ってみました。 このアプリ控えめに言っても とんでもない自由進度学習アプリだと思います。

このウェブアプリでは、授業者が単元計画の中にチェックポイントを設定し、子どもたちがそれを順番にクリアしていく仕組みになっています。ワークシートの設問と連動させることで、子どもたちは問題を解決するごとに端末でチェックを入れていきます。

ブラウザで開くアプリの画面

もうこれだけでワクワクしてくる

アプリの特徴は、チェックポイントをクリアするごとに学びメーターが溜まっていく点です。この可視化された報酬システムにより、子どもたちのモチベーションが高まります。

ミッションをクリックすると↓
学びメーターが溜まっていく
すごく楽しい!!


さらに、授業開始時に子どもたち自身が学習活動を計画し、めあててを立てます。学習内容だけでなく、学び方も自分で選択できるようになっています。

学びのプラン(学習計画を立てて送信ボタン→記録が積み上がる)


学びの記録が増えていく。(児童画面)



具体的には、1人で学ぶか友達と学ぶか、教科書や資料集、タブレット、動画など何を使うか、教科書に線を引くか声に出して読むかなど、学習方略を自分で決められます。

授業の基本的な流れは、計画・めあての設定に5分、探究学習に35分、振り返りに5分を充てます。教師による一斉指導はほとんど行いません。

児童一人一人が自分に合った方法で学べるように

子どもたちは思い思いの方法で学習を進め、単元全体の時間配分を意識しながら、その日の目標を設定していきました。半年間の実践を通じて、調べ方、まとめ方、重要語句の使用法、要点の整理、教科書からの適切な引用など、学習に必要なスキルが徐々に身についてきました。

単元計画の中に「学びのミッション」を準備しておき、子どもたちが進めていく


また、未知の用語に出会った際には、自発的にその意味を深く調べるようになり、そうした探究的な学習を各自のペースで進められるようになりました。これは非常に大きな成果です。クラスには一人で着実に進められる児童もいれば、社会科に不安を感じて友達と協力しながら学ぶ児童もおり、それぞれに合った学習スタイルを見つけています。

黒板の指示はもはやこれくらい。


学習形態も柔軟で、机を向かい合わせたり横に並べたり、必要に応じて教室内を移動して仲間に相談したりする様子が見られました。また、個別学習中でも分からないことがあれば、躊躇なく教師に質問できる環境が整っていました。

お助けボタンとモニタリング機能で効果的な個別支援

この先生を呼ぶときには、このウェブアプリの中にあるお助けボタンというボタンを押します。そうすると、授業者である私が見ているスプレッドシートの中の座席表シートにアラートが表示されます。授業者はそれを確認して、その子のところにそっと近づき、困っていることを尋ねながら適切な支援を行う。そんなことができるようになります。


また、この座席表には全員の学びの学びメーターが表示されていて、進みの遅い子が一目で分かるようになっています。そういった子たちを重点的に声をかけながら、インタビューをしながら、そしてワークシートに書かれてる記述を見ながら、適切な支援を1人1人またはグループに対して指導を行うことができるのです。

一斉授業から脱却で学習者一人一人に寄り添う

私自身が発話をして一斉授業していない関係で、1人1人の学習活動がよく見とれるというのも大変大きなメリットだと思います。いわゆる学習に苦手意識のある子たちは、その子たちなりに基礎問題、基本問題がしっかりできるように、応用的な問題はできてからでも大丈夫だよというような声がけで、やはり自分に合った問題ができるような習慣が身についてきました。これも1つ大きなメリットかなと思っています。

パフォーマンス課題は必須とする。

「学び方」をふり返る

どうしてうまくいったのかをふり返る

35分の調べ学習が終了したら、教師から振り返りの時間を伝えます。自主的に時計を見て振り返りを始める児童もいますが、まだ全員がその習慣を身につけているわけではありません。そのため、教師が「振り返りの時間ですよ。振り返りをしましょう」と声をかけて、全体で振り返り活動に移ります。

学びメモを活用した学習内容の振り返り

この振り返りは、もう1つの重要なポイントだと考えています。先ほど説明したように、学習方略(つまり学び方)について学ぶことが研修の大きなテーマの1つとなっています。学習内容の振り返りについては、ミッションクリアシートの右側にある学びメモの欄に、気づいたことや考えたことを記入していきます。

個人シートの記録(ダミーデータ)
管理画面から学びの記録が一覧化して見える(ダミーデータ)


これは、どちらかというと、振り返りの時間に書くのではなくて、学習活動が一区切りした段階で書かせるように声をかけてあります。まだ、このここの記述がたくさんかけるほどまだ進んではいないのですが、ここは改善の余地がありそうです。

5段階評価による学び方の自己分析

ここでの振り返りとは、自分が立てた学び方や1時間の進め方について、学習者としての自分を振り返る視点で記述させています。まず、プルダウンメニューから「よくできた」「理解できなかった」「十分ではなかった」などの5つの選択肢から1つを選びます。

そして、どこがうまくいったのか、あるいはうまくいかなかったのかを具体的に考え、その理由や原因を探るようなアプローチを取っています。

学び方を振り返るときには「うまくいった・うなくいかなかった原因」を探る→原因の帰属 そして教訓をさぐるように

学び方の客観的な振り返りで成長を促す

このプロセスを通じて、生徒たちは自分の学び方を客観的に見つめ直すことができます。学習方法が適切だったのか、なぜうまく学べなかったのかという原因を探ることで、次の学習への改善点が見えてきます。うまくいった場合は具体的な教訓として、うまくいかなかった場合は改善プランとして、徐々に生徒一人一人が自分の言葉で表現できるようになっています。

以前紹介したこちらの振り返り専用Chatbotも今後試してみる予定です。 児童の振り返りの一助になればいいなと思ってます。
https://note.com/hiroki_sasazawa/n/n15a706fb0f05


学習成果は出ている。他教科へ転用できそう。

実際、単元テストの結果を見ても、1学期前半の教師主導型の一斉学習と比べて、点数が向上していることがわかります。特に素晴らしいのは、この社会科での自己調整学習の経験が他の教科にも活かせる点です。


私の学級では教科担任制を採用していますが、国語、道徳、家庭科、総合的な学習の時間など、様々な教科で「計画を立てる」「自分で取り組む」「振り返る」という自己調整の視点を取り入れています。授業の1時間単位でも、単元全体でも、生徒たちが主体的に学習を進められるようになってきました。複数の教科でこの方法を実践することで、生徒たちは効果的な学び方を身につけることができているようです。

まだ年度の途中ではありますが、今回の授業を通じて重要な節目での振り返りができました。皆様からのご意見、ご感想をお待ちしています。


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