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社会科ではじめた「自己調整学習」を他の教科でやってみたら、子どもたちの「学び方」がどんどん転移していった話。

こんにちは。小学校で働くささです。

今日は、私のクラスで実践している「自己調整学習」についてお話させてください。

社会科をきっかけに、他の教科にもこの学び方を広げてみた結果、子どもたちの学び方がどのように変化したかをお伝えします。


1. 社会科から始まった自己調整学習、全教科へ

私のクラスで自己調整学習を取り入れ始めたのは、1学期の後半からです。最初から全教科で始めたわけではなく、まずは社会科で、子どもたち自身に学びのペースを任せ、学び方を選ばせることから始めました。

大切なのは、子どもたちに「学びの主導権」を渡すこと。教師が一方的に教えるのではなく、子どもたちが主体的に学ぶ時間を作ることです。これは、私にとっても新しい試みでした。

社会科での取り組みが進む中で、同僚の先生が自身の授業で提案した「学び方ふり返りシート」がヒントになりました。
このシートは、各教科で自分の学び方を振り返るためのもので、学習の各段階で「どうやって学んだか」を意識するきっかけになります。

社会科での「学び方ふりかえりシート」


この振り返りシートを参考に、次は国語科でも学び方を選ぶ学習に挑戦しました。「何を学ぶか」は私が決めるのですが、「どう学ぶか」は子どもたちが自分で選択できるようにしました。例えば、教材の読み解き方一つとっても、一人でじっくり取り組む子もいれば、友達と話し合いながら進める子、タブレットを活用する子もいます。

国語での「学び方ふりかえりシート」「読む」物語バージョン



興味深いのは、こうして複数の教科で同時に取り組むことで、「学び方の転移」が起こりやすくなることです。

社会科で「自分で選んでいいんだ」という感覚を掴んだ子どもたちは、国語科でも同じように主体的に学び始める傾向が見られました。

2. 学びの主導権を子どもたちへ - 少しずつ、段階的に

進める上で、私が最も意識したのは、子どもたちに「学びの主導権」を渡す、つまり、学びの責任を子どもたち自身に持たせることでした。

もちろん、最初から全てを子どもたちに任せたわけではありません。1学期の後半から、少しずつ、段階的に、子どもたちが自分で学ぶ時間を増やしていきました。

ここで鍵となるのが、先ほども紹介した「学び方振り返りシート」です。このシートを使って、子どもたちは各教科で、学習の段階ごとに自分の学び方を振り返ります。

「どんな学び方をしたか」
「うまくいった、いかなかった?」
「それはどうして?」
「それは自分に合っていたか」
「次はどうしたいか」

を考えることで、自分自身の学びを客観的に見つめ直すことができるようになります。
国語科での実践では、「学習する内容は教師が指示するけれど、学び方は子どもたちが選ぶ」というルールを徹底しました。

「読む」説明文バージョン

子どもたちは、一人で深く考えるのか、友達と意見交換をするのか、タブレットで調べるのか、先生に質問するのか、といった学び方を自由に選択できます。

「書く」領域バージョン

3. 振り返りシートが促す教科間の転移

複数の教科でこの学習を同時に進めることのメリットは、「学び方の転移」が起こりやすいことです。社会科で「学び方は自分で選んでいいんだ」という感覚が生まれると、それが国語科、ひいては他の教科にも自然と広がっていく傾向が見られました。

その結果、教師の説明時間が減るという変化も生まれました。例えば、学習計画の立て方や学び方の選択肢について、最初のうちは丁寧に説明する必要がありました。しかし、2回目の単元、あるいは他の教科での実践になると、これらの説明時間が短縮されていく傾向が見られました。なぜなら、子どもたちはすでに「学び方は教科によってそれほど変わらない」という感覚を掴んでいるからです。

つまり、学習方法に対する詳しいガイダンスに時間を割く代わりに、子どもたちは自律的に学びを深めていくことができるようになります。

これは、社会科での取り組みを国語科に展開したからこそ得られた、大きなメリットでした。そして、この流れは、その後の体育科、道徳科、そして総合的な学習の時間へと繋がっていきました。

4. 教科をまたいだ、学びの広がり

社会科、国語科と進んできたこの学び方は、体育科にも自然に広がっていきました。走り幅跳びやハードル走の単元で、子どもたちは教室での学びと同様に、自分で学習の目標を立て、練習方法を自分で選択し、一人で取り組むか、友達と切磋琢磨するかを決めました。そして、練習後には振り返りの時間を設け、「どうだったか」「どんなところが改善できたか」を振り返ります。

体育 ハードル(ロイロノート)「ハードル」
体育 走り幅跳び



同じ頃、同じ学年の先生が道徳科で、子どもたちが自ら問いを立て、解決策を探るという新しい授業を試みられていました。

このように、社会科からスタートした学び方が、隣のクラスにも影響を与え、さらに国語、体育、道徳へと広がっていく中で、子どもたちの「学び方」は着実に成長していきました。

5. PDCAサイクルで加速する学び

計画を立てる際、「1人で集中して取り組んでみようか、友達と議論しながら進めてみようか、タブレットを活用してみようか」と、様々な選択肢を自分たちで考えるようになります。

これは、教師が「こうしなさい」と指示しなくても、子どもたちが「どうすれば最も効率的に学べるか」「自分にあった学び方は何か?」を考え、それを実行に移せるようになるということです。

子どもたちは自分で学習の目標を立て、どのような練習方法が効果的かを考え、実際に練習し、振り返るというサイクルを回しました


これらの取り組みを経て、2学期の総合学習では、自由進度学習が効果を発揮したように感じました。地域水害をテーマに、子どもたちは「何を調べようか」「どうやって情報を集めようか」と、自分で課題設定から情報収集、整理、まとめまでを計画し、最終的にはポスターにまとめて発信するという主体的な活動を行いました。

授業ごとに計画を立て、振り返りを行い、単元が終わった後にも改めて振り返りをする。大まかな進路調整は教師が行うものの、細かい調整は子どもたちに委ねる。

総合で実際に使用した「学習計画・ふりかえりカード」(レギュレイトフォーム)
参考:木村明憲(2023)「自己調整学習」

まさに、社会科で始まった学び方を選ぶ考え方が、他の教科にも広がり、そしてまた社会科に戻ってきた、という感覚がありました。

このPDCAサイクルを何度も回した結果、子どもたちの学び方は明らかに上手になりました。私が急な休みで欠席しても、子どもたちは自分で学びを進めることができるようになったのです。もちろん、教師が準備した教材やアプリの存在も大きいのですが、それ以上に、子どもたちが「自分で学んでいいんだ」というスタイルを身につけたことが、大きな変化につながったと感じています。

この経験から、一つの教科で始めた取り組みが、他の教科にも転移し、子どもたちの「学び力」を大きく引き出すことができると実感しました。結果、社会科における学び方が劇的に変化したのは過去の記事でも紹介しています。


さあ、皆さんも、まずは一つの教科から、少しずつ、子どもたちに学びの主導権を渡してみませんか。

いろいろな視点でご意見いただきたいと思います。コメントお待ちしております。

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