3年目のぼくから、これから留学する君へ:保険編
ぼくは学部3年生の時に交換留学でリトアニアのヴィリニュス大学(そして、その前後にエストニアのサマースクールに2回)に、卒業してからはエストニアのタリン工科大学大学院電子政府政府学科に正規の学生として留学しています。留学という身分では長い方であり、リトアニア、エストニア、そしてこれから3ヶ月だけだけど運よく中国にも交換留学させてもらえることになりました。実体験から経験を述べさせていただけたらと思います。
これから留学をする、あるいは志す君のその背中に向けて。
第1回目の今回は保険編。動機とか志とか、第1回目にはそういう方がふさわしい気もするけれど、”情報度”という観点から一番に持ってきました。お金に直結します。それは10万円と言う単位で、です。
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最初に結論として、可能であるならば現地の保険に入る方がよい。ただし、できない場合もある。そして、どうしても”万が一”の不安が消えないなら充実度の高い日本の保険がベストだと思われる。
ケース別に見ていこう。なお、以下はぼく個人が体験したことがベースであり、リトアニア・エストニアないしヨーロッパ圏を想定したものとなっている。留学先の国によっては以下のことがほとんど当てはまらないかもしれないが、検討する項目はあまり変わらないと思うので、ざっとでいいから目を通してほしい。ぴったり当てはまる場合にせよ、いずれにせよ、留学というのは手続きを含め、諸々のことを自分ですることが前提であることは心に留めておいて欲しい(もちろん、お金を払えば代行してくれる業者はたくさんある)。
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ケース1:シェンゲン協定等で入国の際に一定期間のビザ猶予枠があり、交換留学先や大使館等からビザの申請は留学先のビザ発行所でかまわないと許可をもらっている場合。
まず、パスポートは”私は〇〇という国の国民である”という証明書であるのに対し、ビザは”我々▲▲(国名)はあなたをある一定の期間この国に滞在することを認める”査証であることを注意されたい。この一定の期間において、”働いてもいいよ”と許可がついたものを就労ビザ、”生徒として扱うよ”というものを学生ビザと呼んだりする。要はできることの大枠が決まっており、基本的に学生ビザの場合、現地でアルバイト等はできない。
さて、ヨーロッパの場合、シェンゲン協定といって“180日以内において90日以内まで協定国(日本を含む)の国民はビザなしで過ごすことができる”という有難い協定が存在する。ただし、スイスやノルウェー、イギリスなど例外もあるので注意。
このビザ免除制度を使って、留学先の国に入国し、現地の保険に入り、ビザも申請しちゃおうといういうのがケース1だ(ビザ申請時にはビザの要件を満たす保険に入っている必要がある)。交換留学時のリトアニアの時はこれができた。続いて、現地の保険に加入するメリットを伝えたい。
現地の保険に加入するメリット
1、保険料が安い(リトアニア、エストニアの場合)
日本で海外保険に申し込もうとするとリトアニアやエストニアは”ヨーロッパ”という大枠でくくられることになるのだが、リトアニアやエストニアはヨーロッパの中では小国~中堅くらいの国力(≒物価)である。フランスなどと比べると物価の差は2,3倍と異なる。日本の海外保険はそうした物価高の国でも安心できるようなカバー内容となっているので自ずと保険料が高い。1年間となると15~25万円が相場となるが、ぼくが現在入っているこちらの保険料は年間3万円(240ユーロ)である。これでもビザの要件を満たすし、後述するが、医療費を建て替えなくて済む。
2、医療費を建て替えなくて済む!
声を大にして何度でも叫びたいのだが、医療費を建て替えなくて済むことの恩恵は素晴らしい。正直これを伝えたくてこの記事を書いた節があるくらい。
風邪で通院した時も病院では1セントも払わず。持病を患っているのだが、その検査をした時もびた一文も払っていない(ただし、薬代は払わされる)。病院に来て、診察して、そのまま財布を出さずに帰るという申し訳ないことを最近しているのだが(ご心配あらず、健康です)、その度に感動しっぱなしです。ぼくが現在いるエストニアはエストニア語が公用語で、あとロシア語がご高齢の間で、英語が若者の間で使われているのだが、病院と言えども受付では英語はほとんど通じない。もし医療費を建て替えないといけない場合、その労力は計り知れないものになります(後述)。
現地の保険に加入するデメリット
ヨーロッパの場合、他国を周遊することもざらにあると思うがこの場合現地の保険は機能しない。改めて現地の海外保険に入るか、クレジットカードに付帯する分で安全に過ごすしかない。
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ケース2:日本出国時に少なくともビザの申請をしていないといけない(受け取りは留学先)場合かつ日本の海外保険ではない場合。
(あまり日本の海外保険でない、と連呼するとまるで恨んでいるような節に聞こえるが、あくまで保険料と建て替えることがネックなだけであり、保証額や補償対象の充実度は素晴らしいです。)
これは修士1年目のエストニア入国の時でした。大学側からビザの申請と渡航前にしておいてね、と釘を刺されていたので前回の手が使えない状況でした。おそらくこの度は交換留学ではないことから個人の信頼問題にかかわることと、リトアニアよりもエストニアの方がビザ(正式には臨時居住許可と呼ばれるエストニア独自のもの。詳しくはいずれ)の発給に時間がかかることから90日の猶予期間内では間に合わないかもしれないという事情がありました。
そのため1年目はグローバルに展開するネット保険会社を選択しました。料金は確か同じ250ユーロくらいだったと思います。
グローバルなネット保険会社のメリット
特に記述することはないのですが、手続きが簡単で、日本の海外保険よりも安価なことです。これでもビザの要件を満たす補償内容です。
グローバルなネット保険会社のデメリット
建て替え申請手続きがこの上なく面倒で、時間がかかる。幸いにも修士1年目は病院に訪れることがなかったので、友人の例になってしまいますが、案の定です。保険会社が義務付ける書類と病院でもらう書類が違うこともあり、改めて双方に申請したり、場合によっては翻訳してもらったり、デジタルでいいのか郵送なのかも気を付ける必要があり、必要な書類が全部そろった後でも、保険会社の手続きが遅くてなかなか受け取れない。これらすべての労力と時間を考えたら、請求を泣き寝入りするほうがマシ、といったことも金額によってはザラでした。
ただし、
おそらくグローバルなネット保険の場合(も)契約の最長期間は1年間だと思うので2年目の更新時は現地の保険会社に切り替えました。
まとめ:考慮すべきポイント
1、日本出国時に対象のビザが必要かどうか
もし必要であれば同時に海外保険に入っている必要があるので、日本のものかグローバルなネット保険に加入するかになります。ぼくが知り限り現地の保険は窓口で身分証明する必要があるので、この際は適応できません。
仮にビザは不要で現地でビザ申請できるとなった場合でも、必ず留学先の学校と大使館職員に確認のメールを送ってください。大事です。ぼくは責任を取れません。
2、自身の金銭的余裕、保険の補償内容の確認
日本の海外保険と比べると、現地、またはグローバルなネット保険との料金差は10万円以上になります。この差は大きいですが、ただし、補償内容を見るとおそらく日本の海外保険の方が充実しているでしょう。その充実度を”安心をお金で買う”と見ることもできます。しかし、個人的には”お金を払って万が一を考えなくなるよりも、常に万が一を考えて行動する”方が留学する目的あるいは成果として得るものが大きいと思っています。
3、建て替え手続きは大変 心力と言語力を備えているか
おそらく全て日本語の手続きであっても大変です。保険会社と病院、または先生や薬局とも連絡を取る必要があります。英語が通じるならまだマシですが、そうでない場合もあります。この点現地の保険会社と提携している病院だと建て替えの手続きは必要ない(病院が直接保険会社に請求)です。また、日本の海外保険によっては同じく建て替え不要または簡易化されたものが見受けられますので、その点の考慮も大事です。
おまけ:そもそも病院送りにならないために
1にも2にも栄養補給です。大都市以外、現地のスーパーでは日本で見慣れた食品が置いていないと思ってください。ビタミン、ミネラル(特に鉄分)、そして乳酸菌は不足しがちです。この乳酸菌不足により、腸が停滞し、免疫力が落ち、風邪をひきやすくなります。日本にいる頃は当たり前のように口にしていた醤油や味噌、その他の発酵食品、キノコといった水溶性食物繊維が日常的に腸をメンテナンスしていました。それらの食品が留学先では手に入りにくいです。加えて、揚げ物文化圏だと腸に優しくない油のオンパレードなので気を付けてください。
では、どうするか。おすすめなのは現地の食文化を真似てください。具体的には味噌や納豆といった整腸作用の持つ食品の代替を探してください。例えば旧ソ連圏ですとあらゆる料理にサワークリームが使われていますが、これの整腸作用は超強力です。あとはケフィアですね。個人的にはどんな発酵食品よりも整腸作用に優れていると思います(例えば日本のヨーグルトは1商品に対し1乳酸菌(の種類)であるが、ケフィアには数十の乳酸菌が含まれている。一度に何十種類ものヨーグルトを食べている感じです。人によって効く乳酸菌は異なると言われているのでケフィアは”万能薬”です。ちなみに日本では、よくわかりませんが、ケフィアの販売は法律で禁止されています)。
最後に長々と読んで頂き恐縮ですが、ここに書かれていることはあくまでリトアニアやエストニアの場合ですので、鵜呑みにせず、考慮すべきポイントに配慮して自分のケースを自分で調べてみてください。
それが留学の具体的な第一歩です。