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沖縄拳法中村道場中村丈人先生の後ろ姿と習い手にとっての「運・鈍・根」
私が高校生だった頃(30年以上前)
沖縄拳法中村道場での練習中、こう思うことがありました。
「空手の型や地味な基本稽古より、
ウエイトトレーニングの方が効率が良いのではないか?
試合に勝つだけの練習だけでいいのではないか?」
先輩がそれに気づいたのか、
習い手に必要な3つの事を教えていただきました。
「運・鈍・根」
運・・・先生に出会う「運」
鈍・・・先生からの教えについて「鈍感」な事
根・・・繰り返し続ける「根気」
「道場に来た時点で運はついている。
大事なのは、先生の教えに対し、あれだこれだと言うのではなく、鈍感である事、
そして、続ける根気だよ。」
さて、来年90歳になる中村道場の中村丈人先生は、
日々の稽古はもちろんの事、
高齢になっても行える鍛え方の工夫を続けていました。
確か、80歳を過ぎた頃でしたでしょうか、
毎日続けていたウォーキング(10km)の代わりに始めた稽古がありました。
ものすごくおもい重りが入った袋を腰にかけ、
更に、重りをつけたモップを持ち、道場を回るというものです。
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側から見ていると、
普通にモップがけをしながら歩いているように見えます。
それを見透かされたのか、
先生から「歩いてみなさい」と言われ、試してみました。
腰にかけ歩いてみたら・・・
動きません。
結果は、一周がやっとでした。
明らかに、筋力だけではダメで、
重心移動を伴わなければ引き続けられません。
正直、その「差」をまざまざと痛感しました。
そんなある日の出来事です。
道場に行くと、
いつものように先生がそれを引いていました。
早速、稽古を始めようとしたら、
急用が入ってしまい、一旦道場を離れ、
2時間後、道場に戻りました。
(今だに信じられないのですが・・・)
先生は、まだそれを引いていました。
突きの威力にも繋がる「重心移動」
一言で言うと簡単なのですが、
多くの関節がある人間において、
撓みを無くし、重心を集め、移動し続けると言うのは簡単な事ではありません。
先生は、「歩く」と言っていましたが、
その意味するレベルに辿り着くまでには長い時間と鍛錬が必要です。
年齢と共に身体的な制限もかかる中、
型や基本稽古の他にも様々な工夫を凝らしていた先生の後ろ姿・・・
習う側の私としては、鈍感力と根気の重要性をいつも実感しました。
さて、沖縄拳法流祖中村茂は、本来の空手には流派はなかった、
だから沖縄の拳法(手/てぃ)で良いではないかと立ち上げた流派です。
その為、流派を超えた研究所としての位置付けもあり、
先人達は、型や組手をはじめあらゆる研究を積み重ねてきました。
それらの素晴らしい技術を学ばせて頂ける私は「運」が良いと思います。
本日も感謝しながら「鈍感」にナイハンチ(型)から稽古を始め、
日々「根気強く」続けていきます。