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詩「ショートケーキ」

20240914

あと千円しかない彼は
娘にケーキを買ってやった
娘は大事に食べた
一口一口 いちクリームいちクリーム

一個が四百八十円くらいだった
まだ五百二十円あった
彼は煙草を買った
半日しか過ぎていないのに 今月の金がなくなった

次の日 娘は泣いた
お腹が空いて暴れた
暴れたら暴れるだけ お腹が空いた
彼はお腹を殴った 少しおとなしくなった

一週間 水だけ飲んだ
煙草はもうなくなってしまった
娘はケーキを食べたいと言った
彼はあれで最後だと言った

彼はあの時優しかった ケーキを買ってあげたから
娘はあの時嬉しかった ケーキが食べられたから
彼は一人街灯のない道を歩いた
彼は一人 街灯のない道を 歩いた

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