詩「人生悪役ⅩⅩⅩⅣ」

2021-01-27

タヌキは施設内の運動場のベンチに座っている
周りでは 他の収容者たちが遊んでいる
走り回っている者 バスケットボールを投げる者
そんな者たちに囲まれて タヌキは高い塀を眺めている

雀が飛んでいる 烏が飛んでいる
鳴き声が会話に聞こえる タヌキは彼との会話を思い出す
全てがはっきりと思い出せる
これが 本当に存在しなかったものだったら?

そう考えて タヌキは恐怖を感じる
悲しくて悲しくて 仕方なくなる
そこに 収容者が投げたボールが転がってくる
それを投げ返すと タヌキはまたベンチに座る

収容者たちは 彼を変わり者扱いをして
自分たちのコミュニティには入れない者として扱う
落ちている石を彗星の欠片としてポケットに仕舞いながら
一人の収容者は タヌキを心底気の毒に思う

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