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詩「恥辱」

20240507

裸を見られるよりも恥ずかしいことをしている
到達点のわからない旅路で
被害妄想だということはわかりながら
その笑い声を聞かないようにすることは出来ない

生まれ出るものを晒して生きるには
未熟なのか 腐ってきたのか
どちらだと思う? 彼は誰かに問う
どちらでもない 誰かは彼に答える

何が生まれるか分からずに
生まれたものの正体すら知らずに
漂う 彼は真っ当に
信じている 信じられないもの全てを

裸にしてもらいたい 誰かへ宛てた手紙を
フィギュアのように並べた部屋で
彼の切り身に値札を貼り付けて
満足そうに眠っている間に

裸にしてもらいたい 望みが煮詰まり
違う物質になるまで 炎は消えずに
灰になっても 何かに変わると願い
その望みと願いを聞く誰かはもう居ない

裸になっても鎧を纏っても
皮膚を剥がしても血を抜き差し出しても
誰も彼を知らない
その方がマシとさえ思えるくらいに

恥ずかしさで赤くなった顔を笑う人々が
彼のことを取り囲んで暴行を加える
その日を夢見ながら 彼はまた恥ずかしくなる
そうやって生まれ出たものが増える

部屋を覆い尽くし 街を覆い尽くせ
彼を笑う者の顔を 赤く染め上げ
永遠に続く炎の中で燻り続けて
彼が何かに変わるのをひたすらに待て

助言か予言か 誰かが囁く
彼は信じられないものが増えた音を聞く
ありえないことを信じる気持ちが膨れて
破裂しそうな夜に 新しいものはまた生まれる

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