詩「人生悪役ⅩⅩⅩⅡ」

2021-01-27

「うーん どうですかね先生
 タヌキさんは 良くなってますか?」

「いや ちっとも
 ただ 危害は加えないとは思うよ」

「そうですか…
 8年ほど昔 職員に暴行を加えまして」

「それも 薬で緩和されているみたいだ
 抑制が効くなら 近親者に面倒を見てもらえるかと」

「はあ…でも彼は信頼出来ますか?
 タヌキさんの近親者だと言ってますが 絶対に違う」

「大丈夫だよ
 そもそもこの施設は 身寄りのない人しか来ない」

「いや それなら大丈夫じゃないでしょう?
 だって身寄りがないはずなのに…」

「よっぽど 彼はタヌキさんに恩義があるんだろうな
 彼と会って話したけど 普通の男だった」

「だから怖いんですよ
 兄丸組って話が本当だったら…」

「ははは そんなふざけた名前のヤクザがいるわけないだろう?
 それより 今日はどこか食事に行かないか?」

「え? ええ 先生となら 何処へでも
 今日も その後は あのホテルへ?」

「もっと特別な物を用意しておくよ
 楽しみにしていて」

男と女はキスをして
お互いの業務に戻った

そのあと タヌキは 男に連れられて
自室へと戻っていった

白い壁の部屋
今日も陽の光が差し込む

揺れる
揺れる

タヌキも
揺れる

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