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詩「メモ」

20230713

ぶちまけられたメモ帳の片隅で
虐げられる思いが痕跡を残している
彼の持っているマグカップが落ちて割れる
紙が茶色に染まるとどうも良くなる

考え事は大事な部分だけを残して
あとは腐って仕舞えば良い
洗濯バサミで挟んだメモ帳には
何も意味がない 彼はそう思いこむ

新しいコーヒーをいれる
割れたマグカップはオブジェにする
彼の足の裏に刺さった破片たちは
赤く染まりながら時間を数える

乾いた紙にマッチで火をつける
燃えて灰になる場面を瞳が切り取る
彼はメモ帳に思いを書き込む
片隅には本音ばかりが並べられる

一日過ぎれば痛みは薄れてゆく
足の裏が陶器でコーティングされてゆく
また一日過ぎれば剥がれ落ちる
彼がいれるコーヒーの量だけが増えてゆく

メモ帳は彼に付き合ってやる
日記帳は仕舞われて寂しそうにしている
マグカップは割れるまで思い出に耽る
洗濯バサミは靴下を懐かしがる

彼の思いはコーヒーのシミに変わると
湯気となってそこらに漂う
アパートの一室はパンパンに膨れ上がる
いつか爆発する日を待っている

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