詩「人生悪役ⅩⅩⅩⅤ」

2021-01-27

白い壁は タヌキを見つめている
タヌキも 白い壁を見つめている

白い壁は 彼のことを知っている
タヌキの記憶を 映し出されたスクリーン

ネズミもリスも サメもシャチも知っている
キツネもフクロウも知っている

会ったことがない人物は
顔を思い描く

なので 白い壁は
サメとシャチとキツネは ぼんやりとだけ知っている

壁はタヌキに同情する
多くのものを失ったと

時折挟み込まれる
ぺしゃんこになった顔を見るたびに

壁はタヌキに失望する
ロクでもない男だと

タヌキは 壁に彼のことを映す
壁は 彼のことを映しながら 揺れる

歪んでいく記憶 何も証明出来ない記憶
タヌキは 自分自身さえも 見失いそうになる

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