詩「人生悪役ⅩⅩⅩ」

2021-01-27

それからというもの
逃亡する場所もなく 迷った二人は
街の事務所に戻り フクロウの部下たちに会いに行った
事務所に入るなり タヌキはこう呼びかけた

『てめえらの頭は取った!!!
 お前ら!!俺に殺されたくなけりゃ
 俺の下で奴隷のように働け!!!
 出来るやつには 金をくれてやる!!!』

殺気立ったフクロウの部下たちだったが
ヒグマのようになったタヌキに三人が殺されると
他の連中は タヌキの話を聞くことにして
手に取った武器を床に落とした

彼は タヌキの横にいることで
どんどん野望を抱いていくようになった
手下が集まれば こっちのものだと思い
兄丸組の組員たちを招集した

組長殺しを支持した犯人(とされている彼)が名乗りを上げて
パーティー会場の案内を組員に広めると
組員は武器を手に取り 会場に乗り込んだが
フクロウの部下たちは それを止めた

そして 部下の中でもフクロウに最も近かった男が
壇上に上がり 一連の騒動の首謀者がフクロウであると告発した
すると組員たちはフクロウの部下たちに銃を向けたが
タヌキが爆発音に近い怒鳴り声をあげて 状況は一変した

『クソ野郎ども!!お前ら
 今自分たちがしなきゃならねえこと
 わかんねえのか!?
 だったら教えてやる!!しっかり聞きやがれ!!

 お前らはこれから コイツと俺の部下になる!!
 そうだろうが!! 他に誰がまとめられる!?
 どうせチンケな組だ!オヤジがいなけりゃ何も出来ねえ!!
 俺らがお前らのオヤジになってやる!!』

彼は タヌキの言葉に戸惑う組員たちに 話をした
「そんなわけだからよ すまねえけど 俺らに着いて来てくれねえか?
 俺らは 組長…いや 親父の殺しには関与してねえんだよ
 親父って 生きているうちにそう呼んでやりたかった

 俺は 親父がいなけりゃ ガキの頃に死んでたんだ
 親父に拾われた命なんだよ
 お前らも 俺を良く知っているはずだぜ
 親父…馬鹿だから 俺の話ばかりしてたんだろ?

 素直じゃねえよなあ お互い様だ
 取り立てばっかりさせやがって
 でもな このタヌキがそばにいたおかげで
 俺は 本当の生きる道ってもんが見えたんだよ

 だから 頼む
 どうせ散るなら 咲いてからが良いだろう?
 みんな 俺らに任せてくれねえか?
 親父の意思は みんなで継ぐんだよ」

組員たちは静まり返った
バラバラになっていた兄丸組というパズルが
タヌキという予想外のピースで完成して
新しく息を吹き返そうとしていた

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