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詩「愚かで卑しいスープパスタ」

20240507

スープパスタは言った
「飯は熱いうちに食え」
精霊たちも電波にやられて
自分の在処がわからないようだった

彼は言った「フォークがない」
火傷した右手が震えている
スープパスタは表情を変えずに言った
「冷めてしまうまで置いておくつもりか」

精霊たちは動揺して
彼の頬にメッセージを書き残した
電波の発生源は突き止められて
彼のいる部屋のコンセントの中だった

スープパスタは彼を怯えさせた
スープパスタは言葉巧みに誘導した
スープパスタの精霊は
スープパスタの電波に変わった

恥ずかしいほどに嫌なことを思い出して
彼は叫びたくなったが黙っていた
「叫んだらどうだ?」
スープパスタは全てお見通しだった

優しく抱擁するスープパスタの熱さが
唇を赤く腫れ上がらせた
唇は元からそうであったかのように
痺れて 彼の元から旅立って行った

唇がなくなり喉は寂しさで死んだ
胃の中に落ちて溶かされ始めた
彼は声が出せなくなった
空気を吐き出して必死に弁解した

スープパスタは新しい喉と唇をやった
精霊たちを粘土のようにこねて作り始めた
激しくなった電波の中で彼は破裂しそうになった
何故だか愉快で仕方がなかった

彼を担当していた男はため息をついた
「またダメだったか 仕方ない」
彼の額に描かれた番号をかき消して
スープパスタを一から茹でなおした

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