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詩「散歩」

20230812

新宿駅東南口を降りると喫煙所に向かう
そこにはつまらなそうな顔をした男女がいる
煙で少しフィルターがかかりぼやける
彼は煙草を取り出して火をつける
前はこんなことをせずに済んだと思う
つまらない顔たちがつまらない煙を吐き
ダラダラと死へと近づいてゆく
そしてその中でも
一番つまらない顔をした彼が
一本の煙草を吸い終わる
服を買いにビックカメラへと向かう
ユニクロとのコラボはいつ終わった?
そんなことを考えながら
店を出て世界堂へ向かう
キャンバスを買おうか迷って
荷物になるのでやめる
バルト9でやっている映画を確かめる
バービーとビーストウォーズで
ダジャレを考える
思いつかないまま駅へと向かう
ドリカムを歌う美人が気になる
信号を渡る
カップルの女性の方が
ペットボトルを落として
別のカップルの男性が拾って手渡す
タイムズスクエア側に渡ろうか迷い
そのまま直進してブックオフの前を通る
ここへはよく通ったなと思い出す
マクドナルドもよく行っていた
そのまままっすぐ進めば良い
そうすればいずれ原宿に着く
そんなことを考えながら
明治神宮の門を確かめ
閉じていたのでいつもの裏路地を歩く
女性がブタどもの前で
アコーディオンを演奏して
その店のライトが
昨日見た何より美しいと感じる
彼の右手にはずっと痺れがあり
この情景を書き留めたくてたまらなくなる
くねくねと曲がるがほとんど一直線に進む
原宿に着くと浴衣を着た女性たちが
竹下通りの門を撮影している
何かのアニメのキャラクターがいるのだろう
代々木公園に向かう
ギターの演奏をしている
エレキギターとアコースティックギターが
全然噛み合っていなかったが
演奏が終わると拍手が起きている
代々木公園の前で太鼓を叩きながら
謎の舞を踊っている中年女性たちがいる
後ろから聞こえる
独特な英語が耳にこびりつく
腰がとても痛くなってベンチに座る
また歩き出す
後ろにいた男性の影が近づく
そして離れてゆく
少し奇妙に思う
歩道橋を渡ってNHKホール方面へと歩く
途中で綺麗な外国の女性に微笑みかけられる
柵の方に目をやると花火が見える
学生であろう男の子たちが騒いでいる
少し進んで見えやすいところで花火を見る
周りにも同じことをしている人たちがいる
花火など興味がなかったが風情を感じる
スマホの充電が切れていることを悔やむ
渋谷駅方面へと歩き出す
時計に現在の気温が
29度であると書かれている
ペンとノートを買う
今まであったことを文にまとめようと思い
出だしだけ書く
東急ハンズの前を通る
ここもよく行った
何も用事がなかったのにワクワクした
なくなってしまったブックオフあたりを歩く
好きな洋楽は大体ここで買っていた
マクドナルドの前を通ると
トイレに置いてきた
財布の中身を抜かれていた出来事を思い出す
人々が行き交う
何故か向かい側からの方が多い
道の真ん中で外国人のカップルと
学生たちが話している
多分写真を撮る撮らないという内容だろう
渋谷駅が見えてくる
長い髪で顔の見えない
ギタリストのCMが流れている
スクランブル交差点を通っていると
立ち止まって外国人が写真を撮っていて
信号を渡り切った場所でも撮っている
若い男女がひしめき合っている
おそらく売れないアーティストが
チラシを配っているが無視されている
帰ろうか迷いつつ改札が近くなる
周りをよく見ていないボサボサの髪の女性が
当たってきたがお互いに何も言わない
やっぱり帰ろうと思う
彼は山手線のホームの場所が
変わっていることに驚く
いつも乗っていたホームへの階段は
電気が消えていて物悲しい
山手線がホームに着く
いつも早い
人々に囲まれ
それすらも懐かしくなる

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