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詩「たい焼き食べた」

20230818

コンクリートに打ちつけた頭の中から
こんがりとした たい焼きが出てきた
甘い匂いに釣られて来たたい焼き屋の前
そこらの石につまずいてコケた

遊び疲れてかれた声を懸命に出し
助けを呼んでみた 別に必要なかった
誰も来ないので不貞腐れていると
たい焼きに釣られた野良猫が現れた

「これはお前が吐き出したのか?」
「ああ そうみたいだな」
「やけに美味そうだな 食って良いか?」
「別に良いが 腹を壊すなよ」

野良猫はたい焼きの頭を齧った
中からあんこが溢れ 湯気が出た
それを退屈そうな目で見た
(意外に値が張る猫なのかも知れない)

ふがふがとたい焼きを食い終わると
猫の頭の中から巻物が現れた
古風なレシピのようなものだった
それを再現するには数年がかかった

駅の近くに出来た たい焼き屋の中で
あの時と同じように野良猫にたい焼きをやった
頭の中から出てくる巻物のおかげで
連日 猫が店の前に行列を作るようになった

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