見出し画像

詩「赤と青と黄」

20230919

原色の夢から覚め 枕元を見ると
耳から流れ落ちた宝石がある
触れると砂に変わってしまうので
じっと見つめた後 人差し指を近付ける

瓶に砂を入れ 夢の数を数える
カラフルだが同じように見える
瓶を置いた棚が崩れて仕舞えば良い
そうすれば こんなことをせずに済む

顔を洗い 歯を磨いた後に着替える
口の中でミントの香りが弾ける
支度を終え コーヒーをいれてくつろぐ
その間はソファに座って並ぶ瓶を見る

凄まじい眠気に誘われて
ソファの上にコーヒーをこぼしながら
一時間ほどの睡眠で数十年分の夢をみる
床には大量の宝石が落ちている

原色の夢が見せるものが
現実とかけ離れているほどやる気をなくす
そうやって支度だけして出かけない日々を
彼は繰り返し すり減ってゆく

耳から流れ落ちる涙のような宝石が
閉じ込められたらどうなるだろうか
頭の中で増殖する原色の夢のせいで
頭蓋骨の中身をぶちまけることになるだろうか

そうすれば衝撃で棚は壊れてくれるだろうか
もっと深くまで潜ってみようか
宝石の転がる音が微かに聞こえる
イヤホンで流れる音楽は聞こえない

頭が破裂し 飛び散った宝石たちが
綺麗な壁にだけ突き刺さっている
夕暮れ時 その一つ一つに触れてゆき
砂に変え 瓶に入れると棚に並べる

棚はずっと前から変わらずにある
大き過ぎて ようやく半分が埋まる
瓶の中に入った砂から鳴る音を聞く
永遠に流れ続け それが止むことはない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?