詩「彼の逃亡」
20240524
荒っぽい手つきで 解された眼差し
あちらこちらに 散らばってくれ
彼を見つめる いくつもの瞳
ああそんなことまで やめてあげてくれ
時間を止めて しっかりと抱いた
辞書の中の 一つ一つの言葉
思考を溜めて 切り出す時に
彼は一人きりで 居られると感じた
革っぽい服で 真夏を歩いて
汗だくになって ひたすら歩いて
彼の目的を 知る者はいない
ああそんなことなど 聞かないでくれ
時間が無くて 荷物を置いてきた
辞書だけ持って あとの物は捨てた
思考を書いて 捨ててゆくメモに
彼は帰り道を 教えて欲しかった
風に飛んでゆく メモ帳を拾った
いくつもの手が 彼のことを罵った
彼は何を書いて 何を否定したのか
ああそんなことすら わからないまま
時間を作り 写真を撮ってみた
何かの記念に なるかも知れない
思考を止めて 選択肢を絞った
彼は一人で 十分な場所を探した
彼を追い出した瞳が
また新しい標的を見つけて
彼を忘れた小さな脳で
攻撃を仕掛け始めた
その時に彼は 自分のメモ帳が
誰かに寄り添い 背中を押すことを知らない
その時は誰か 彼のメモ帳の名前を
正確な表記で 書き残すだけ書き残してくれ
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