見出し画像

詩「骨の山」

20240509

ぐらついた足元に転がる骨の山が
生前はどんな姿だったのか思い浮かべて
吊り革に捕まり外の景色を眺めながら
目的の駅へと向かっている

挨拶されなかった隣人だったか
壁の中で走り回る小動物だったか
会計の時に睨みつけてきた店員だったか
ベランダから見える庭の大型犬だったか

骨を一つ拾ってじっくり観察すると
読めない文字がびっしりと書いてある
似たような格好をした連中が
少し距離を取りながらこちらを見ている

この骨がいつからここにあったのか
そんな疑問が湧いてきたが電車が止まる
目的の駅はとっくに過ぎている
慌てて降りようと足を前に出す

骨から離れた右足を強く掴まれ
引きずり込まれたのは骨の山の中
数人知っている顔があったが
名前を忘れていたので知らない奴らだ

骨の山の中で寝転がりながらあくびをして
呆然としたまま骨の上に立つ男を眺める
その男に見覚えがあったが
名前を忘れていたので大嫌いな奴だ

その男は呆然としたまま電車を降りた
骨の山の中での生活が始まったわけだが
次の朝には回収されて捨てられた
骨の山が崩れた瞬間に その男の正体がわかった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?