詩「人生悪役ⅩⅩⅧ」

2021-01-26

肩がわなわなと震えた
その気迫で タヌキが縛られていた木に止まる鳥たちは
一斉に逃げていった
フクロウは ナイフを構えながら警戒した

ロープは簡単に引きちぎられた
同時に フクロウはナイフをタヌキに投げた
タヌキはそれを素早く避け
フクロウの腹を思い切り殴った

数メートル吹っ飛んだフクロウは
着地と同時にナイフを投げた
タヌキの膨れ上がった腕で弾き返され
ナイフは彼方へと飛んで行った

「く く 来るな! くそ! な なんだコイツは!?」
フクロウは慌てふためいていた
蒸気を上げるヤカンのような音がした後
タヌキはまたフクロウに襲いかかった

彼は タヌキの姿を見て
真っ先にヒグマを連想した
肩が隆起して 息が荒い
背中を丸めて 狩りを楽しんでいるようだった

「おう フクロウ… 自分勝手な野郎だ」
タヌキは言った しかし その声は普段の声とは違った
腹の中が燃えているような声をしていた
彼には 鳴き声にしか聞こえなかった

咆哮すると フクロウは再び臨戦態勢に入ったが
顔を殴られ ナイフが手から離れた
木に叩きつけられ 後頭部が破裂した
そしてもう1発 顔面の中央を殴られた

拳がめり込み 骨が砕けていく音が聞こえた
彼にはその音が恐怖でしかなかった
さっきまでの感情は 全て吹き飛ばされてしまい
タヌキの姿を 見ていることしか出来なかった

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