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詩「息抜きのジュン」👁️11

20240906

(今頃 リオウはどうしているかな?)
バラサクのホテルの一室でジュンは考えていた
(エミリさんの復讐をするのは良いけど
 無茶して怪我でもしてるのかな?)ドアが開いた

「どうした?」彼は買い物袋をぶら下げていた
部屋にある机に置くと「食料だ」と言った
「どうもしないよ ありがとう」ジュンは上の空だった
「ついでにマフィアの連中に電話をしたんだが ヤバいことになった」

「え?」ジュンはうつ伏せに寝そべっていたが起き上がった
「リオウが見つからないらしい 街にも戻らないみたいだ」
「それって……」ジュンは驚いて彼の顔を見た
「ああ おそらく教団の連中だろうな」

「じゃあ! 戻って探してみよう!」
「無駄だよ マフィアの連中が探し回ってる
 俺らに出来ることはあまりない
 教団の連中も信者が殺されて焦っているらしい」

やはり冷静な彼を見て リオウが思ったことを理解出来た気がした
ジュンは聞いた「心配じゃないの?」
「お前もリオウみたいなこと言うな
 心配に決まってるだろ?」彼は頭を掻きながら答えた

「それじゃあ……」「だが 目的を忘れるな」
彼は釘を刺した ジュンはしょんぼりとしてしまった
「ああ見えて リオウは強い 自分でなんとかするだろう」
「そうかな そうかもしれないけど……」

「それにしても この村は美しい自然がいっぱいだ
 一つ目の俺のこともすんなり受け入れてくれたし
 ここに生まれりゃ良かったな 飯も美味い
 そうだ 物知りのドラゴンだが 見つけたぞ」

「本当?」ジュンは久々に良いニュースを聞いた気がした
「ああ 村長が飼っているドラゴンだ 
 名前はウロ
 変な名前だよな まあどうでも良いか」

彼は見るからにソワソワしていた
「気になるなら 追いかけても良いんじゃない?」ジュンは言った
「お前 中学生への恋愛アドバイスみたいなこと言うな」
彼は煙草に火をつけながら言った

「リオウは 良いんだよ エミリとは違う
 あいつは 多分俺が助けに行くことを望んでない」
「そんなことないよ! 嫌ってないって言ってたもん」
「違うよ なんて言ったら良いんだろうな あいつは……」

彼はリオウとの過去を話した
初めて会ったのはリオウが殴られていた時だ
その頃はもうマフィアに認められ
エミリに信頼される部下の一人だった

彼は街で依頼された不倫調査をしていた
ホテルの前に立っていると 裏路地に連れて行かれるリオウを見つけた
敵対する組織の連中が暴行を加えていたので
助けようかと思って様子を見に行った

するとリオウはその連中を返り討ちにして叩きのめし
おまけに財布の中身まで抜いてしまった
大したやつだなと思っていると声をかけられた
「お前 今見たこと忘れろ」財布の中身を彼の手に突っ込んだ

彼はそれから 街でリオウを見かけると声をかけた
最初は警戒されていたが次第に打ち解けた
ある日 報復に来た組織の一人は呪いを扱えた
そいつはリオウの家に行くと 「見えない炎」を放った

「“見えない炎”?」ジュンは不思議そうに聞いた
「ああ その炎は透明で 存在しているのに気付けないんだ
 リオウはその炎に焼かれて あの身体になっちまった
 俺はたまたま酒を手に入れたのでリオウにやろうとしていたんだ」

呻き声が聞こえ 彼がリオウの家に上がり込むと 熱気を感じた
一つ目の能力を使ってリオウを探すと ベッドの上に居た
「見えない炎」は念じた相手にしか通用しないが
どう言うわけか 彼はそれを感じ取ることが出来た

「それは俺の一つ目の能力だと思っている」
彼は一つ目を指差した
その瞳には星々が煌めいているようで
ジュンは吸い込まれそうだなと思った

彼はリオウを抱えてエミリの元に向かった
マフィアの連中は彼とリオウを見るとすぐに中へ通した
「何これ?どうなっているの?」エミリは慌てていた
「わからない おそらく呪いの一種だろう」彼は答えた

苦しむリオウを救うために 彼は必死になった
それでも治し方がわからなかったので 結局話に行くことにした
「見えない炎」を使った男の名前はエンジということが分かり
要件を伝え 待ち合わせ場所へ行くと 彼は取り押さえられて拷問された

しかし それに耐え続け 彼は
「俺を殺しても何にもならない
 生かして利用すれば良いだろう?」と言った
その気概に根負けして組織のボスは彼とリオウを許した

それからは二年ほど組織の仕事の手伝いをさせられた
麻薬やら何やら 売り捌けるものは全て売った
そんな生活に嫌気がさしていると エミリから電話があった
「安心しなクロウ もうそんな仕事辞めちまえ」と言われた

彼がどういうことか分からずにいると
「エンジはもう歯向かわないし 組織もうちの傘下に入ったよ」
エミリはそれを伝えると電話を切った
次の日から 気分の悪い仕事はしなくて良くなった

「す 凄いね エミリさん」ジュンは目を輝かせていた
「ああ だが俺は何をしたか聞かなかったんだ」彼は言った
ジュンは前のめりになって聞いた「どうして?」
「怖かったんだ ただそれだけだ」彼は答えた

それからリオウはことあるごとに彼の元にやって来た
始めの内はエミリの指示だったかも知れないが
大切な友人の一人になるまで時間はかからなかった
煙草を吸いながら馬鹿な話ばかりしていた

リオウは「見えない炎」の後遺症で ある能力を得た
力を解放すると紋様が現れて それを見た者に様々な幻覚を見せれた
その能力はマフィアにとって好都合だった
その代わり 火傷の痕は死ぬまでリオウを痛めつけるだろう

「へぇ……」ジュンは感心していた
「どうだ?これでもまだ不安になるか」彼は聞いた
「うーん 多分 大丈夫な気がしてきた」
「だろ? あいつは強いんだ 大丈夫なんだよ」

それに と言って彼は続けた
「また俺に貸しを作っちまったら悪い気がしてな」
「何それ?変なの」ジュンは笑った
「ああ 変だよな 落ち着かねえや」彼は煙草を深く吸い込んだ

「クロウは素直じゃないし 鈍感なんだよね?」
「なんだそれ? まあ そうなのかも知れないが
 鈍感? 俺はそうでもないと思うがな」
ジュンは心の中でそういう所が鈍感なんだなと思った

彼の助けは求めていないかも知れないが
リオウはその頃 教団に攫われて苦しみ続けていた
ケントはリオウの意志を挫くためにあらゆる方法を用いた
幻覚よりも強い力は催眠だったということだ

「ジュン ウロには明日会いに行こう
 それまでゆっくりしよう 遊ぶか?」
彼はトランプも買ってきていた
「遊ぶ! 大富豪やろうよ」ジュンは答えた

彼は一度も勝てず 不貞腐れて眠った
ジュンはクスクス笑いながら 隣のベッドに寝転がった
良い夢が見れるように祈りながら目を閉じた
夢にはリオウとエミリが出て来て 大富豪をして遊んだ

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