詩「人生悪役ⅩⅩⅩⅥ」
2021-01-27
「さて あなたを迎えにくる人物ですが
この名前に覚えはありますか?」
男は一枚の紙をタヌキに差し出す
「いや この名前…」と タヌキは悩む
見覚えがあると思いたかった
だが 彼は全くわからなかった
「見たことあるような…
ないような…」タヌキが呟くと 男はため息を吐く
「まあ 無理もないでしょう
十年間もここにいたのですから
あなたは この人の元に行きます
ここを出た後にどうするかはこの人に聞いてください」
男は耐えきれなくなって 灰皿を近づける
煙草を吸わなきゃ こんな仕事やってられるか
タヌキは少し煙たそうにしたが
懐かしさを感じて 鮮明な思い出が一つ蘇る
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彼がゲームをしながら
煙草を吸っていた
タヌキはコントローラーを持って
隣で彼が操作するのを待っていた
「早く決めてくださいよ
狡いですねえ 長考したら罰金にしますか?」
タヌキは痺れを切らして彼に言った
彼は 慌てた様子で言い返した
「待って!!もうちょいで良い手が浮かぶから!
あんたはコーヒーでも買って来てくれよ
あ そういえば あの漫画 新刊出てるわ
それもついでに買って来て!」
タヌキは呆れて言った
「あのねえ あなたが働かないのに
なんで僕がパシられるんですか?」
彼は誤魔化して笑った
タヌキが渋々コンビニに行って
買い物を済ませ 帰ってくると
彼は消えたテレビでヘラヘラ笑っていた
「あー!! とうとうやりましたね!?狡い!」
負けが確定したので
彼はゲームに電源を切ってしまったらしい
むくれるタヌキに謝りながら
彼は タヌキが買って来たコーヒーを飲んだ
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