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詩「彼の飼育」

20230831

誰かが急激に痩せたように見えたのは
少し斜めに立っていたから
錯視に惑わされ 目を擦っても
歪んだ幻想が頭にこびりつく

彼に何かを与えるならば
それは強い酒か煙草であると良い
誤魔化せば世の中 幸せだらけ
つまらない事ばかり見ていられない

誰かが残した札束を数えたのは
嘘でも充実していたいから
その札の価値を 忘れていても
膨大な理想が口から出てゆく

彼に何かを求めるならば
それは安い食事か買い物であると良い
強がれば世の中 好都合だから
くだらない物ばかり見ていられない

誰かが彼に吹き込んでおいた悪戯が
退屈な試験管の中で増殖していく
彼を揺らして混ぜて覗き込む目が
誰かに似ていることに 彼は気が付かない

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