詩「箱の中の心臓」
20230629
心臓が狭苦しい箱の中に取り残されて
考え事や思いとは別の時を数えている
彼の身体は痺れてしまって
全てが他人事のように感じている
日々が過ぎるのが恐ろしく
時間を止めるために寝てみる
起きても何も変わっていない
焦らないように見ないふりをするしかない
飛行機が通り過ぎる音が聞こえる
彼はその度にそれがミサイルでないかと考える
このアパートに突っ込んで彼だけを潰して
時が消えて仕舞えば楽になるだろうにと考える
考え事が数回重なった後に
彼はアパートの残骸の中で膝を抱えている
ミサイルでも潰せなかった彼の心臓は
箱の中で時を数え 彼のことを読んでいる
考え事と思いが死んでしまった後には
箱の鍵と箱しか残っていない
彼は心臓を取り出すことが出来ずに
アパートの残骸を見つめ ただ呆然としている
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