赤字の小型銘柄が1年間お金を掛けずにIR活動したら、思っていたのと違った結果になった話(後編)
前編では、この1年間のIRの目標を流動性向上に掲げ、どのような施策にトライしてきたかを書きました。
後編では、その結果の振り返りと考察を書いていきます。
前編はコチラ↓
図とかグラフが手抜きなのは、元々社内向け資料がベースなのでお許しください。数字のファクトチェックもそこまで真面目にやっていませんので、あくまで参考程度にエンタメとして読んでください。
■結果の振り返り
現在の市場環境
振り返りの前に、足元の外部要因としての市場環境はこんな認識です。
この数ヶ月の間に環境は大きく変わっており、2021年度の下旬からマザーズ・グロース市場もその影響を受けているという認識です。
円安・資源高・インフレ・金利上昇
グロースに対するバリュエーション修正(金利上昇に反応?)
ウクライナ戦争をはじめとする地政学リスク
流動性(売買代金)はどうなったか?
流動性を上げる、ということを目標に1年間IRをやってきたわけですが、結果はどうだったか?私自身、この結果を集計した結果を見るときはちょっとドキドキしました。
比較がないとわかりにくいので、過去3期分のうるるとマザーズ市場全体の売買代金の推移をグラフ化しました↓
へ、減っている………!(なんなら2年前より減ってます)
うるる、マザーズともに、この1年間の減少は、2021年末からの下げに伴う時価総額縮小により売買代金が減少した、という理解ができます。
2年前からの推移を見ると、マザーズ市場全体の売買代金は増加していますので、相対的にも流動性が悪化していると言えます。。。
株価は?
2019年4月1日から2022年3月31日までの2年間のうるる株価と同期間のマザーズ指数を比べてみました。
うるるは2021年10月1日に株式分割を行っているので、分割調整後株価を使っています。
縦軸はたまたま同じです。
3月末日に縦棒入れて、矢印入れるとこんな感じです。
この2年間を見るとマザーズ指数を上回って上昇し、株価は約2.4倍となりました。
この1年間に限ると、マザーズ指数と比べて5ポイントほど相対的には良かったのですが、3割近く下がりました。
SaaS指数と比べるとどうか?
うるるでは、独自にピックアップしたSaaS銘柄62社の株価を、GAS組んで2020年10月5日(Day1)から日次で取得し、Day1の各社株価単純平均を100としてインデックス化し、SaaS指数と勝手に名付けてその推移をウォッチしています。
元々SaaS指数を取り始めたのは、社内におけるIR部門の業績評価に使えないだろうかと考えたからでした。うるるもSaaS売上高が7割なので、SaaS指数を使ってうるる株価を相対的に評価できるんじゃないか、というものです。
振り返りの中で、SaaS指数とうるる株価の比較もしました。
SaaS銘柄の中で株式分割などある場合は気づいた範囲で修正していますが、
精度の保証は全くできないのであくまでご参考まで。
2021年3月末を分岐点にして矢印入れるとこんな感じです。
SaaS指数が1年半の間、下落傾向なのに対して、うるるの株価は1年半前と同じ水準に戻ったというところです。
ちなみに、売上高成長率が30%以上のSaaS銘柄だけをピックアップしたインデックスもウォッチしていますが、上述のSaaS指数グラフから10~30ポイント上を、似たような軌道で動いています。
株主数は?
株主数も半年ごとにウォッチしています。
どういう推移なのかはこちらのグラフのとおりです。
ちなみに、株主構成はこんな感じです。
■まとめと考察
上記結果のまとめと考察です。
流動性
流動性を上げることを目標にIR活動を行ってきたが、流動性向上にはつながらず…
マザーズ市場全体と比較すると、相対的に悪化……
中期経営計画をしっかりウォッチした上で保有してくれる(長期)投資家が増えてきている印象がある一方、その投資家は中期経営計画終了まで売却しないため、流動性が上がらないのではないか、と考えています。
株主数が減少しているのは、最小単元(100株)ではなく、複数単元を保有してくれる投資家が増えたからという理解です。
一方で、IR活動の結果としてうるるの認知度が上がっていることは肌で感じつつ、現状赤字で中期経営計画最終年度に大幅黒字化する、という企業の株を短期~中期で保有しようという投資家はあまりいないだろう、ということを感じています。
(いわゆる煽りIRをやれば変わるのかもしれませんが、、、もちろんそんなことをするつもりはありません)
また、株価が上がっていけば、それに伴って売買代金も増えていくであろうこと(その逆もしかり)は、結果から見て取れます。
株価
株価は、2年間で見ると伸びているが、この1年間は下落
マザーズ指数やSaaS指数に対しては上回って推移
この1年間において指数を上回って推移できたのは、下落局面で買いを入れてくれた投資家がいたから、という認識です。そういった投資家が2年前よりも増えている印象で、これはIRの成果かもしれません(強調)。
■おわりに
流動性を上げると意気込んでIR活動を行ってきた1年でしたが、むしろ下がってしまったというのは完全に目測が外れました。
IR頑張れば流動性が上がると盲目的に信じていたのですが。。。
が、指数比では株価はプラス推移だったのは、多少なりともIRの意味があったと前向きに捉えたいと思います。
うるるは5ヶ年の中期経営計画の4年目に入ったところです。
計画通りにいけば5年目には大きく利益が出るはずで、全社的には中期経営計画の達成に向けて進んでいく、ということに全力を尽くしていきます。
考察が正しければ長期投資家が株主として増えているので、足元のIRとしては、流動性を意識しつつもそういった株主を増やしていくことに注力するのが良いのかな、と思っています。
加えて、今は保有しないけど中期経営計画の進捗をウォッチする、という投資家を増やしていくのが、IR上の足元の目標となっていきます。
低予算であっても、まだできることはたくさんあると思っているので、今回の振り返りを元に、引き続き工夫してIR活動を行っていきます。
これを読んでいただいたIRを担う方々、何かの参考になれば幸いです。
むしろ、皆さんがどういうIRを行っているか、情報交換しましょう!
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