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大学進学でよくある間違いなんだが「管理栄養学部」はお料理好きな生徒がいくところではない…と言う話

 田中です。投稿は久しぶり。
 最近、大学進学を控えた息子さん、お嬢さんの学部選びについて相談を受けました。その中で、今でもそんな進路指導があるのね…と感じた点があったのでnoteに書いておこうと。

 あ。ボクは元 大学教員でキャリアセンターにいた人です。なので、高校側から送り出された生徒さんたちを受け入れていた立場の人間として書きますね。
 全国の高校生の皆さん、保護者の皆さん、そして高校で進路指導を担当されている先生方に知っていいただければ…と思います。
 まぁ、元々ご存知の方や理系出身です…って方にとっては「え?それわざわざ書くことなの?当たり前じゃね?」的なことも、届いていない現実。調べない、推察はもっとしない事実(あ、自戒を込めてます)があるよってことで。

 え?そうなの?という進路指導の先生はすぐにでも、指導方針を変えていただきたいです。一方で、知らなかった!という生徒さん、保護者さんは、今すぐにでも別の進路を探すのも方法です。いずれにしても、入学後に苦しむのは進学するご本人なので。
※ボク個人が現場で働きながら見てきた視点で書いています。モレ、抜け、思い違いはありましたら、そんな時は優しく指摘してくださいね。


栄養系学部はゴリゴリの理系です

 まず、結論から。 
 記事タイトル通りなんですが、管理栄養学部は本気の理系学部です。
 管理栄養学部(科)ってお料理が好き、食べ物が好きっていう、ややフワフワした受験生には全く向いていないです。マジで。
 むしろ、そういった生徒さんは国際◯◯学部とか経営学部とか入った方がいい。本気でそう思います。
 ※お料理を作るのは見方を変えると究極のPDCAサイクルなので、経営学部の領域ですね。

 一部の大学受験サイト、進学情報サイトでは栄養系学部について特に情報を提供していないものも存在します。ヘタすると大学のHPなどでは学生集めのためなのか、お料理・食べ物好き、独立・開業したい高校生をターゲットにしてるところもあります。

 ところがどっこい。
 栄養学はゴリゴリの理系(文系・理系って括りもなんだかなーと思ってますが今日は触れない)学部です。

 例えば…ですが、親御さんが飲食店を経営していて、且つお客さんが切れないくらいの繁盛店で、本人に経営センスも接客センスもあり、後を継ぐ意思が固い(そんな高校生がいるのか?は不明)…とか、スポーツ栄養学を専門的に学びたい…とか、病院勤務の栄養士を目指している…とかいうなら管理栄養?いいでしょう!と考えます。

 それとは別に、食品メーカーで素材系、機能系、味覚系、食感系の商品開発やってみたいという生徒さんは、生物学部や農学部、理工学部を目指す方が速いです。管理栄養出身で商品開発は結構な遠回りなので。
 同じ商品開発でもパッケージデザインとか広告、PR、売り方などをやりたい生徒さんは経営学部でマーケティング学んだ方がいいです。

 あ、それともう一つ。
 管理栄養学部(科)= 調理実習だらけで料理が上手じゃないと…というのも違います。
 確かに、管理栄養学部(科)では調理実習や先生が作った料理を自分たちで再現する…という授業があります。あとは大量調理(40〜60人分の食事をまとめて作るという調理実習)があります。ですが、が、在籍学生の多くが調理経験はほとんど無いも同然。
 調理が上手いことが成績を左右するわけでも無いので、そこはご安心くださいね。

栄養学=理系の根拠

 では記事タイトルの根拠からご紹介。
 まずお近くの…でも、志望してる…でも、進路指導の先生から勧められてる…でもいいんだけど、どこかの大学の管理栄養学部(科)のHPを開いてみてください。

 そこには必ず教員一覧とか教員紹介というタブやリンクがあります。
そこを開くと本学部(科)にはこんな教員がいますよ、こんなことを研究テーマとしていますよ、こんな経歴でこんな論文を発表…といった情報が必ず書かれています。

 で、そのページを開いたら、各先生方の経歴と所属学会を確認して読んでください。できたら声を出して。
 ちなみに管理栄養学部(科)で教えている先生方の出身学部、出身研究科といえば医学、公衆衛生学、農学、生物学、微生物学を研究している方々がほとんど。工学系は少ないはずです。あとは臨床◯◯学という現場に近い領域を専門にされている先生方ですかね。
 仮に文系を専門にする先生がいたら、それは学部付きの語学系教員か、大学の事情で配置されている教養科目系の先生…かなと。
 ボクが勤務していた大学の例では、管理栄養の専門科目を教える先生で文系出身者は在籍していませんでした。なぜなら理系学部だから。他の大学さんも同じです。

 断言するけど、理系科目がキライ、苦手な生徒さんが管理栄養学部に進学すると本当に苦労します。専門科目のほぼ全てが理系科目なので。

管理栄養学部がある理由

 管理栄養学部(科)はなんのためにあるのか?といえば、管理栄養士を養成し世に送り出すため…となります。

 なので管理栄養学部(科)を卒業できる見込みが立つと、国家資格の1つ管理栄養士の国家試験を受験できます。
 必要なことを勉強しましたね?じゃあ受験させてあげますよ…という立て付けになっていて、管理栄養士という資格は厚生労働省によって管理運営されています。
 大学の中で学ぶことについては文部科学省によって規定されていて、必修科目は国によって厳格に定められています。
 ついでに言うと、管理栄養学部(科)で使用する教室も文部科学省によって基準が定められています。ただの教室ではダメで、陰圧(人工的に部屋の気圧を少し下げる状態で、衛生的な環境を保持する)された調理実習室の設置が必要です。なので学費も一般的な学部より高めです。

陰圧室とは?https://www.kango-roo.com/word/11893

管理栄養学部で学ぶ内容

 次は各授業について。すべてを紹介するとキリがないので管理栄養学部で専門的に学ぶことの一部をサラッと紹介すると…
 生物学、化学、生化学、公衆衛生学、病態学、運動生理学、解剖生理学…以下多数(笑)…という具合。
 調理なんてごくごく僅かです。ホントに。

 上に挙げた科目の隙間に外国語2科目や教養科目、実習、学外実習、国家試験対策などが入ってくることを考えると、管理栄養学部の学生は本当に多忙です。朝1限から5限まで、授業がビッシリ…!という学生も珍しくありません。
 授業が忙しくて在籍する4年間に一度もアルバイトができなかった…という学生も珍しくありません。部活やサークルも結構難易度高いかも。
 そのくらい忙しいですよー。

 ちょっと脱線しますが、管理栄養学部(科)に入学するとお医者さんのような白衣を購入します。授業で使うので。このことからも理系学部であることは明確ですね。ちなみに文系科目で白衣を購入する学部はありません。
 
 なので「食べ物に興味がある」「生活科目のなかで調理実習が好き」くらいの根拠で生物も化学も好きではない、なんなら数学キライという生徒さんがうっかり管理栄養学部(科)に進学するとどうなるか?
 ご想像いただければいいと思います。

 ボクが勤務していた大学にも管理栄養学科がありました。
 そこに在籍する学生の多くは管理栄養学部(科)が何を勉強するところなのか?をよくよく調べず、高校の進路指導の先生からの確かな情報提供もなく、勧められた根拠もしっかり確認もせず、なんとなーく進学していましたね。

 もしかするとこんなやりとりがあったのかもしれません。

進路指導:食べ物に興味ある?
生徒:(うーん食べることは好きだな…)あります。
進路指導:じゃあ管理栄養いいんじゃないかな?
生徒:へー(よく分かんないけど…)…。わかりました。
進路指導:(はー、進路固まらなくて困ってたんだよこの子、ヤレヤレ…)
※ほぼ100%妄想です(爆)

 くどいようですがもう一度いいます。管理栄養学部(科)は、国家資格のひとつ 管理栄養士を養成するための理系学部で、ゴリゴリの理系学部です。

管理栄養学部(科)卒の進路、就職先

 管理栄養士という資格を背景にしているお仕事の多くは専門職として扱われ、一般的に働く人とは賃金体系が違う場合があります、とだけ書いておきます。企業や勤務先によってホントに多様なので。
 もちろん、管理栄養士の資格を取得しても、資格は使わず一般企業で働く選択肢もあります。

公共的な立ち位置で栄養相談、栄養指導、メニュー作成などで活躍
病院の栄養士(疾病ごとに献立を考える)
自治体の栄養士(住民サービス、公立校の献立作成など)
学校・保育園・幼稚園などの栄養教諭
社会福祉施設、高齢者福祉施設などの栄養士
療養施設、長期療養目的の滞在型ホテルなどの栄養士

民間企業で栄養指導、メニュー作成
スーパーなど小売現場の栄養士 兼 調理師
給食会社の栄養士 兼 調理師
レシピサイトの栄養士 兼 調理師
食品メーカー、サプリメントメーカーの栄養士
外食企業の栄養士 兼 接客
健康器具メーカーの栄養士
スポーツチームでのスポーツ栄養士
スポーツジムの指導員
料理教室の栄養士&講師&営業(会員獲得)
性能評価受託企業の検査員(ちょっとマニアックですがあります)

販売現場で栄養相談
ドラッグストアの栄養士
サプリメント売り場の栄養士

 と言ったところでしょうか。
 他の学部出身者も同じですが、いずれの職種も職場も多様な人が働いていて、多様な利用者さんがいて、人間関係で揉まれることは間違いないです。

 最近は栄養学×ITの分野(フードテックとでもいうのでしょうか?知らないけど…)は結構アツくて。ベンチャー企業も複数あります。
 健康経営とか100年人生などのキーワードが出ている文脈で、栄養士さんの知識が活かせる企業が新たに増えつつあります。

 栄養士という専門職の特性上、その多くが女性であることも特徴ですね。結婚、妊娠、出産、育児…というライフステージの変化があることを視野に入れて働く場合、国家資格というのは強みになります。
 ということは、特に公務員として働く先輩方はなかなか退職しない。つまり、病院や自治体勤務で栄養士の新規募集を探すことはなかなか難しいです。

 また過去の事例ですが、自治体によっては、採用条件を修士以上の管理栄養士としているところもありました。これは以前の国家試験スケジュールが卒業後の4月実施、5月ごろの合格発表となっていたからです。
 2020年の実績で言うと、試験日は3月1日、合格発表は3月27日に設定されています。が、採用面接時に国家資格を持っている人を専門職として採用する自治体さんの場合、まだ国家試験の受験資格を持たない学部生の場合、自治体への応募そのものが出来ない場合もあります。必ずご確認を。

管理栄養学部(科)に向いている人

最後に管理栄養学部(科)に向いている人、傾向をご紹介します。
キレイ好き、清潔な人
生活のリズムを大きく崩さない人
本気で栄養士を目指している人
理系科目(数学、化学、生物)が得意
論理的思考力がある人
目標志向が強い人
自分で優先順位を付けられる人
忙しくても自分や目標を見失わない人
好きなことをトコトン追求できる人
チーム(友達ではない)と一緒に取り組める人

まとめ

いかがでしたでしょうか。
何度もいいますが、管理栄養学部(科)は理系です。
あなたの、もしくはあなたの大切な御子息、御息女の進路選択と決定のお役に立てましたら望外の喜びです。

それでは。

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