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ものを作るということ。

先日、日経ビジネスの農業コラムに私のオランダにおけるチャレンジについての記事が紹介され大変多くの反響をいただいております。大きな関心がこの農業という産業に向いているのだと改めて感じるとともに一過性のブーム的な要素の強さも感じています。記事ではあまり多くのことは書かれていませんが興味を持っていただけるきっかけになれば幸いです。

日経ビジネスオンラインの記事はこちらhttp://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/252376/022400034/?rt=nocnt

私は神奈川県秦野市の農家の長男として生まれ、幼少の頃より父や祖父の背中を見て育ってきました。特に祖父との関わりは深く多くのことを学びました。私の家系は古くは鎌倉時代まで遡ることが出来る旧家で、紺屋の屋号を代々受け継いできました。いわゆるモノづくりの家系として育ってきました。また母親方の曽祖父はカナダで大規模なリンゴ農園を営んでいたと聞いています。私は人から見ると堅物で古臭い人間に見えると思います。(笑)

モノ作りをする上で大切にしている思いは、基本の大切さと自身の哲学です。こんな事を言ってしまうと何を若造がと言われるでしょうが、なんと言われても構いません。

昨今注目を浴びている農業の姿は真新しさやブランディングなど表に見える部分でしか勝負をしていない。ある特定のニーズに応えるためや共感やライフスタイル提案を訴えるようなマーケティングによる農業を新しい農業と捉えているのだろうと思います。ただしそれが間違っているというわけではありません、それぞれが描くビジネスモデルに多様性があることは市場構造の多様性と柔軟性を高めるもので歓迎されるものです。

では何故危うさを感じているのかというと、いま農業参入を検討あるいは参入が増えている業態は単一品目で高付加価値マーケットへの参入が多いからです。みなさんもご存知の通り、近年植物工場、先端農業やスマート農業に注目が集まっています。こうした産業へは企業や若い世代が参入を試みています。いわゆるハードやITを導入してより農業を効率化しながらそれらを高付加価値の材料として使おうとしています。

トマトを例に挙げてみれば、高糖度トマトの市場ニーズは依然として高く、このマーケットにターゲットを絞りビジネスモデルを作ろうと多くの企業は考えています。しかし冷静に考えてみると、人口は減少し消費人口自体減少しつつある日本で相次ぐ大規模な高糖度トマト生産への参入は正しい選択として考えられるでしょうか?高糖度トマト生産においては多額の初期投資と安定生産安定供給のリスクから見ても非常にシビアな経営となることが予想されます。また各企業のターゲットが被ることによる価格面への影響は回避することが難しい。ここで重要なのは適正な生産管理とコスト管理、そして適正な商圏への販売です。これらを基本としていかにして愛される商品を永く提供できるかがそれぞれのビジネスモデルの描き方で大きく変わってくる。

食は生きる基本とも言える重要な要素。個々の健康や生命の源でもある。だからこそ自分自身いつも意識しながら農業と向き合っている。モノ作りを通して人と人、世代と世代を繋ぎ未来へと繋いでいくこと、そして共に時代を生きていくことがものづくりに携わる私自身の使命かなと、夜更かししながら考えたわけです。

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