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アシュラム滞在記(11) インヘール、エグゼール 【世界旅行記058】

2012年10月27日(土) ヨガ・アシュラム滞在(YOGA NIKETAN)

10月27日、土曜日。

日々、英語力の足りなさを痛感している。旅を続けていると、生きていくためのコミュニケーション能力は高くなる。少ない語彙とボディランゲージだけで日々の困難を乗り切る術が、自然と身についていく。英語なんかたいしてできなくても、あらゆる手段を使えば、「ここに行きたい」「あれが欲しい」「それでは困る」など、生活に必要なことは、たいてい主張できるようになる。

しかし、「コミュニケーション能力=語学力」では、けっしてない。だから、普通に旅を続けている限りでは、語学力(ここでは英語力と同義)は落ちることはないにせよ、そうそう簡単に向上することはない。わたしのような語学嫌いだと、なおさら、自然にできるようになるはずがない(リスニング力は多少上がるとは思うが)。

わたし程度の英語力では、旅をするには困らないものの、現地の人と少し深い話 ―― その国の文化や政治、その人の内面に関わる話など ―― をしようとすると、とたんに行き詰まってしまう。でも、わたしがいちばん知りたいのは、その人がどんなことを考えて生きているのか、ということなのである。だから、そういう場面に出くわすたび、もっと英語力を鍛えなくてはと痛感する。せっかくのチャンスを、英語ができないせいで、みすみす逃してしまっている。頭では、重々わかっている。

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ヨガのクラスは、もちろん英語で行われる。最初は「インヘール(inhale、吸う)」「エグゼール(exhale、吐く)」というかけ声すら、よく聞き取れなかった。その後、妻に聞いたり辞書を引いたりしながら少しずつ学んで、いまでは先生の言っていることは、だいたい理解できるようになった。nostril(鼻の穴)、spine(背骨)、navel(ヘソ)、adbomen(腹筋)、buttocks(尻)など、聞き慣れない身体の名称もずいぶん覚えた。「オブジャーブ(observe)」「アゲインシュト(against)」「パルソナル(personal)」といったインド人独特の発音も、いまは耳に心地よい。

ヨガは正しい呼吸法がなにより大事だから、ただ先生のポーズを真似てやるのと、言っていることを理解しながら身体を動かすのとでは、効果が大きく違ってくる。実際、英語を理解するようになってからは、呼吸に合わせて身体を動かせているのを実感するし、ポーズも安定するようになった。

ちなみに、日本の体育の授業やスポーツクラブでは、先生がお手本を見せるとき、生徒と向かい合って左右反対に(つまり生徒から見て同じ方向になるように)ポーズを取り、左手を右手、右手を左手と言って説明してくれる。ところが、こちらでは、そういうことはしない。先生は、あくまで向かい合った生徒と反対にポーズを取る。右手と言ったら誰にとっても右手なのである。同じ向きに動こうものなら、「あなたの右手はこっちでしょう?」と指摘される始末。慣れてしまえば、どうということはないのだが、最初はちょっと違和感を覚えたものである。

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このアシュラムには、毎日のように日本人がやって来る。ところが、なかには英語が全然できない人もいて驚く。「ドゥー・ユー・アンダーシュタン・イングリッス?」と、ゆっくりしたインド英語で聞かれて、ただヘラヘラと笑う日本人を、もう何人も見かけた。「イエス」とも「ノー」とも答えず、「あなたの言っていることがわからない」とも言わない。ただニヤニヤするばかりなのである。こうなると先生も呆れてしまって、もうそれ以上話しかけなくなってしまう。

そんなに英語ができるわけでもないわたしが言うのもなんだが、さすがにこんな程度の英語力では、はたしてインドの山奥までわざわざ時間とお金をかけてやって来る意味があるのか、大いに疑問に思う。そういう人たちは、たいていが日本でヨガスタジオに通っているような(エクササイズとしての)ヨガ好きな人たちで、わたしなんかよりよっぽど体も柔らかいのだが、だいたい1回か2回体験して、すぐに帰ってしまう。何週間もいて英語もだんだん理解していくならともかく、超短期滞在の彼女らが、ここで得るものは少ないだろうと思う。

ヨガ・ニケタンのヨガ・ホール

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Travelife Log 2012-2013
世界一周の旅に出てから12年。十二支ひとまわりの節目を迎えた今年、当時の冒険や感動をみなさんに共有したいという思いから、過去のブログを再発信することにしました。12年前の今日、わたしはどんな場所にいて、何を感じていたのか? リアルタイムで今日のつぶやきを記しながら、タイムレスな旅の一コマをお届けします。


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